月刊誌 指導と評価

2016年 9月号
  1. 2016年 9月号 Vol.62-9  No.741  定価:450円
特集
「高大接続改革」が小中高にもたらすもの
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特集

教育改革としての高大接続改革

筑波大学特命教授  金子元久

★高大接続改革の背景の第一は、大学入試体制の空洞化だ。18歳人口の減少を背景として、大学入学者の半数はほとんど学力のチェックをうけておらず、さらに3割程度は1,2科目程度の試験を受けているにすぎない。また教科知識のみでなく、広い柔軟な思考力が必要になっており、それに大学入試が対応することが求められる。さらに、高校段階でも基礎的な学力が修得できていない生徒が少なくない。それをチェックし、学修目標を与えることもねらっている。こうした意味で、改革は小中学校教育にも大きな意味をもっている。

小中高大一貫英語教育の実現に向けて各校種で取り組みたいこと

お茶の水女子大学附属高等学校教諭  津久井貴之

★4技能型入試への移行や高大接続が英語教育にもたらす影響は大きい。「言語を用いて何ができるか」という視点のもと、小中高大一貫英語教育の実現に向けて、共通の目標や視点をもつとともに、各校種での指導上の課題を把握し、指導改善に役立てたい。また、それぞれの指導の特徴や強みを互いに学び合うことも大切である。次期指導要領を見据えた指導や評価の改善・改革において現場の教師は、その本質や目的を見誤ることなく、表面的な学習形態や方法論にとらわれずに各校種が連携を図り、じっくりと指導改善に取り組むべきである。

高大接続の改革は国語教育に何をもたらすか

筑波大学教授  島田康行

★高校の国語教育においては「教材の読み取りが指導の中心になりがちで、国語による主体的な表現等が重視されていないこと、話合いや論述など、「話すこと・聞くこと」「書くこと」の学習が十分に行われていないこと」などが課題となってきた。
★今次の高大接続の改革は、新テストにおける記述式問題の導入など、入試方式の変更に注目が集まりがちだが、「一体的改革」の意味を前向きにとらえ、国語教育における課題の解決に向けて、授業改善の契機としていくことが望まれる。

「高大接続改革」が小中高にもたらすもの(算数数学)

東京大学教授  藤村宣之

日本の子どもには、手続き的知識・スキルを適用して定型的問題を解決する「できる学力」が高いが、多様な知識を関連づけて諸概念を深く理解し、非定型的問題を解決する「わかる学力」が相対的に低いという特徴がみられる。「わかる学力」を高めるには探究と協同を重視した学習が有効であることが小中高の教育で実証的に示されてきている。「高大接続」の取組は、非定型的問題を解決する思考力・判断力・表現力の育成を目標とし、学習者の能動的学習を重視する点において、探究と協同を重視した小中高の学習を発展させる可能性をもつと考えられる。

高等学校教育が抱える課題と、新しいテストの目的と課題

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★高等学校基礎学力テストは、学習意欲の乏しい生徒や、学力フリーで大学に入学する生徒に学習へのモチベーションを喚起する。
★大学入学希望者学力評価テストは、記述式を導入することで、論理的な文章や、説得力のある文章を書く能力の育成を促す効果が期待される。多肢選択式のテストは、このような能力を測る妥当性のあるテストとは言えない。
★多面的な評価のためには、ポートフォリオ評価が必要である。

新テストのねらいと予想される帰結

東京大学副学長  南風原 朝和

★「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は、実行可能性以前の問題として、このテストのねらいそのものについての吟味が必要である。
★知識が思考・理解のプロセスを経て構築されることをふまえず、知識とは別に思考力等を取り出して評価するというのは、受験生にとって分かりにくく、どこに向かって努力すればよいか分からない。
★テストの難度も非常に高くなり、上位層以外での能力評価に適さない。
★適切な方向に受験生の努力を促し、そして努力が報われるテストになるよう、見直しが必要である。 

連載

学校力・教師力アップセミナー(5)学級崩壊に対処する 公立学校スクールカウンセラー(元富山県南砺市立福光中部小学校校長)
水上 和夫
QUを活用した学級づくりと個別支援(6)ルールが守られていないクラスの指導 昭和女子大学准教授
滝澤洋司
特別支援教育のこれから(6)効果的な校内連携と保護者との連携 大阪教育大学教授
水野治久
教育評価のこれから(6)思考力・判断力・表現力を育てるパフォーマンス評価 福井大学准教授
遠藤貴広
深い学びとメタ認知を促す「教えて考えさせる授業」(2)「教えて考えさせる授業」づくりの工夫と注意 東京大学名誉教授・帝京大学中学校高等学校校長
市川 伸一
感度を高める言葉の教育(30)比喩の使い手 東京大学名誉教授・帝京大学中学校高等学校校長
市川 伸一
国語の「書くこと」(5)小学校4年生 昭和学院小学校長・前筑波大学附属小学校教諭
青木 伸生
先人に学ぶ「数学的考え方」小学校算数(5)平林一栄著、『算数・数学教育のシツエーション』より 青山学院大学教授
坪田 耕三
アクティブ・ラーニングで社会科の授業を変える(4)歴史の授業をアクティブに 東京都世田谷区立世田谷中学校主任教諭
篠塚昭司
アクティブ・ラーニングで子どもの探究心や科学的思考力、表現力を育てる中学校の理科(5)中学2年、物質のすがた③まとめ 創価大学教職大学院准教授
大関 健道
これからの英語教育をどうするか(5)小・中連携英語教育の課題と改善点 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長
渡邉 寛治
道徳をこれからどう指導したらよいか(13)学級崩壊回復への取組 前新潟県柏崎市立比角小学校長
若林 勝
教育統計・測定入門(52)構造方程式モデリングによる相関係数の検定① 法政大学教授
服部 環
だんわしつ/ルーテル英語カルチャー教室:その誕生経緯と活動 京都大学農学博士、元北海道大学教授、クイーンズランド大学名誉教授
鈴木鐵也
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