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特集
いまの子どものメンタルヘルスは
★ユニセフと国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の子どもの幸福度は高く、国際的に見れば心理社会的適応はおしなべて良好である。しかし、「物質的豊かさ」は先進国の平均を下回り、相対的貧困層の拡大と所得格差の深刻化が将来にわたる子どものメンタルヘルスへの悪影響が懸念される。児童虐待相談件数は増加の一途をたどり、いじめ・不登校の問題に劇的な改善は見られない。加えて東日本大震災で被災した子どもと保護者への継続的な支援の課題も生じており、日本の子どものメンタルヘルスを将来にわたって守るために課題は多い。
子どものメンタルヘルスを保つ学級づくり
★児童生徒のメンタルヘルスを保つには、適応指導を充実する等の開発的指導が重要であるが、問題の徴候を早期に発見し、深刻化を防ぐ予防的対応・初期対応が問題解決の成否を決する。
★このためには、児童生徒との人間関係を深めたり、情報収集しやすい環境づくりに努めるとともに、徴候が把握された場合の組織的対応を計画的・継続的に進める必要がある。
★メンタルヘルスの問題は児童生徒の心身の安全に直接かかわる問題である。すべての教職員が「小さなサイン」に敏感に気づく感性を養い組織的対応につなげる力量を身に付けたい。
元気がない子、攻撃的な子にどう働きかけるか
★伝えたことが子どもに伝わっていないのに、教師が同じ伝え方(指導態度)をしつづけると、ボタンをかけちがえたまま、溝はますます深まるばかりである。
★子どもたちの行動がかわらないときは、いままでとは異なるはたらきかけを試みること。
★自分の思い通りに子どもが動いてくれない、自分の思い通りに学級が育っていかないと、いらいらしたり、落ち込みそうになったりした場合の魔法の言葉は、『なおそうとするな、わかろうとせよ』。
★いつも叱られてばかりで、ほめられることや認められることはない子の不満をためないための方法は、ほめられることや認められるチャンスを増やすことである。
保護室から見た子どものメンタルヘルスと対応
★子どもたちのメンタルへの対応は、寄り添うだけでは解決できなくなっている。さまざまな悩みや不安があっても、プラスに気持ちが向いている子は、寄り添うだけ、話を聞いているだけでも自ら道を開き解決に向かえる。しかし、自分の気持ちがマイナス方向になっている子「どう悩んでいるのか不安なのかが伝わらず、行動が止まっているような子」は、養護教諭を中心として、関係する職員やスクールカウンセラー、病院や研究所等の関係機関と連携を図りながら対応している。事例を通してメンタルヘルスへの対応を紹介したい。
スマホ時代の子どものストレス
★スマホ時代のいま、子どもたちはストレスの高い日々を過ごすことを余儀なくされている。本稿では、アンケート結果を現役中高生に示し、その結果に対する彼らの回答から論を進める。スマホ所持者に「イライラする」「夜更かしする」「勉強に自信がない」と回答する者が多く、LINE、ネットゲーム、YouTube 等の影響を指摘する声が多かった。一方、「ケータイ・ネイティブ2世」が増えてきていることもあり、ますますスマホ問題の低年齢化が予想される。思春期になってからの対策はむずかしいので、小学生から対策を始める必要を感じはじめている。
できる子どものメンタルヘルス
★教師も保護者も、できる子どもに対しては「光」の部分により注目し、さらにできる子どもへと導きがちである。その子なりにより輝くために人知れず努力したり、苦労したり、もがいたりしている「影」の部分に心配りが行き届かないことがある。いつしか子どもは息切れてしまい、不登校などの不適応症状に陥ることもある。そうした不適応症状に陥る前に、心の危機を表すSOSサインが出ることが少なくないのだが、それすら「光」の輝きに見逃されてしまう。できる子どもが示す心の危機のサインとはどのようなものか、それに気がついたとき、教師はどのように対処したらよいのかを、メンタルヘルスの立場から考える。
子どものメンタルヘルスを守る環境調整
★近年、深刻な問題となっている虐待や若者の自殺、不登校、いじめ、少年の殺人事件等を受けてスクールソーシャルワーカー(以下SSW)の仕事に注目が集まっている。学校現場で福祉的な支援をするSSWが、どのような仕事をすればそうした残念な状況を改善することができるのだろうか。子どもを追い詰める背景には、子どもをとりまく環境の変化やそれぞれの子どもが抱える複雑な要因が絡み合っている。子どもの命を守ること、そして、子どもが安心して学校生活を送ることができるよう子どものメンタルヘルスを守るためにSSWとして何ができるのか、実践を振り返りながら考えることにする。
連載
チーム援助で特別支援教育のさらなる充実を(6)チーム援助で防ぐ教師のバーンアウト | 東京成徳大学准教授 西村 昭徳 |
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「学校づくり力」アップセミナー(6)ICT活用力が高まる学校づくり | 岐阜聖徳学園大学教授 玉置 崇 |
QUで学級集団づくりと学力向上を図る(6)山梨県甲府市の取組①取組前の様子 | 早稲田大学教授 河村 茂雄 |
学校の法律問題(30)落雷事故への備え | 日本女子大学教授 坂田 仰 |
目的別文章の書き方(6)意見文の書き方 | 広島経済大学准教授 木本一成 |
感度を高める言葉の教育(18)言葉の習得 | 広島経済大学准教授 木本一成 |
小学校算数の発展・応用を学ぶ授業をつくる(37)6年 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
新しい教育評価の動向/B・ブラック、I・ストー、T・ブラムレイ「採点の信頼性:問題の特徴、採点基準、解答の特徴が採点の信頼性に与える影響」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
教育の窓/大学入試改革を考える | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
平成27年度全国学力調査問題の分析と指導への示唆(3)⑤中学校国語 | 宇都宮大学准教授 飯田 和明 |
平成27年度全国学力調査問題の分析と指導への示唆(3)⑥中学校理科 | 筑波大学附属高等学校講師・元筑波大学附属中学校教諭 荘司 隆一 |
教育測定・統計入門(41)独立成分分析と因果分析 | 法政大学教授 服部 環 |
特別寄稿/アクティブ・ラーニングについて | 応用教育研究所名誉所長 辰野 千壽 |
だんわしつ/沖縄とヤマトの「見えない溝」 | ノンフィクションライター 三山 喬 |