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特集
教師のライフコースと学び
★急激な社会変革の中で、子どもたちに求められる資質能力も変化しており、それに応じて新学習指導要領も改訂され、学び続ける教師像が求められている。そのために各自治体においては教師のキャリアステージに応じた学びのあり方として育成指標の設定もされてきている。
★しかしながら、教師のライフコースには個人差があり本質的な困難がある。またTALISの調査結果等にも示されているように、日本の教師は勤務時間が最も長く自己啓発に使えることのできる時間が少ないといった学校組織の問題も有している。学校ぐるみで専門家として学ぶ体制や風土の形成もまた必要である。
★教師が生涯にわたり学んでいくには、困難をかかえる子どもたちから学ぶことのできるマインドセットと同時に、学びには最適期があり若手教師と共に考えることを通して学ぶ、教科や学校の壁を超えて学ぶ発想が求められている。
教師の自信
★<教師が自信をもつ>とはどんな状況をいうのだろうか。そこでの教師は、「ありたい自己」と「現実の自己」がほぼ一致して重なり合っている。<したいことができている自分>と、<ありのままを受け容れている自分>がそこに同居していることである。例えば、目の前の子どもの話をそのままに聴いている、面積の求め方を子どもたちと議論して学び合う、同僚の教員と遠足の指導プランを検討し合うなど、自らの専門性を発揮し、ごく自然に<先生>を為している状況である。
★本稿では、子どもや保護者との関係づくりが<教師の自信>に大いに関与すると考え、カウンセリング感覚を身に付けることの大切さを具体的なケースをもとに論じたい。
表の学びと裏の学びで、教師の自己効力感を高める
★諸外国とくらべ、高いとは言えない教師の自己効力感。この自己効力感は、私たち教師が日々の教育活動にいきいきと取り組む原動力となる。では、教師の自己効力感を高めるには、なにが必要なのか。その鍵を握るのは、まず、教職に関係する学びである。これを表の学びとすれば、裏の学びがある。退勤後や休日に取り組む趣味を通じて、仲間と関わり、情報交換をしたり、技術の向上を図ったり、身につけた技能を試してみたりする学びである。表と裏、二種類の学びが、教師の自己効力感を高める。
ニシンに恋して
★北海道厚田村で明治24年にニシンが多くとれて豊漁記念碑が建立された。明治40年代から減りはじめ、昭和29年から激減したようだ。
★身欠きニシンを食べた食感が懐かしい。ニシンは高等学校の生物の教科書にも登場した。しかし、現在ニシンは食卓から消え、教科書からも消えた。
★平成20年3月に定年退職後、北海道沿岸でいまでもニシンが来ることを知る。ニシンが忘れられず、ニシンの自然保護活動に参加してきた。ニシンは、定年後の新しい学びのテーマになった。
★海を豊かにするには森が関係していることを知る。北海道厚田村の山に石狩市の人たちと木を植えてきた。ニシンがいまでも多くとれているノルウェーに、ニシンの多く生息する様子を見に行く。石狩湾に群来が見られるようになった。
書に親しんで
★私は小さいころから書に親しみ、特別支援学校に長く勤務している者です。書に対する取り組みは、年代により変わってきていますが、書の活動を通し多くのことを経験し学んできました。書は一生の勉強だと思います。特別なことは行ってきませんでしたが、いままで取り組み歩んできたことを振り返り、お話ししたいと思います。
仲間と学ぶ
★勤めて3年目、学校内の研修でユニバーサルデザインをめざす授業にふれた。授業についての考え方が定まっていなかった私は、学校を飛び出して、外の研究仲間との交流をもつようになった。全国協議会で、講演や提案授業、実践発表にふれるたびに心が高揚した。また、地域での支部活動は、校内での授業力アップにつながった。外の学びの仲間との交流は、校内の仲間とのつながりを見直すきっかけになった。
教師、40にして大学院に学ぶ
★安易な動機で教員となり定時制の現場で挫折した筆者は、心理学のおかげで生きる指針を得て、教員としてのやりがいを見つけた。
★以来、心理学への憧れをあたためつづけ、40歳で東京学芸大大学院に派遣研修の機会を得た。現場を離れた1年間は、仕事に疲れた頭と心を確実にリフレッシュしてくれた。
★そこで恩師河野義章先生に出会い、現在のライフワークにつながる「カットイメージ」の研究をまとめることができた。
★現場に戻った私は、定時制、全日制を経て、昼夜間定時制高校チャレンジスクールの学校づくりで、オリジナルなアイデアを生かした成果をいくつも上げることができた。
★40歳の大学院研修は、教員人生の大きな転換点であった。
舞台に魅せられて
★常に自分を支えてきた価値観、それは教師である前に人間であれ、いかに生きるべきかを誠実に自分に問いかけ行動することでした。それは、学生時代、そして、教職の世界に入ってからも劇団活動を通して、演劇で学んだことでした。「教育とは子どもを生かすことだ」「子どもに寄り添い、その子どもらしくどう生かすか」、子どもの個性や能力に違いはあっても、私たちが子どもに向き合うときにはその基本は変わらないはずです。
連載
巻頭言/私の歩んだ道 | 元全国連合小学校長会長 安藤駿英 |
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「教師力」アップセミナー 子どもとともに成長する教師をめざして(5)中学校教育・教科担任制のよさと課題-課題克服の鍵はチームによる生徒指導・学習指導の充実と部活動の負担軽減 | 創価大学教職大学院准教授 大関 健道 |
QUを活用したPDCAサイクルで教育実践の向上をめざして(5)ICTの徹底した活用で教育実践の向上を目指した学校の取組 | 早稲田大学教授 河村 茂雄 |
「主体的・対話的で深い学び」を創る(2)小学校理科 新単元:第3学年「光と音の性質」-理科の見方・考え方を働かせ、子供自らが問題を見いだす学び | 十文字学園女子大学教授 塚田昭一 |
続・説明文・意見文を書くことの指導(6)小学校・意見文を書く指導~中高学年 | 筑波大学附属小学校教諭 青山由紀 |
木下是雄と「言語技術の会」ルネッサンス(4)教科書の内容(1)一貫性について | 文部科学省教科書調査官(体育) 渡辺哲司 |
わたしたちの学校づくり(24)論理的思考力を高め、自立した学び手を育成する | 長野県大町市立第一中学校長 山﨑 晃 |
教育統計・測定入門(78)当てはめたモデルの適合性の比較② | 法政大学教授 服部 環 |
教育相談はこう学ぶ!-全国各地の特色ある教育相談研修(5)福岡県教育センター:地域及び学校で生徒指導・教育相談を推進していく人材を育成する研修 | 福岡県教育センター指導主事 古川裕士 |
通常学級の実践から学ぶ特別支援教育のヒント52(5)行動のコントロールを援助する教師の働きかけの工夫 | 埼玉県立大学准教授 森 正樹 |
こうすればうまくいく!スペシフィックSGE(6)SGEを校内に広めていくための模索~機会をとらえ、少しずつ進めていくことを通して~ | 栃木県公立小学校教諭 内野博之 |
授業をみる・語る・研究する(4)Mix型の授業の知覚 | 東京学芸大学名誉教授 河野義章 |
公認心理師の資格をもつガイダンスカウンセラーの実践(5)体育・スポーツ領域における心理支援 | 大坂体育大学大学院スポーツ科学研究科教授 土屋裕睦 |
講座キャリア心理学-キャリア発達を支援する(5)キャリア自己効力感 | 労働政策研究・研修機構副統括研究員 下村英雄 |