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特集
不登校と社会的自立-「育てる支援」の意義-
★不登校の支援は、登校への支援と考えられることが多い。しかし、将来の社会的自立への支援としてとらえる視点をもつことも必要である。不登校期間中の関係経験のあり方が、その後の生活につながっていくからである。再不登校や、社会に出てからの不適応を防止するための経験という意味でも、不登校児の関係経験に視点をおいた支援のあり方を整理する必要がある。大枠として、保護者、中間支援施設(教育支援教室等)、学校という、少なくとも3つの層で整理することができる。他方、近年はSNSの普及とともに新たな関係世界が登場している。これを課題としながら、不登校児に関係経験の場をつくり、「育てる支援」を検討することが必要である。
生きる意欲を育てる-アドラー心理学の観点から-
★不登校児童生徒の生きる意欲を育てるには、アドラー心理学的観点で考えると勇気づけ的な対応が重要となる。勇気づけとは、①私は能力がある、②人々は仲間だ、という考え方をもってもらう対応である。勇気づけ的な対応の具体は対象児童生徒によって異なり、答えは一つに決まらない。しかし課題を分離し、そこから相互尊重・相互信頼の協力的な関係性を築くこと、さらに共同体感覚、すなわち「相手の目で見て、相手の耳で聞き、相手の心で感じ」ながらかかわることが大切である。そのような中で日々を協力しながら暮らすことが生きる意欲を育てることにつながるだろう。何が不登校児童生徒の勇気づけになるのか、援助者の共同体感覚と観察力が重要になる。
対人関係を育てる
★不登校になるきっかけとして最も多いのは、いじめやけんかなどの対人関係上の問題である。
★本稿では事例をもとに、対人関係で傷ついた子どもたちの人間関係再構築を支援する手だてについて考える。
子どものリソースをどのように育てるか
★さまざまな要因によって学校不適応をおこした生徒たちに内在するリソース(長所や好きなこと、得意分野)をいかに育てるのか。その結論は「自己肯定感の構築」と「幅広い教育プログラムの実施」といえる。★筆者が10年間通信制高校の生徒とかかわった経験を通して、さまざまな背景のある生徒たちが日々どのようにして「自己肯定感」を育み、またそれにより内在する力(リソース)を確認し「なりたい大人」へと進んでいるのか、学校心理士の見解を交えながら取組を紹介する。
不登校児童生徒へのキャリアガイダンス-相談場面でのアプローチ
★キャリア教育の視点からみると、不登校状態にある児童生徒は、自らのキャリアプランの中断を迫られているともいえる。教育相談場面を通じて、不登校児童生徒が再び新たなキャリア展望を描けるような支援が求められる。本稿では、キャリアガイダンスを意識した教育相談の事例を中心に、教育相談を通じた不登校児童生徒へのキャリアガイダンスの意義や方法について考えたい。
認知機能を育てる-認知トレーニングによる発達促進・適応向上支援-
★外界の情報(刺激)を受容し処理を行う一連の過程としての認知機能は、自覚しえない中枢神経系の処理過程であり、ヒトの行動表出に影響を与える。近年、発達障害児の認知機能を高めることで、学校適応の改善につながる研究も蓄積されつつある。
★不登校と発達障害の子どもの認知機能の共通の弱みは①物事を別視点でとらえられず行動選択肢が狭まっている、②失敗体験からの立ち直りが弱い、③神経系の過活動が沈静しにくい、ことになる。これらに対しては、認知機能訓練による改善が見込まれる。
★発達障害児に対する認知機能訓練とその効果を紹介し、不登校の子どもへの認知トレーニングを通した発達促進・適応向上支援への援用を提案する。
ゲームのリテラシーを育てる-「eスポーツ」と「ゲーム障害」
★不登校児童生徒が家庭でどのように時間を過ごしているのか、その実態を示す公的な調査はないものの、多くの不登校児童生徒は、余りある時間をゲーム等に費やしていることがうかがわれる。
★これまで指摘されてきたゲームの依存性が、「ゲーム障害」として定義される方針が世界保健機構によって示されようとしているなか、特定のジャンルにおいては、プロゲーマーが活躍する「eスポーツ」が世界的に注目されている。
不登校児童生徒にとって身近なゲームの依存という負の側面と、プロゲーマーという職業や「eスポーツ」の競技としての正の側面と、まずはわれわれ大人が正しく理解し、そのうえでゲームと不登校児童生徒とのかかわりを考える必要がある。
親を育てる-親が子どもに実施する登校支援プログラム
★本稿では、家から見た不登校の問題を取り上げる。学校中心の議論では、親は支援の対象とされ、積極的な役割を与えられていない。しかし、不登校が長期化する中、親が果たす役割は大きい。学校とは異なる親ならではのアプローチも可能になる。ところが、親は子どもを学校に行かせようとして、子どもと対立し膠着状態になってしまう。そのまま数年が経過してしまうこともまれではない。筆者はこのような不登校の親子の関係を共依存という枠組みでとらえ、親が子どもに実施する登校支援プログラムを作成した。
★親が共依存を理解し、子どもへのかかわり方を変えたことで、親子関係が改善した。
連載
巻頭言/なぜ不登校は増え続けるのか | 東京家政大学名誉教授 東京家政大学大学院客員教授 相馬誠一 |
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「教師力」アップセミナー(5)「社会に開かれた教育課程」を考える | 帝京平成大学教授 白鳥 信義 |
QUを活用したPDCAサイクル推進(5)PDCAサイクル推進のポイント(3)Check(評価)から確実なAct(改善)へ | 東京福祉大学助教 河村 明和 |
『きめる』学びで知的にたくましい子どもを育てる(5)理科における「きめる」学び | 筑波大学附属小学校校長 佐々木昭弘 |
説明文・意見文を書くことの指導(5)「文章を設計する」という考え方 | 名古屋大学教授 戸田山和久 |
新教育課程の評価を考える(13)理科 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
新教育課程の評価を考える(14)スタンダードをどう活用するか-評価事例集とセットで活用- | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
特別支援教育に生かすペアレンティング(5)調和がとれたスムーズなコミュニケーション(1) | 子育て科学アクシススタッフ 上岡勇二 |
コミュニティにおけるガイダンスカウンセリングの展開(5)管理職として | 元埼玉県公立小学校長 鈴木 洋 |
成熟した学習者をめざして(4)「学習に対する態度」の実態とその支援 | 神奈川県・私立学校スクールカウンセラー 児玉裕巳 |
これからのキャリア教育(5)次期学習指導要領におけるキャリア教育の位置づけ | 筑波大学教授 藤田 晃之 |
構成的グループエンカウンター再入門(6)二学期の学級開き-夏休みの体験をわかちあうエンカウンター- | 東京都八王子市立城山中学校教諭 加藤みゆき |
講座カウンセリング心理学(5)カウンセリング心理学からみた個別対応 | 東京成徳大学名誉教授 國分 康孝 |
指導と評価の在り方を追究して幾星霜-大学講座の60回の歩み | (一財)応用教育研究所副所長 宮島 邦夫 |