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特集
指導要録改善の考え方
★評価の主体は、以前は教師だけだったが、児童生徒・保護者にも拡大してきた。指導要録の基本的性格も現状に合わせて改め、記入する人も拡大したい。
★現状は、指導機能はほとんど果たされていない。スペースの限界があるので、指導に関する記録はファイルにし、豊富な資料を記録したい。
★証明機能は果たせそうだが、その中核の評定への不信は深刻である。目標を具体化して、すべての教師が共有する以外に道はない。急ぐことである。
★学習指導要領が指導の基準であり、指導要録は評価の基準である。学習指導要領に示された領域の指導の過程と成果を記録するための指導要録の各欄は、それぞれの教育が機能しているかをチェックするために、学習指導要領の領域で構成し、観点・項目は目標から設定する。
★指導要録、その通知の用字・用語は正確にしたい。
指導要録の改善点-各教科の観点と評定について
★「目標に準拠した評価」した指導要録を前進させ、「指導機能」の復権をめざす立場から、新指導要録に対して次のように提案した。
★①「目標に準拠した評価」の真価が試される「観点別学習状況」欄については、学力の基本性を示す「習得」と学力の発展性を示す「活用」の二観点に絞り込む。②主に総合的な学習で「探究」がめざされることから、当面は現行通りの様式とする。ただし、「探究」を分節化できる教育評価研究の進展が期待される。③「学習意欲」については、多義的な文脈で使用されることから、様式としての「観点別学習状況」欄からはずして自由記述にまわす。④このように考えると「評定」欄を設ける積極的な意義がなくなることから廃止する。
指導要録の改善点-国語科
★現行の観点別評価には、国語の力の質的な深まりが構造的に捉えられていない、長期にわたる系統性が見られない、指導者の実感が生かせられないといった課題がある。
★思考を伴う国語の力の質的な深まりを構造的にとらえ、評価の観点とすることや、学年を超えた長期的ルーブリックを観点別評価に採用することが望まれる。
★評価の客観性・信頼性は、ポートフォリオ評価法をより工夫する中で生じてくる。
指導要録の改善点-算数・数学科
★算数科・数学科とも評価の観点として「数学的な考え方」がある。現状ではこの「数学的な考え方」の意味が曖昧であり、その結果、評定し評価する機能がうまく働いていない。そこで、「数学的な考え方」を、「論理的な考え方」と「統合的・発展的な考え方」の二つの意味に重点化し、具体的な児童生徒の姿として目標に表現し、評価し指導していくことを提案する。
指導要録の改善点-社会科
★現行の四観点を学力の還元要素とし、統合するということでは、社会科固有の学力を説明できない。知識・理解内容と思考・判断の関連を、段階的に示すことが必要である。
★また、認知面と関心・態度など情意面との構造を学力モデルによって示すことが必要であろう。
指導要録の改善点-理科
★新学習指導要領における小・中学校の理科学習の基本は、問題解決である。考察と科学概念としての理解がその中心的な課題である。
★この課題を支える指導と評価の視点は、学力要素の一つである思考力・判断力・表現力の充実である。問題解決の過程の理解、問題解決の能力並びに問題解決の成果を科学概念としてまとめたり、表現したりする能力の育成がその具体である。
指導要録の改善点-外国語科
★現行の中学校外国語科の評価は、コミュニケーションへの関心・意欲・態度の評価に問題があり、また学校ごとに評価基準が異なる点に問題がある。
★新しい指導要録では、観点別評価の観点に、聞くこと・話すこと・読むこと・書くことの四観点の設定を望む。その評価基準には、国などが定め、各学校が共通に用いる、外国語能力の発達的な尺度の採用を望む。
指導要録の改善点-音楽科
★音楽科における評価の観点と方法は、指導事項や教育内容の明確化に伴い、評価の観点はこれまで以上に厳密にならなければならない。
★また、確かな学力を育てるという全教科の方向を受け、音楽科においても特に判断力や思考力の育成を重視した指導と、それら能力を見るための評価方法の改善が必要とされる。
指導要録の改善点-図画工作、美術科
★図画工作科や美術科の学習を通して養われる資質や能力を、「子どもの学び」という視点でとらえ、学習のプロセスを重視した系統的な指導と評価が求められている。
★「ものづくり」を基本とした表現形態や表現方法に主眼をおいた作品の評価から、児童生徒が活動を通して発揮している資質や能力について評価していく必要がある。
★コミュニケーション能力の視点を重視した評価の観点や、具体的な所見を伴う評価方法の方法も検討する必要がある。
指導要録の改善点-技術・家庭科
★新学習指導要領では、実践的態度の育成、家庭生活を大切にする心情や意思決定能力、問題解決能力等の育成が謳われ、児童生徒と教師の十分なコミュニケーションを踏まえた多様な指導と評価の工夫を行う必要がある。
★また、技能や知識・理解の評価においては、児童生徒の生活場面での実践を促すことのできる指導と評価が必要となる。
指導要録の改善点-保健体育科
★指導要録の改善として、観点別学習状況の評価の観点については、枠組みを変えるものと変えないものとが考えられる。一つは、現行の枠組みのままで、観点の「知識・理解」を基本において、「関心・意欲・態度」、「思考・判断」、「運動の技能」をその上位に置くものである。二つは、枠組みを変えるものとして、「知識」と「運動の技能」を組み合わせるものと、「知識」と「思考・判断」を組み合わせるものが考えられる。
「行動の記録」の改善点
★学習指導要領が指導の基準であり、指導要録は評価の基準であるので、学習指導要領に示された領域の指導の過程と成果を記録するための欄が指導要録では設定される。しかし、行動という領域はなく、学校教育全体でと、指導があいまいで、その過程や成果が記録しにくい。その教育と評価の徹底のためには、療育として競ってする必要がある。
★現状の、「十分満足」に○を記入するだけでは、指導機能は無いに等しい。「所見」を復活し、具体的な状況を記入させることだ。
★現状の評定は、教師の主観による評定であり、信頼できない。信頼されるために、行動の水準での基準の共有を急ぐ必要がある。
「総合所見及び指導上参考となる諸事項」欄の改善点
★「総合所見及び指導上参考となる諸事項」欄は、評定では評価しきれない経過や背景を、自由に記述できる欄です。
★改善に向けては、①指導の連続性を確保すること、②新しい学習指導要領のねらいを生かすこと、③子どもの成長を見通して記述すること、④特別支援が必要な子どもの情報をつなぐこと、などの視点が必要です。
連載
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(38) 小学校四年、変わり方 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
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PISA型読解力を育てる(13)PISA型読解力を育てる教師の育成 | 教育ジャーナリスト 増田 ユリヤ |
第三回全国学力調査を分析する(1)小学校算数 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
指導要録から学力調査までの試案(5)活用以外にかかわる諸問題について | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
教育の窓(8)食育の原点は食事を大切にすること | 横浜国立大学名誉教授 渋川 祥子 |
ネット時代の読書論(17)教養のための読書-その1-知性の声は止まない- | 東京家政大学教授 平山 祐一郎 |
小学校英語活動のポイント(5)「外国語活動」におけるコミュニケーション能力の素地とは何か-その3- | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
だんわしつ 鶏肋の弁 | 早稲田大学名誉教授 杉本 つとむ |
ひとりごと/野球が好き | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |