- トップ
- 指導と評価
特集
「考える足場」をつくる授業による算数科の習熟度別指導
★算数科の指導内容の特徴として、既習事項の理解のうえに新しい学習を積み重ねていくという系統性がある。しかしながら子どもの学習の様相は多様であり、達成状況もまちまちである。
★子どもの学習状況を判断して、個に応ずる指導方法として習熟度別指導がある。習熟度別指導は子どもを単にコース分けするだけでなく、授業展開自体もコースに応じた工夫を考えるべきである。
★すべての子どもに既習事項を確実に定着させたり、子どもの自力解決力を促進させたりする授業方法として「考える足場」をつくる授業がある。習熟度別指導のいずれのコースにも適用できるが、本稿では基礎コースの算数授業の事例を紹介する。基礎コースの子どもの達成状況を考慮した「考える足場」をつくる授業展開は、数学的な考え方の指導目標を達成するのにも効果的である。
個に応じた指導の充実
★子どもはそれぞれ潜在的な知的能力や関心、予備的な知識などが異なるので、子どものわかり方には個性がある。一斉授業では、こうした個性に応じた理解を助ける授業はむずかしい。
★教科や学習内容ごとに、理解度や理解能力によって学習集団を編成するのは、その打開策であるが、反面優越感や劣等感をもたせてしまう。
★学校の授業には、多様な個性と一緒に学ぶ中で、他者への関心や自己理解を深めるという一面がある。この点では一斉授業が習熟度別より優れている。
★多様な理解度や理解能力に応じることと、同世代の多様な関心や考え方を知ることを授業の中でどうすれば両立するか、各教師が工夫してほしい。
思考力を育てる国語科・算数科のあり方
★「思考力」を支える「基礎・基本の力」として、語彙力、計算力、学習の見通しを立てる力、自己を表現する力などがあげられる。これらは児童の学習の土台となる。帯タイムや日々の授業でそれらの定着を図った。
★本校では、「思考力」を「筋道を立てて考える力」ととらえた。国語科では、事柄の順序、段落、文章構成などを論理的に表現する力を、算数科では、既習事項を活用して、新しい課題に対して見通しをもって解き進める力を育てる。
★児童一人一人の実態に応じて適切な指導ができるように、単元前後に評価して実態を把握し、指導方法の工夫改善を行った。
★年間の取り組みは、P(プラン)→D(ドゥ)→C(チェック)→A(アクション)の繰り返しである。検証として単元毎の評価と年度末の教研式標準学力検査CRTを用いて、全体の動向と児童一人一人の変容をとらえた。
受動から能動への転換を目指した生き生き算数授業
★「受動から能動への転換をめざした生き生き算数授業-問題を見つける力、筋道を立てて考える力、表現する力の育成に焦点を当てて-」を研究主題に研究を進めてきた。研究は、課題を的確に見通し、子どもが「問い」を持ち続け、主体的に考えることを楽しみながら算数の学習に取り組むためには、どのようにすべきかを問い続けてきた。
★その結果、学習の基本パターン「つかむ」「追求する」「高める」「まとめる・ひろげる」の4段階を設け、各段階での子どもの思考過程を分析した授業づくりを行ってきた。
★算数に対する興味・関心が高まり、意欲的に学習に取り組むようになってくるなど、子どもに大きな変容が見られたことや、教育に対する教師自身の意識改革が図れたことなどは、研究の大きな成果である。
授業研究(公開)こそ児童の学力向上に-授業リフレクションノ手法を通した指導力の向上-
★基礎学力の低下が懸念され、マスコミなどで騒がれているが、教師本来の仕事である授業技術を向上させることが、児童の学力向上につながる。
★授業公開・研究会のあり方もこれまでのままでなく、児童本来の学びの時間になっているかを意識しながら、教師自身が授業を振り返ることが大切になる。少人数の研究会で、形式的でない授業の振り返りが児童力の向上につながる。
コミュニケーションを重視した小学校算数科
★指導者は、基礎・基本を重視した算数的活動を授業展開にすえ、その中でコミュニケーションを発揮し、互いに伸びていこうとする子どもを育成する手だてを明らかにする。
★本校がとらえる基礎・基本の一つはコミュニケーションである。また、基礎を「知識や技能」などの個々の内容にかかわっているもの、基本をどこまでも貫いている本質的なものである「数学的な見方・考え方」ととらえている。
★算数科コミュニケーションは、「表記する力(操作的活動も含む)」と「練り合う力」である。
★すべての子どもに発展的な取り扱いを行うことで、基礎・基本をはっきりとさせたり、子どもに考える楽しさを味わわせることができる。
「地域立学校」づくりをめざした中学校改革
★私立に負けない「公立中学校」の魅力づくりは、いわゆる公平性・公共性をふまえた志木市版「地域立学校づくり」にある。本校が地域とともに歩むことによって、思春期・反抗期の時期にある中学生の居がい、やりがいが図られ、学習者として成長したとき、自ら学び、自ら考えるなどの資質や能力が向上するものと確信している。
★学力向上で問われているものは「量」であり、「質」である。教師に問われているのは「授業力」と熱い「人間力」である。中学生の課題は、思春期・反抗期にあるということであり、「自分くずし」から「自分づくり」へと乗り越えなければならない。その乗り越えるための資質や能力こそ、「学ぶ力」である。
学力向上 「一人一人が学習目標に到達できるための指導の工夫」
★学力向上-授業改善をめざした校内研究の柱は、
1.学力調査の実施
2.生徒による授業評価
3.読書活動の充実 の3つである。
★この取り組み以前に、授業を充実させよう、お互いに授業を見せ合おうという取り組みがあり、少なくとも一人年間一回の公開研究授業を実施した。
★学力調査においては、東京都や練馬区の平均正答率との比較とともに、本校の観点別正答率の推移を検討した。そのため入学時に学力調査を実施した。
★生徒の授業評価は、全教科全生徒対象に実施する。教育研究校1年目は必修教科のみ、2年目は選択教科についても行う。教員によっては、結果の考察において前年度のデータとの比較を行っている。
連載
作文指導(3)看図作文-絵図を見て作文を書く | 北海道大学教授 鹿内 信善 |
---|---|
授業をつくる(1)中学校国語「感動を文章に綴る」 | 東京芸術大学附属音楽高等学校教諭 小尾 真 |
学習指導に役立つ外国文献紹介(3) 記憶と情報処理 | (財)応用教育研究所所長 辰野 千壽 |
諸外国の初等教育改革の動向(4)フランス 基礎学力保障のための義務教育改革 2005年教育法が制定される | 宇都宮大学教授 藤井 佐知子 |
私の教育実践(2)中学社会科における論文の指導と評価 | 神奈川県川崎市立宮崎中学校教諭 町田 憲二 |
標準検査を活用した教育実践(1)標準学力検査結果を日々の学習指導に活かす | 前長野市教育センター所長 宮下 袈裟登 |
だんわしつ | (財)応用教育研究所所長 辰野 千壽 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |