月刊誌 指導と評価

2004年 8月号
  1. 2004年 8月号 Vol.50-08 No.596  定価:450円
特集
目標準拠評価の定着に向けて
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特集

目標準拠評価三年目の現状

大阪教育大学名誉教授  北尾 倫彦

★評価規(基)準表は多くの学校で準備されている。表作成のポイントは、単元単位の表、項目の具体性、代表性、「A」と「B」の区別などである。

★継続可能な目標準拠評価にするためには、資料の蒐集の時期と方法、総括の仕方等を簡便なものにする必要がある。

★「関心・意欲・態度」の評価が態度主義になったり、甘い評価になってはならない。

★評価に対する信頼を高めるため、教師評価と他の評価資料とのつき合わせが必要である。標準学力検査はその資料として役立つであろう。

★入試との関連、学校の説明責任など、目標準拠評価をめぐる諸問題を視野に入れた総合的な検討が必要である。

ルーブリックによる評価方法の改善

国立教育政策研究所研究企画開発部企画調整官  河合 久

★ルーブリックは、ある学習活動の評価の規準と基準を示したもので、達成目標がわかるようにしているものである。学習者はルーブリックを使うことにより、めざす目標が明確になり、それに向けた努力がしやすくなる。

★しかし、妥当性や信頼性の高い評価を可能にするルーブリックの作成は簡単ではない。特に児童生徒の作品(仕事)の質の違いをわかりやすく記述することは難しい。

★ルーブリックを継続利用するためには、1.適度に簡便なものにする、2.児童生徒の実態に合わせて改良を加える、3.具体的な児童生徒の作品とルーブリックを用いて、だれが評価しても同じ評価になるように評価者の研修を実施する、といったことが必要となる。

ペーパーテストによる思考力・判断力・表現力・意欲の評価   小学校算数

青山学院大学教授  坪田 耕三

★ペーパーテストによってもさまざまな工夫によって、思考力・判断力・表現力・意欲等の評価は可能である。

★「標準学力検査」の問題や、「教育課程実施状況調査」の問題などから考えてみる。

★問題の解き方の説明、子どもの視点、他の子どもの考え方の読み取り、問題づくりなどがその方法になる。

★また、そのような態度は日々の授業の中で育成される。だから、日々の算数の授業の方法の改善が必要になる。

思考力・意欲などを評価するペーパーテストノ工夫   中学校理科

青山学院大学教授  坪田 耕三

★学校では、継続的な実行可能性が不可欠である。教師自身の指導を振り返ったり、指導に活かす日常的な評価がもちろん大切だが、総括的な評価としては、定期考査でのペーパーテスト法を中心にするのが現実的だ。作問を工夫し、観点別に出題している。

★定期考査で大切なことは、本筋を見極めた最も基本的な資質や能力を評価するように作問することである。ここでは「科学的思考」「観察実験の技能・表現」や「関心・意欲・態度」を評価する問題例を紹介する。

実際に使えるかどうかで身に付けた力を評価する

鶴見大学講師  岩間 正則

★長期的な発達段階をとらえるためには、「身に付けた力」を評価していくことが大事である。

★「身に付けた力」というのは、実際に使える力を想定している。そのため、学年末に評価場面を設定したい。

★実際に使えるそれぞれの領域の力をつけるには、他の領域の単元でも意図的に学習活動を組んでいく。

★「身に付けた力」について生徒自身も自己評価することが、さらに国語力の向上につながる。そのための自己評価活動として、学年末に1年間の凝縮ポートフォリオを作らせることが効果的である。

子どもの作品をどう評価するか

兵庫県三日月町立三日月小学校教諭  桑田 隆男

★ペーパーテスト重視の評価観から脱却するためには、点数では判断できない子どもの作品や学習物を真正に評価するという視点からルーブリック・スタンダード準拠評価を取り入れた「評価基準表」の作成が急務である。

★複数の単元でも通用するルーブリック・スタンダード準拠に基づく「評価基準表」を作成すれば長い学びの過程の中で評価することが可能になる。思考・表現などの観点を評価するためにはルーブリンク・スタンダード準拠評価が適している。

★子どもたちへ事前に「評価基準表」を公開することで、評価も学習であるという考え方が浸透してきた。また、複数の単元において同じ「評価基準表」を用いることで、継続的な子どもの学びを高める可能性も見えてきた。

評価規準の焦点化ト子どもの姿のイメージ化

静岡県森町立旭が丘中学校教頭  村松 啓至

★問題は、評価規準表が「指導指標」になっていて「評価指標」になっていないことにある。目標準拠評価を定着させるためには、まずは評価規準を焦点化し思い切り精選することである。そのためには、教師の指導中心で作られた規準表を検討して、長いスパンで子どもの姿をとらえ、評価のみを視点とし、数少ない評価規準にしぼり、教師が意識化できる規準表に転換していくことが大切である。

★目標を実現している子どもの姿をとらえることは、簡単そうでなかなか難しい。目標準拠評価の根幹であるにもかかわらず、評定を出す数値化に追われ、子どもの姿、子どもの学びがとらえられていない場合がある。今必要なことは、具体的な子どもの姿、子どもの学びを持ち寄り、議論することである。

目標準拠評価定着のためのリーダーシップ

大分県久住町立都野中学校長  森本 高美

★目標準拠評価の定着は、教育課程を自分たちの手で作ることから始めると良い。その実践のなかでよりよい評価方法を目指し、授業展開の工夫を図ることにつながる。

★目標準拠評価に真摯に取り組めば、教師への信頼から学校の存在価値が生徒や保護者・地域にも認められる。そのために管理職としてのリーダーシップをどのように発揮するかが課題となろう。

連載

小学校算数の基礎・基本の指導と評価(15)   計算について考える(4)-計算練習を考える 元筑波大学附属小学校教諭
正木 孝昌
学習意欲のとらえ方・育て方(5)   上手な報酬の与え方 応用教育研究所理事長・筑波大学名誉教授
櫻井 茂男
問題解決能力とその評価(5)   数学科における問題解決能力と評価 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
ドリルについて考える(5)無理・無駄のない効果的なドリルを求めて(1)   手抜きと工夫の違い(1)漢字ドリル どんぐり倶楽部 代表
糸山 泰造
最新テスト事情(3)   テスト問題の作り方(英語) 関西大学助教授
静 哲人
だんわしつ 星槎大学副学長
川野辺 敏
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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