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特集
「確かな学力」向上のための施策
★わが国の児童生徒の学習の状況は、知識・技能の習得等については比較的高い水準にあるが、教科・科目・領域によっては、定着が不十分であったり学ぶ意欲や習慣が十分身についていないなどの課題も多い。今後の学校教育にあっては、基礎・基本をしっかりと身につけ、学意意欲や思考力、判断力、表現力等まで含めた真の意味での学力をバランス良く育み、生涯にわたって主体的に学び続け、問題を解決していくことができる「確かな学力」をしっかりと培っていく必要がある。
★文部科学省では、このような考え方にたって学習指導要領を改訂し「学力向上アクションプラン」を策定しており、各学校は実態を踏まえ個に応じた指導などを通じ、「分かる授業」に取り組んでほしい。
今求められる学力向上策 -習得サイクルと探究サイクルのバランスとリンクを-
★「確かな学力」の育成に向けて、児童・生徒にどのような学習を促すのか、どのような学習環境をつくるのかという基本的な問題を「学習の2サイクル」をもとに考えていく。
★「既存の知識を備えることを目的とする学習」だけでなく、「知識を活かして自らの課題を探求する活動」を学校ではもっと取り入れる必要がある。
★授業や家庭学習を通じて、学習の基本的なスキルを身につけるための指導を積極的に取り入れることが望まれる。
★「教えずに考えさせる授業」をよしとするのではなく、「教えて考えさせる授業」を基本方針にするべきである。
★子どもたちは、生活全体の中で学ぶ。だから、授業外学習支援を自治体、市民団体、民間団体などが充実させ、その利用を促すシステムを考えていく。
学力向上のための様々な工夫 -習熟度別マスタリー・ラーニングと習慣プログラム-
★昨年度、オープンスクール開校25周年を迎えた。本稿は、開校当初から、個別化・個性化教育に取り組んでいる。学力を狭い意味でとらえるのではなく「生きる力」を支える事故学習力をも学力の一つとしてとらえ、研究を進めている。
★文部科学省の研究開発学校の委嘱により、教育課程の編成を行い、実践を重ねてきた。本校の学力向上のための工夫として、習熟度別によるマスタリー・ラーニング、自己学習力を高める週間プログラムによる学習について紹介する。
学力向上のための小学校の教科担任制
★教科担任制は、教師の専門性を生かし、授業の内容を充実させるために大変有効な方策である。レベルの高い授業ができるので、学力向上につながる。
★しかし、小学校には特に必要な「子どもをよく見る」という意味で、学級担任の授業が一日に一時間しかないということが、学級経営を難しくする場合も出てくる。
★また、一時間で授業を終える必要があり、一般の小学校のように、作業の途中なので次の時間の半分まで授業を延長する、ということがまったくできない。
★メリットを活かし、デメリットをどのようにカバーするかをよく検討してから導入するかどうかをきめるべきである。
個に応じた指導 -問題追求型の学習を-
★個に応じた教育の推進が求められている。とはいっても一時間一時間の授業で個に応じた授業をするのは難しい問題である。ここでは、課題追究を中心にポイントと実践例を述べる。
★まず、興味が湧き追究したくなるような「良い課題」を用意することだ。「良い課題」は、基礎・基本と発展的なことを内包している。多様な考えができ、考え方に広がりとつながりがある課題で、意外性があり、操作活動を伴うといった要件のうちいくつかが含まれている。
★こうした課題に困難を伴う生徒には、よりやさしい課題から考えさせたり、机間指導でヒントを与えたりして、課題に取り組めるようにする。
教科書・副教材の活用 -百ます計算のねらうこととその先
★漫然と学力低下の不安がある中、百ます計算が一大ブームとなった。百ます計算に取り組む私のねらいは、計算力の向上だけではない。タイムがあがることによって、意欲の向上、集中力の向上、教師への信頼感の高まりといった効果がとても大きい。ほめられる体験を重ねることも好循環を生む。
★本校では、文部科学省研究指定校として、国語・算数を各15時間上乗せし、年度当初に百ます計算や新出漢字の前倒し学習を行っている。
★ただし、百ます計算への過大な期待は禁物である。百ます計算はスポーツの準備体操のようなもので、みずから考えるための効率的な土台作りといえる。その後には、多様な学習がなされなければならない。
学力向上対策として標準学力検査を活用して
★昨年度から委嘱の学力向上フロンティア事業の使命を「確かな学力」と「学ぶ意欲」の育成と考え、また、その成果の普及が役割であると受けとめている。
★標準学力検査NRTを(診断的S-P表を含めて)学級の学力の実態を把握するために活用し、また、発展的な学習や補充的な学習など個に応じた指導に取り組み、その手だての有効性を翌年のNRTの結果により検証する。
★また、S-P表の注意係数の高い児童の実態や標準学力検査CRTの結果により、通過率の低い領域について補充・発展指導を実施する。
★五校時の前に25分間のモジュールタイムを位置づけ、技能の習熟の時間として活用したり、通知表を年2回発行に改訂するなど、組織的・一体的に確かな学力を向上させる取り組みのための実践研究を行っている。
学力向上のために何をなすべきか -生活習慣・学習習慣・学び方・自己統制力-
★今日、学力低下が社会問題になり、種々の学力向上対策が講じられているが、それは主に教育課程、教育方法、評価方法など子どもの外にある外的条件の改善に向けられている。しかし、学習するのは子ども自身である。いかに指導法を工夫しても、子どもに学習意欲がなく、効果的な学び方が身についていなければ(子ども自身に属する内的条件を改善しなければ)、学力の向上は期待できない。
★そのためには、家庭と連携し、規則正しい生活習慣、できることは自分でやらせるなどのしつけをする。また、学習過程を制御できることを意図して、学習法を小学校低学年から指導する。
連載
私が行っている継続可能な目標準拠評価(5) 小学校体育 | 静岡県磐田市立東部小学校教諭 金澤 光雪 |
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私が行っている継続可能な目標準拠評価(5) 中学校保健体育 | 山形県南陽市立宮内中学校教諭 大友 信昭 |
<特別寄稿>高等学校における目標準拠評価 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
小学校算数の基礎・基本の指導と評価(3) 基本を考える-「計算について考えること」を例に(2) | 元筑波大学附属小学校教諭 正木 孝昌 |
中学校の総合的な学習と選択教科の実践(3) 総合的な学習で育てたい5つの力と選択教科の2つのねらい | 兵庫県猪名川町立中谷中学校 |
標準学力検査を活用した教育実践(14) CRT検査導入の成果と課題 | 大分市立鶴崎中学校教諭 木津 博文 |
だんわしつ | 京都大学准教授 西岡 加名恵 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |