月刊誌 指導と評価

2002年 8月号
  1. 2002年 8月号 Vol.48-8 No.571  定価:450円
特集
<参考資料>を踏まえた観点別評価の実際と評定(2)算数・数学、図工・美術
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特集

<参考資料>をどう受けとめ、どう生かすか

白梅学園大学名誉教授  無藤 隆

★今回の<参考資料>はあくまで参考資料である。とくに例示は趣旨を理解するためのものであり、そのまままねする必要はない。目標を達成するために、目標準拠評価をして指導改善を図るのが主眼である。

★教育現場では、目標は一つでなく、子どもの「達成状況」も幅がある。だから、ゆるやかで大まかで、かつ学習の進歩の度合いがわかる評価方法がよい。

★観点別評価では、まず、具体的にどのような力が育ち、どのような姿が現れればよいかを描き出すことが大事だ。そしてその姿は、何段階かに分けられるか考えてみる。そして、さまざまな資料(ペーパーテスト、作文、作品、パフォーマンスなど)から、何段階かのラフなまとめ方をすればよい。

算数・数学:<参考資料>を生かした算数科の授業改善

国立教育政策研究所教育課程教育センター教育課程課教科調査官  吉川 成夫

★「参考資料」を作成するにあたっては、学習指導要領に示されている算数の基礎的・基本的な内容が子どもたちにたしかに身に付くようにするという大きなねらいがあった。

★「参考資料」では、算数の「数と計算」「量と測定」「図形」「数量関係」の四領域ごとに評価規準を示している。こうした評価規準は、学習指導要領における算数の目標、各学年の目標と内容をもとにしている。また、評価の観点の趣旨(「指導要録の改善の通知」に記載されているもの)をもとにしている。また、評価の観点の趣旨(指導要録の改善の通知」に記載されているもの)をもとにしている。

★「参考資料」では、第5学年「面積」の単元での評価に関する事例を掲載している。単元における評価規準や、単元の各時間ごとの観点別評価の進め方などを紹介している。

算数・数学:<参考資料>をどう生かすか(小学校)

高知大学附属小学校教諭  藤田 究

★私たちは、<参考資料>に書かれている内容を重視し、「指導と評価の一体化」をキーワードとしながら、教育課程研究に取り組んできた。しかし、「評価規準の具体例を設定すること」や「評価方法の工夫をすること」を到達点とは考えなかった。日々の授業実践を常にふり返りながら、評価することの意味を問い続け、「子どもと教材と教師とのかかわりがより深まったり高まったりする算数的活動の具現化」をめざしてきた。その取り組みの過程こそが、子ども一人一人に確かな基礎・基本を育むことにつながるとともに、これからの評価のあり方を明らかにしていくことになると考えた。

★私たちは次の3つの段階を経て、これからの評価のあり方を模索しようとしている。

(1)<参考資料>に書かれている内容を重視し、評価のあり方の改善を図る。

(2)各教科固有の学びを精選しておさえ、指導のあり方の改善を図る。

(3)(1)(2)の取り組みをもとに、指導と評価の関連を明らかにする。

算数・数学:<参考資料>をどう生かすか(中学校)

東京学芸大学附属世田谷中学校教諭  山崎 浩二

★評価を考えることは、すなわち数学の指導そのものを見直していくことになる。参考資料を通して、指導と評価のより一層の一体化が図られること、生徒が数学の学習に対してより自信をもてるようにしていくこと、数学的活動の積極的な導入を実現すること、主観的判断と客観的評価のバランスを考えること、評価に対する説明責任(アカウンタビリティ)を明確にすること、などに留意することが必要であろう。

★評価を変えれば、授業も変わる。それぞれの実態に即した日々の実践の中で、生徒が、基礎的な知識・理解や表現・処理を確実に身に付けていくと共に、数学的な見方や考え方をのばしたり、数学的活動を楽しむことを通して、数学の学習をより豊かなものにしていくことが評価の充実につながる。

算数・数学:<参考資料>をどう受けとめ、どう生かすか

東京理科大学嘱託教授  澤田 利夫

★新教育課程では、新しい学力観を踏襲・発展させて、評価の仕方が改められた。その特徴は、目標に準拠した評価と個人内評価の重視、指導要録の「評定」欄を「絶対的評価を加味した相対評価」から、観点別評価を基本的要素とした絶対評価へ変更したことである。

★国立教育政策研究所から出された<参考資料>は大変貴重な資料である。ただ観点別学習状況の評価では、もう少しきめ細かく用語を使い分けたい。

★絶対評価には

1.評価規準の適切な設定

2.達成不十分への対処

3.外部への説明

といった解決すべき問題点がある。

図工・美術:<参考資料>をどう読み、どう生かすか

文部科学省初等中等教育局視学官  遠藤 友麗

★評価は児童生徒にとっては、自己の学習や能力などの実情を知ることと、自分の学びの目標を持つために行われる。したがって、資質・能力等が確かに身に付く個に応じた指導とともに、評価結果を児童生徒に適切に知らしめることが必要になる。評価にあたっては、学習指導要領の目標・内容から導き出した評価の観点及び客観的な評価規準に基づいて行う。しかし、評価のための授業になってしまわないよう、評価の場と時の最適化、評価の効率化、多様な評価情報の収集方法などの開発を図ることが欠かせない。また、学びの結果である作品から4つの観点に照らして、一人一人の学びや自己評価を読み取りながらじっくり評価する工夫などが求められる。

図工・美術:<参考資料>をどう生かすか(小学校)

筑波大学附属小学校教諭  佐々木 達行

★「題材の評価に関する事例」は、様々な課題を残しながらも、新しい図画工作科の教育のあり方を評価の観点から具体的な実践例を通して述べたものである。

★絵の描き方やもののつくり方を教える知識や技能の教育から、絵を描くことやものをつくることを通して創造活動の基礎的な能力を育て、豊かな情操を養う教育へという、いわゆる造形の教育から造形を通した教育への転換を具体的に示したものである。

★新しい図画工作科の教育のあり方は、評価規準を示したものの、観点別評価の方法や評価の共通基準、観点別評価の総括の方法など評価の複雑さをともなって解決しなければならない課題が山積している。しかし「題材の評価に関する事例」は新しい教育のあり方を築く第一歩となるはずだ。

図工・美術:<参考資料>をどう生かすか(中学校)

お茶の水女子大学附属中学校教諭  小泉 薫

★生徒の学びの自立をはかり、生徒自身が達成感をもてるような教師の指導と評価のあり方が問われている。

★美術科の評価に対しての弱さをよさに変えて、継続的な評価の蓄積をもとに説得力のある評価への転機として捉える。

★教科の基礎・基本を明確にして、教科指導のねらいや身につけさせたい力を生徒・保護者に示し、情報の共有化を図る。

★指導計画の一層の充実と各題材での評価の場面や評価の視点などの確立。

連載

教育評価再入門(5)   「評価の結果の解釈(2)-評価の背景となる学習観との関連-」 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
教科の基礎・基本(2)<中学校国語科>(2) 京都女子大学講師
宝代地 まり子
目標準拠評価の評価規準の体系化の方策(5)   「学習内容に沿った評価規準の例-算数・数学-」 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
標準学力検査を活用した教育実践(4)   「NRTを生徒理解と指導改善に活かす」 愛知県東海市立上野中学校教諭
沢里 義博
総合的な学習の実践と評価(12)   「発表会の相互評価と自己評価を生かす」 お茶の水女子大学附属中学校教諭
薗部 幸枝
だんわしつ (財)応用教育研究所所長
辰野 千壽
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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