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特集
❶標準検査の理解と活用のしかた/教育と標準検査
★戦後の教育は、アメリカの指導下で、「客観的な資料」に基づく科学的教育をめざした。文部省(当時)は、最も「客観的な資料」を収集できる測定技術は標準検査であると認め、指導要録に「標準検査の記録」欄を設けて記録を義務づけたので、その実施、活用が普及した。
★現在、世界の教育の潮流は、確かな「証拠」に基づいて決定し、行う、である。最も確かな「証拠」を収集できるのは標準検査であると、文科省も専門家も認め、実施、活用をすすめている。
★これからの教育では確かな「証拠」に基づいて、カリキュラム・マネジメントを行うことになる。そのサイクルPDCAの確立には、標準検査は必要不可欠である。
❶標準検査の理解と活用のしかた/標準学力検査-NRTとCRT
★標準学力検査は、集団基準準拠検査(NRT)と目標基準準拠検査(CRT)に分けられる。両者の異同を理解することが、効果的な活用につながる。
★どちらも、個人とともに学級や学年等の集団の学力水準を客観的かつ多様な指標で把握することができ、児童生徒の個別診断と集団指導の改善に活用できる。
★独自の質問紙等と組み合わせることで、学力の形成要因を特定し、指導に活かすことができる。
❶標準検査の理解と活用のしかた/集団式知能検査(認知能力検査)
★知能構造に関して注目されている理論にCHC理論がある。本邦では「教研式 認知能力検査NINO」がCHC理論に立脚して開発された。
★知能と学力の相関は高いが、知能だけで学力の高さが決まるわけではないから、アンダー・アチーバーの児童生徒では学習の阻害要因を探り、個別に学習支援を行うことが望まれる。
★NINOの結果からクラスの特徴を読み取り、必要に応じて学習指導を行うことが期待される。
❶標準検査の理解と活用のしかた/バッテリー活用
★バッテリー活用とは、複数の検査を組み合わせて多面的に情報を得る方法である。
★知能検査(認知能力検査)と、標準学力検査「NRT」の相関的な利用がよく知られており、アンダー・アチーバー(UA)の指導に活用されている。
★バッテリー活用には、「能力検査」と「質問紙法検査」を組み合わせたものもある。例えば、標準学力検査NRT・CRTと、Q-Uの結果をクロス集計したものである。これにより、児童生徒の学習面と生活面の支援ニーズを学級単位でとらえることができる。
❶標準検査の理解と活用のしかた/教研式 全国標準 Reading-Test 読書力診断検査とは何か、どう活かすか
★Reading-Testは読書力(読みの力)を読字力・語彙力・文法力・読解力によって測り、読書についてのアンケートにより、読書意欲・読書意義・読書行動・読書についての悩みを把握する。
★Reading-Testにより、個々の子どもたちの力に応じた指導・支援が可能になる。
★時代や状況で、求められる読書力(読みの力)は異なる。しかし、子どもたちに、教科書を読むレベルの力は確実につけなければならない。Reading-Testを上手に活用したい。
❶標準検査の理解と活用のしかた/Q-U
★日本の学校教育は、学級集団の状態の影響がきわめて大きい。したがって、学級集団の状態を教育力の高い状態に維持することが、学校教育を向上させる必要条件となる。今年度からはさらに、学級集団は集団の学びの土壌としての面が重視され、インクルーシブ教育の推進もあわせて、教師の学級経営の重要性はますます高まる。Q-Uは、学級集団に注目し、教師が学級経営の指針を得るための情報を、提供する心理検査である。
❶標準検査の理解と活用のしかた/KABC-Ⅱ
★KABC-Ⅱは、2歳半から18歳11か月の子ども・青少年の認知処理方略と学習の習得度をアセスメントする検査である。読みや書き、算数(数学)など学習でつまずいている子どもへの指導や、行動面、生活面で困難がある子どもの「得意な学び方、方法」は何なのかを知ることができる。本稿では、事例を通じて、KABC-Ⅱで子どもの得意な学び方を知り、どのように本人にフィードバックして支援につなげるかを論じた。
❶標準検査の理解と活用のしかた/HUMANおよびBEINGにおける結果の見方と活用
★両アセスメントの結果は児童生徒の道徳性をとらえるための基礎資料となる。
★集団式アセスメントの情報は、個々の結果か集団の結果かという見方の軸をもつとよい。HUMANでは集団の集計がよく用いられる。BEINGでは個人票から児童生徒像が浮かび上がる。
❷学校におけるセクシュアルマイノリティへの支援/「性の多様性」を前提に学校をともにつくり直す
★近年では、学校内の「性の多様性」への理解が進み、セクシュアルマイノリティの生徒たちへの支援が起こりはじめている。制服の選択制などが例であるが、これはすべての生徒にかかわることである。
★これからのシティズンシップ教育として、「性の多様性」についても、生徒の学習と、校内研修や保護者の学習の機会をつくることが望まれる。
❷学校におけるセクシュアルマイノリティへの支援/児童生徒への心理学的視点からみた支援
★セクシュアルマイノリティの児童生徒は学校現場においてさまざまな差別偏見をうけており、それはいじめ・不登校・自殺企図等につながっている。同性愛・両性愛の心理的苦痛と性別違和感をもつ者の心理的苦痛についての研究を紹介し、教職員、心理専門職、保護者の意識変容が急務であることを示した。
❷学校におけるセクシュアルマイノリティへの支援/本人と家族への支援
★性のあり方に悩む生徒の姿は大人からは見えにくいが、カミングアウトを受けやすいとされる同級生の共感力をはぐくみ、性の多様性にひらかれた学校づくりを心がけることで、悩んでいる当事者を間接的にサポートすることが可能になる。
★個別対応にあたっては本人の意思や同意を確認することが重要であり、男か女かの二者択一ではなく、いろいろな人間がいることが当たり前との前提で接する。
❷学校におけるセクシュアルマイノリティへの支援/教員でもある当事者の視点から
★筆者は小学校の教員であり、セクシュアルマイノリティの中のゲイ(男性同性愛者)の当事者である。そのことをオープンにして生活をしている。当事者教員としてのライフストーリーや自身のカミングアウトのストーリーを通して見えてきたことは、支援と指導の両方が必要であるということである。そして指導と支援の方法は新しい手だてを考えるだけではなく、いままで有効だった手だてを再考することが大切である。
❷学校におけるセクシュアルマイノリティへの支援/教育委員会が主導する「性の多様性」に関する学習
★学校における性的マイノリティの人権保障のためには個別支援だけでなく全体への指導が重要な鍵を握っている。教育委員会として「LGBTではなく、性の多様性を学び、すべての人の生き方を考える」という姿勢で、素地づくりや性の在り方が多様であることの正しい理解を重視した学習構造を提示した。正しい知識に基づいて多様性が尊重される学校は、当事者だけでなくすべての児童生徒にとって安心できる学校である。
❷学校におけるセクシュアルマイノリティへの支援/学校で多様な性について伝える意義と効果:中学生への授業実践から
★セクシュアルマイノリティは自殺等におけるハイリスク層であると言われている。自殺念慮等が高まる二次性徴期の小学校高学年前後からは適切な支援と正しい情報提供が望まれている。本項では、認定特定非営利活動法人ReBitが作成した教材を用い、中学校教諭らが実施した多様な性に関する授業実践と教育効果について紹介する。
巻頭言/子どもたちは先生を見ています
連載
木下是雄と「言語技術の会」ルネッサンス(13)ルネッサンスになぞらえて | 文部科学省教科書調査官(体育) 渡辺哲司 学習院高等科教諭 松濤誠之 |
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小学校英語の指導と形成的評価(1)コミュニケーションの素地を育む指導とは-小学校3.4学年 | 新潟大学教授 松沢 伸二 |
教育の窓「新型インフルエンザ」感染校における苦情対応と風評被害より学ぶこと | 福岡教育大学・九州栄養福祉大学非常勤講師(元福岡市立長尾中学校校長) 岸川 央 |
教育統計・測定入門(86)多重代入法に基づく結合推定値の有意性検定 | 法政大学教授 服部 環 |
教育相談はこう学ぶ!-全国各地の特色ある教育相談研修-(16)現場のニーズに対応した、教師の実践的指導力の向上を図る研修 | 佐賀県教育センター教育支援課 川副良介 |
「概念」を教える・学ぶ(3)教材の成分に基づく授業のデザイン | 東京学芸大学名誉教授 河野義章 |
予防としてのコミュニケーション教育(4)感情に焦点化したソーシャルスキルトレーニング | 東京情報大学准教授 原田 恵理子 |