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特集
知能観の変遷と認知能力
★人間の高い思考やコミュニケーション力を支えているのが知能であるが、定義はむずかしい。ひとまず、抽象的に思考する能力、学習する能力、環境へ適応する能力とまとめられよう。また、現実には知能すべてを測定することはできないから、知能検査で測定されたものが知能とする操作的定義も無視できない。近年は知能という語に代えて認知能力ということも多い。
★知能検査が開発されてから100年あまりになるが、知能観(知能の構造モデル)も変遷した。現在、もっとも有力なものがCHC理論である。
★知能検査の結果を利用する際には留意点がある。①知能は不変ではない。他の個人特性と同様、遺伝の要因だけでなく環境が影響する。②子どもの援助に生かすことが目的である。
集団知能検査の発展
★近年、「認知能力」とも呼ばれるようになった「知能」は、個別知能検査と集団知能検査の2つの方法によって測定されている。個別知能検査は面接形式であるので、大勢の人々に対して、迅速に実施することはできない。そこで、集団知能検査が開発されたという歴史がある。最近では、知能を構成する能力(因子)が多岐に及ぶようになったため、じっくり時間をかけて行う個別知能検査であっても、知能の全体を測ることはできない。集団知能検査は紙と鉛筆だけを用い、個別知能検査よりも限られた時間で実施するため、なおさらである。したがって、集団知能検査は、子どもたちの学習の改善や学力の向上など、より目的的な開発がなされるようになった。
学力向上への知能検査の活かし方
★知能検査の結果は、学習指導のための基礎資料となる。総合的な指標はもちろん、分析的な視点で機能別等の結果も得られ、これらを参考にして個に応じた支援を検討できる。
★学級単位での結果や特徴をとらえて、授業の組み立ての参考にすることができる。
★標準学力検査「NRT」とのバッテリー活用を行い、児童生徒理解を深めることができる。
個に応じた指導の充実-指導の精度を高めるためのアセスメントとその活用-(知能検査・NRT・AAIの活用)
★基本的な指導方針:①標準検査結果と教師観察を重ね合わせ、多面的で客観的な生徒理解に努める。②生徒の状況にマッチングする適切な指導・支援に努める。③生徒の変容や成長を踏まえ継続的な指導・支援に努める。④生徒の情報は必要に応じて関係職員が共有し適切な対応に努める。⑤保護者面談においても深い生徒理解を踏まえた対応に努める。 ★認知能力に関するアセスメントの有効活用(おもに知能と学力の相関の視点から) ★主体的な学びを診断する学習適応性検査AAI(おもに重要な非認知能力の視点から)
知能・学力を利用した研究―ある小学校の縦断データから
★知能や学力に関する教育心理学的研究は、かつてはさかんであったが、近年は下火である。研究知見が50年以上前のものもあることから、再考の余地がある。
★ある小学校の「教研式新学年別知能検査サポート」および「教研式標準学力検査NRT」の最近のデータを利用した研究からは、知能が学力を強く規定するという従来の知見が支持されたが、学習コンピテンスが知能に匹敵する規定要因であることも明らかになった。
★各学校にねむる知能や学力に関するデータを活用することによって、新たな研究知見がもたらされる可能性がある。ただし、アカデミックな興味本位ではなく、協力校の教育改善を目指して取り組む必要がある。
日本版KABC-Ⅱ心理・教育アセスメントバッテリー
★日本版KABC-Ⅱは認知能力だけでなく、基礎学力(語彙、読み、書き、算数)を測定できる個別実施式の検査である。
★認知能力とともに基礎学力を測定できることから、両者の差異の分析が定量的に可能となるとともに、支援・指導といった心理・教育的な働きかけに直結する。
★日本版KABC-Ⅱは、日本版K-ABCから継承したカウフマンモデルと最新の知能理論であるCHC理論に基づくCHCモデルの2つの解釈法を有する。
★CHC理論は、スピアマンにはじまる知能の因子分析的研究の集大成であり、現在使用されている主要な知能検査の改訂においては、このCHC理論への準拠が常に考慮されている。日本版KABC-Ⅱは、CHC理論を正式に導入した日本ではじめての検査である。
連載
巻頭言/日本心理学会の「公認心理師大学カリキュラム 標準シラバス(案)」についての所感 | 東北大学教授 宮本友弘 |
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QUを活用したPDCAサイクルの推進(4)PDCAサイクル推進のポイント(2)-成果を確実にするDo(実行)のあり方- | 東京福祉大学助教 河村 明和 |
「教師力」アップセミナー(4)学び続ける教師 | 帝京平成大学教授 白鳥 信義 |
説明文・意見文を書くことの指導(4)小学校読むことの指導と関連づけた書くことの指導 | 筑波大学附属小学校教諭 青山由紀 |
「きめる」学びで知的にたくましい子どもを育てる-主体的・対話的で深い学びを実現する授業づくり-(3)算数科の「きめる」学び | 筑波大学附属小学校教諭 中田寿幸 |
新教育課程の評価を考える(12)国語「話すこと・聞くこと」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
教育の窓(31)学力に影響を与える諸要因の効果のスーパーシンセシスによる知見と問題解決における理知的な推論-『教育の効果』をどう読むか- | 国立教育政策研究所総括研究官 山森 光陽 |
特別寄稿/テスト情報の活用と進化への道 | 立教大学名誉教授 池田 央 |
特別支援教育に生かすペアレンティング(4)確立された、ブレない生活習慣 | 子育て科学アクシススタッフ 上岡勇二 |
構成的グループエンカウンター再入門(5)日常のかかわりに生かす-SGEの思想と理論から- | 彩の国学舎くき学園 吉田 隆江 |
成熟した学習者をめざして(3)家庭学習と授業を連動させる | 「指導と評価」編集部 「指導と評価」編集部 |
コミュニティにおけるガイダンスカウンセリングの展開(4)過敏性腸症候群の生徒への対応-周囲との連携とクラスづくり- | 高等学校教諭 川俣邦彦 |
これからのキャリア教育(4)進路指導とキャリア教育との“微妙な関係” | 筑波大学教授 藤田 晃之 |
講座カウンセリング心理学(4)カウンセリング理論の類型と連携 | 東京成徳大学名誉教授 國分 康孝 |
教育統計・測定入門(68)項目反応理論-項目特性曲線 | 法政大学教授 服部 環 |