月刊誌 指導と評価

2017年 7月号
  1. 2017年 7月号 Vol.63-7  No.751  定価:450円
特集
新学習指導要領における指導と評価(1)総則、国語、社会、音楽
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特集

新学習指導要領について-改訂の基本的な考え方と三つのポイント-

文部科学省初等中等教育局財務課長・前教育課程課長  合田 哲雄

学習指導要領の構造化

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★今回の学習指導要領の特徴は、「縦の構造化」と「横の構造化」を図ったことである。
★横の構造化に関しては、その是非や方法をめぐって欧米でも議論の最中であり、課題は大きい。
★縦の構造化は現行の教科を前提とすればかなり研究されており、横の構造化よりも進んでいる。
★縦の構造化は主として評価の役割であり、指導要録の検討を早めに開始するべきである。

小学校国語科

文教大学教授  藤森裕治

★国語科において育成すべき資質・能力として、学校教育全体と国語科とのつながりは、主として「学びに向かう力・人間性等」の項目に見いだされる。すなわち集団のために自らを投資したり、相手の気持ちを尊重したり、自己実現に向けて取り組んだりすることを価値ある行為として実践することのできる資質・能力の形成である。
★小学校国語科として最も重視すべき資質・能力とは、語彙を豊かにし、他者と広くかかわり、自己の思いや考えを書き言葉として説明しようとする態度である。
★新しい国語科教育における評価とは、子供の未来性を信じ、学びの広がり・深まり・高まりの観点から、子供自身が自らの学びを自らの言葉で捉え、意味づけ、表明できるよう寄り添うことである。

中学校国語科

筑波大学教授  島田康行

★論理的思考力を重視する方針が色濃く表れた改訂となった。
★とくに、「読むこと」の指導事項において「文章を批判的に読みながら、文章に表れているものの見方や考え方について考えること」と「批判的に」読むことが掲げられたことは画期的である。近年では「批判的に」読むことに焦点を当てた実践報告も散見されるようになった。今後は教科横断的な視点に立った指導法の開発研究が望まれる。
★「書くこと」においては、考え方や価値観の異なる様々な読み手の存在を想定したうえで、自らの考えを明確に伝えるための論理の構築が求められている。多様な価値観を認め合いながら合意を形成し、協働していく力の育成が目指されていると捉えることができる。

小学校社会科

前兵庫教育大学教授  原田智仁

★二一世紀社会を生き抜く市民の育成のためにも、社会科の生き残りのためにも、資質・能力の三つの柱(知識・技能、思考力・判断力、学びに向かう力・人間性)に即した指導と評価が必要である。
★資質・能力の育成には、「主体的・対話的で深い学び」が不可欠であり、深い学びを生むためには「見方・考え方」を働かせる必要がある。社会科では、地理的見方・考え方、歴史的見方・考え方、現代社会の見方・考え方に分かれる。
★新学習指導要領では、資質・能力の三つの柱に即して各学年の目標・内容が記述された。また、社会科の見方・考え方を反映し、各学年の内容が地理、歴史、現代社会という色彩の単元に再構造化され、主権者教育の視点も重視された。

中学校社会科

元大正大学教授  館 潤二

★新学習指導要領の目標は、「社会的な見方・考え方」を活かした課題解決能力、「知識・技能」「思考力、判断力、表現力」「主体的に学習に取り組む態度」という資質・能力の育成へとより明確に舵を切った。
★本来、学習は疑問を解決するための活動である。生徒にとって意味のある学習課題の解決には、「主体的・対話的で深い学び」が不可欠である。
★「主体的・対話的で深い学び」とは、「社会的な見方・考え方」を用いた考察や、説明、議論などの学習活動が組み込まれた、課題を追究する活動である。この活動の繰り返しが、目標とする資質・能力の育成につながる。

小学校音楽科

富山県黒部市立たかせ小学校長  宮﨑新悟

★教科目標及び各学年の目標は(1)「知識及び技能」の習得、(2)「思考力・判断力・表現力等」の育成、(3)「学びに向かう力、人間性等」の涵養に関する目標として示された。内容については、表現領域では「思考力・判断力・表現力等」「知識」「技能」に関する資質・能力別に示され、鑑賞領域では「思考力・判断力・表現力等」「知識」に関する資質・能力別に示された。
★「音楽的な見方・考え方(音楽科における物事を捉える視点や考え方)」を働かせて、音楽活動に取り組むようにする必要があると示された。また、音楽科で育成を目指す「知識」が示された。
★領域・分野において指導すべき事項の数が増えたり減ったりしているが、これまでの内容そのものは減ったり増えたりはしていない。

中学校音楽科

佐賀県教育センター研究課長  副島和久

★中学校音楽科では、①目標・内容の改善、②生活や社会における音や音楽の働き、音楽文化についての理解・関心を深めること、③〔共通事項〕の位置付けと指導内容の見直し、④言語活動の充実、⑤我が国や郷土の伝統音楽の指導の充実などの視点で改訂が行われた。
★新学習指導要領では、事項が「知識」「技能」「思考力・判断力・表現力」に分けて示されたことから、これらを適切に関連させて指導することがポイントとなる。また、評価の観点は三観点に整理されると考えられる。
★新学習指導要領においても、これまでの音楽科教育の方向性は変わらない。まずは、現行学習指導要領における指導が一層充実するように授業の質的改善を図ることに意を注いでほしい。 

連載

QUを活用した学級づくりと学力向上(4)体育を通した学級集団づくりの考え方と実際 岩手県葛巻町立葛巻小学校長
藤村 一夫
合理的配慮が求められる時代の特別支援教育(4)チームで行う特別支援教育-保護者・子どもとのパートナーシップ- 前東京成徳大学教授、一般社団法人スクールセーフティネット・リサーチセンター代表理事
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大友秀人
「教師力」アップセミナー(4)授業づくりの段階を意識して子どもを育てる 京都文教大学准教授
大前暁政
教育の窓(31)学力の三要素と評価方法 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
小中学校の理科(14)理科好きな子どもたちを育てるための副教本づくり 創価大学教職大学院准教授
大関 健道
コンピテンシー・ベイスの授業づくり(12)学習観の転換をもたらした体育の授業づくり 横浜国立大学教授
髙橋和子
教えて考えさせる授業(11)中学校2年英語「旅行の計画を立てよう」 山口県美祢市立於福中学校教諭
原田美絵
連載(51)新しい教育評価の動向/J・ブラント、A・チャップマン、T・イザックス「資質・能力型か伝統型カリキュラムか」指導方法の国際比較:社会科教育 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
教育統計・測定入門(58)成長曲線モデリング-集団と個人の変化- 法政大学教授
服部 環
私のカウンセリング道程を語る(4)鳴かず飛ばずの時代-メンターとの出会い NPO法人日本教育カウンセラー協会会長
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巻頭言/教育における「PDCAの確立」を 文教大学学園長・応用教育研究所所長
石田 恒好
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