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特集
教師のメンタルヘルスのいま
★いま、心身の不調をきたす教師が急増している。多忙化による疲労の蓄積に加え、多様化する児童生徒の問題行動への対応に追われて自信を失い萎縮したり、管理強化や成果主義の導入によるゆとりのない勤務状況やサービス化社会の進展のなかでの保護者の過大な要求、世論やマスコミの非難や攻撃などのストレスにさらされていることがその背景にあると考えられる。
★教師間の人間関係が良好で、悩みを相談でき、協力的に解決を図ろうとする雰囲気と体制が、メンタルヘルスの悪化を防ぐ。
保護者対応のストレスとその予防
★保護者対応の基本は教師と保護者との「信頼関係」。しかし、両者の「信頼関係」は相互作用ではなく、教師の側からつくる。教師の行為や態度によって子どもや保護者が教師を信頼して成り立つ。教師の行為が先にあることを忘れてはいけない。
★保護者トラブルの多くは「初期対応」の失敗。失敗の原因は、初期段階で保護者の思いの「受けとめ」が不十分で学校の論理を優先した結果によるもの。
★むずかしい保護者のタイプを知っておく。タイプを理解したうえでチーム対応。担任など一人での対応はさせない。管理職を含め、役割を分担し対応する。
学級経営のストレスとその予防
★伝えたことが子どもに伝わっていないのに、教師が同じ伝え方(指導態度)をしつづけると、ボタンをかけちがえたまま、溝はますます深まるばかりである。
★子どもたちの行動が変わらないときは、いままでとは異なるはたらきかけを試みること。
★自分の思い通りに子どもが動いてくれない、自分の思い通りに学級が育っていかないと、いらいらしたり、落ち込みそうになったりした場合の魔法の言葉は、『なおそうとするな、わかろうとせよ』。
★いつも叱られてばかりで、ほめられることや認められることはない子の不満をためないための方法は、ほめられることや認められるチャンスを増やすことである。
業務多忙のストレスとその予防(中学校)
★我が国の公立中学校の教育は、教職員の自らの職責を意識した使命感と生徒愛、教育愛に基づく献身的な職務遂行で支えられている。近年、授業等の教育活動以外の用務が増えており、さまざまなストレッサーが教職員の心を蝕んでいる。
★学校教育は、教職員と生徒との人格的なふれあいを通じて行われる。教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることがきわめて重要である。メンタルヘルス対策は、教職員自身のセルフケアと管理職のリーダーシップによる組織的ケアによる予防的取組が重要である。
世代・役職の観点からのストレスとその予防
★文部科学省より、「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」の最終まとめが平成25年3月に出された。
★休職者数は、20代で0.38%、40代・50代が同率で0.71%でミドルリーダーが増加していると考えられる。
★「ストレス要因」は、教諭では小中高を問わず、「生徒指導」が第一位である。加えて「部活指導」が中学校で第二位、高等学校で第三位である。生徒との人間関係づくりや適切な生徒指導の研修や支援、一人で抱え込まないことが大切と考える。部活指導については何らかの施策が必要だろう。
★ミドルリーダー、副校長・教頭では「事務的な仕事」「書類作成」「業務の量」も大きなストレス要因であり、その軽減を図る必要がある。
★「保護者対応」「職場との人間関係」などもストレス要因であり、多忙感を軽減し、相談しやすい学校風土や体制づくりが望まれる。
教師のメンタルへルスの不調を防ぐセルフケア
★教師の職業性ストレスは諸外国においても問題となっているため、職種に応じたサポート体制が必要となる。
★イギリスでは、教師が職務に専念できるように、学校職員を教員と同数雇用することにより,教師がやらなくてよい職務内容を明確にしている。
★日本の職務環境は、同僚の精神疾患に関して無関心であり、サポート体制も遅れている。
★教師のメンタルへルス改善を図るためのセルフケアには、ストレスマネジメントの理論的な背景となるストレスモデルを理解することが有効である。
★教師特有のストレスチェックを行い、自己認知を高めることにより、自分の強みと弱みを知って対処するようにする。
★リラクセーションを促すトレーニングを実践して、セルフケアを高めることができる。
教職員のメンタルヘルスのよい学校づくり
★「教職員の集団づくり」こそが、学校経営の鍵である。
★教職員が自尊感情を高め、気持ちよく生きがいをもって職務に専念できる学校文化が必要である。
★教職員が「チーム」として機能している学校は、教職員どうし仲が良く、お互いに助け合おうとする協働体としての意識や行動が確立している。
★どんな攻撃や脅しに対してもぶれることのない校長の方針が必要であり、校長が盾となって教職員を守らなければならない。
連載
チーム援助で特別支援教育のさらなる充実を(4)援助ニーズの大きな子どもたちへのコーチングを生かしたかかわりに焦点をあてて(二次的・三次的援助) | 北翔大学学長 山谷敬三郎 |
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「学校づくり力」アップセミナー(4)授業研究力が高まる学校づくり | 岐阜聖徳学園大学教授 玉置 崇 |
QUで学級集団づくりと学力向上を図る(4)東京都狛江市の取組③取組の成果の広がり | 早稲田大学教授 河村 茂雄 |
学校の法律問題(28)初任者研修の意義と評価 | 日本女子大学教授 坂田 仰 |
目的別文章の書き方(4)描写文の書き方 | 創価大学教職大学院教授 長崎伸仁 |
感度を高める言葉の教育(16)上位語と下位語 | 創価大学教職大学院教授 長崎伸仁 |
道徳をこれからどう指導したらよいか(4)J-POPを使った道徳授業の提案 | 千葉県君津市立小糸中学校教頭 柴田 克 |
小学校算数の発展・応用を学ぶ授業をつくる(35)6年 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
新しい教育評価の動向/石井英真「今求められる学力と学びとは-コンピテンシー・ベースのカリキュラムの光と影」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
平成27年度全国学力調査問題の分析と指導への示唆(1)小学校算数 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
平成27年度全国学力調査問題の分析と指導への示唆(1)小学校理科 | 文京学院大学特任教授 森田 和良 |
教育の窓/教育専門職の社会的地位の向上を図るアメリカの教育改革から学ぶ | オハイオ州立大学講師 越智 まどか 教育臨床研究機構理事長 中野 良顯 |
教育測定・統計入門(39)因子分析と主成分分析の比較 | 法政大学教授 服部 環 |
だんわしつ/世界はリズムに溢れている! | ビート オブ サクセスBOSメイントレーナー 岡本英二 |