月刊誌 指導と評価

2012年 7月号
  1. 2012年 7月号 Vol.58-7No.691  定価:450円
特集
通常学級における特別支援教育(1)学習困難な子どもたち
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特集

通常学級における特別支援教育

東洋大学教授  宮崎 英憲

★平成19年4月は、法的位置づけがされたことで特別支援教育元年といわれた。たしかに今日、特別支援教育という名称は浸透したが、この5年間で学校・教育の内容はどう変わったのか。あるいは、今後どのように変わらなければならないのか。特別支援教育は、教育委員会・学校が連携し、組織的な取組をすることで、基盤整備や教育実践の充実を図らなければならない。こうした視点から、今月号では、特別支援教育に関する国の施策やその体制整備への取組状況の変化を中心にみることとした。また、通常学級での学習困難な子ども等への対応についてきわめて組織的に取り組んでいる教育委員会・学校の実践から、今後の特別支援教育推進の課題を考察した。

学習困難な子どものアセスメントと支援~通常の学級での対応を中心に考える~

宮城学院女子大学教授  梅田真理

★学習上の困難に関しては、さまざまな状態やその背景にある要因が考えられる。今回は主に通常の学級に在籍する子どもたちの示す学習上の困難に視点を当て、主な要因と推測される発達障害等の認知の偏りについて、それらの定義を示し、具体的に通常の学級で示す状態と関連づけて考えたい。また、「アセスメント」の種類や内容についても明らかにし、通常の学級の担任が行える方法について述べる。
★学習上の困難に対応する支援については、「どの子にとってもわかりやすい授業づくり」の一環として学級全体に対して行うものと、個々のもつ学習上の困難さに対応して行うものについて述べる。

学習に困難さを示す子どもへの支援

千葉県立香取特別支援学校教諭・前千葉県八街市立実住小学校教諭  勝田真至

★本稿では、学習に困難さを示す児童の実態と、私が実際に行っている支援の方法を中心に紹介していく。
★学習に困難さを示す原因には、「見え方」「聞こえ方」「器用さ」「やる気」等の問題が、複雑に絡み合っている。それらの問題を起因とする困り感に寄り添った支援が望まれる。
★個別もしくは少人数での学習を行うときは、児童を抽出することで、二次的な困り感(特にいじめ問題)を生まないための配慮をしなくてはならない。そのためには、Q-U(楽しい学校生活を送るためのアンケート)を用いて、対象児の学級生活での困り感や学級全体の雰囲気をつかむ必要がある。

学習障害の子どもへの支援

北海道釧路市立美原小学校教頭  高畠昌之

★「学習困難児童」の対応といっても特性に合わせてさまざまである。ここでは、学校体制や児童理解について紹介する。
★LD傾向の児童については、取り出しての個別指導援助を行う「通級教室」が効果的である。
★「学習困難児童」といっても生活面での困り感を重複している場合もある。「支援別表」を活用した区別化により、チームでの指導援助ができる環境づくりが可能になる。
★児童理解が変わると指導が変わるといわれる。「マズローの5段階欲求説」をベースにしたものを紹介する。

学習障害の子どもへの支援-「子どもの学び」をもとにした授業づくり

福島県田村市立常葉小学校長  榊原 康夫

★小・中学校の通常の学級に在籍する学習障害の子どもも含めた授業づくり、広くいいかえれば特別支援教育の視点を取り入れた授業づくりをどう進めたらいいか考える際に、個別の特性理解や支援策を集団の中でどう展開していくかが課題になる。集団の中で、支援を要する子どもも含めたすべての子どもが学べる授業づくりをしていくことは、大切なことであり、福島県養護教育センターでは、『「子どもの学び」をもとにした授業づくり』を推進している。
★「子どもの学び」をもとにした授業づくりとは、通常の学級において「子どもの学び」の姿から私たち教師自身が授業のあり方を振り返り、支援を要する子どもも含めたすべての子どもに対する「わかる授業」の実践に取り組むことである。事前研究、事中研究、事後研究のそれぞれでおさえなくてはならないポイントと実践例を示す。

幼から小、気になる幼児の滑らかなつなぎを支援するために 

神戸市立名谷あおぞら幼稚園通級指導教室担当  高畑芳美

★幼小連携ということが叫ばれて久しいが、なかなかその溝は越えにくく、そのはざ間に落ち込みやすいのが、発達に凸凹を抱えた子どもたちである。その溝を埋めるためには幼稚園と小学校、お互いの教育の立ち位置を知ることである。
★幼稚園における特別支援教育は、環境を通して行う保育の原点であり、特別支援は特別でない子どもたちにとっても自発的な学びをサポートする支援なのである。

特別支援教育の校内体制づくり

前神奈川県綾瀬市立北の台中学校教頭  鈴木 弘之

★近年学校現場では、支援教育に対する教職員の共通理解を図るとともに、人的配置を整え、機能的な運営が図られるための校内体制を確立することが強く求められている。
★ここでは、平成23年度の前任校における支援教育の校内体制を構築するまでの経緯について、教頭として取り組んできた概要を紹介する。

連載

自己の生き方を育てる学校教育(11)「自明性が崩壊した社会での学校教育」 首都大学東京教授
宮台真司
参議院議員・元文部科学副大臣
鈴木 寛
明治大学教授
諸富 祥彦
これからの評価を考える(3)信頼性と妥当性を再考する 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
学級ソーシャルスキルを子どもに育てる(4)学級ソーシャルスキルの定着と学級づくり-小学校中学年 佐賀県武雄市立西川登小学校教諭
樋渡 正
アドラー心理学で教師力を高めよう(3)授業で生かす「勇気づけ」 山梨県総合教育センター研修主事
佐藤 丈
これからの小学校国語の授業づくり(16)「話すこと・聞くこと」3年生 筑波大学附属小学校教諭
青山由紀
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(73)-小学校6年、場合の数 青山学院大学教授
坪田 耕三
小学校理科の授業づくり(4)3年A「磁石の性質」 文部科学省教科調査官
村山哲哉
小学校社会科の授業のあり方(2)6年歴史、政治 東北福祉大学特任教授
有田 和正
小学校英語活動のポイント(39)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その19(指導の基本9) 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長
渡邉 寛治
教育統計・測定入門(4)2変数の関係の強さを表現する 法政大学教授
服部 環
学校の法律相談(15)被害者の携帯番号を教えて問題に 国立教育政策研究所名誉所員
菱村幸彦
だんわしつ/歴史を繋ぐもの 国文学者
中西 進
ひとりごと/楽しそうな先生 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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