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特集
言語力を育てる今日的意味とは
★今回提起された「言語力」育成の問題は、国語科を越えた、各科の言語活動の実質的な支えなしには成立しない。
★この新たな構想が有効な教育改革に結実するには、国語教育が史的にまた時代状況のために抱え込んだ空白や矛盾を直視して、学習者の視界から、「生きた知識」の在り方を模索しなければならない。
子どもの言語発達と教育の役割
★言葉の獲得は乳児期から始まる。まず音声面の獲得が起こり、日本語らしい発音となる。語いの獲得が一歳代に数百に進むと、その組合せのルールとしての文法の習得が始まる。幼児期の終わりくらいには数千語という語い数に達して、話し言葉の基本はほぼ出来上がる。子どもは積極的に言葉に関心をもち、回りの大人もより適切な言い方に言い換えつつ、その獲得を助ける。
★小学校に入ると、話し言葉の体系を書き言葉の体系に変換する指導が始まる。それが国語の授業であり、読書である。そこでは目の前の状況から離れ、文の連なりとしての談話の獲得が目指される。
★中学校に入ると社会の中で使われるリテラシーを学び、また言葉と表現意図とのズレに敏感になり、それとともに自己形成と言葉が結びつく。
言語能力発達のための言語活動-「説明する」という言語活動の重視
★学校教育法には「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うこと」という学力観が示されている。
★この学力の育成のための学習活動として「各教科等における言語活動の充実」がある。新学習指導要領では、この言語活動をすべての教科・領域の中で行うことが求められている。それをいかにカリキュラムに定位するかが、「言語活動の充実」には問われている。
★説明、論述という能力の育成は、この言語活動を通して育成される。
小学校国語で言語力を育てる
★今求められている言語力とは、知識基盤社会を生きる力としての言語力である。それは、論理的思考を支え得る国語力であり、他者との相互理解を図るために必須な国語力である。
★小学生に求めたい言語力とは、自分の思考の筋道を相手に説明する力であり、分かりやすく説明するために必要な言葉として「つなぎ言葉」を身に付けることが重要である。
★小学生における論理的思考とは、自他の考えを説明したり理解したりするために筋道を立てて考える力つけることであり、国語では説明文の学習が効果的である。
★説明文の学習は文章を自力で読む力をつけることが重要であり、調べ学習と称する発展的な学習が大切なのではない。
国語科・算数科での言語力育成の実践
★言語力の育成に当たっては,次の三点を視点にもつことが大切である。①各教科等の指導において行うこと,②「入力」と「出力」の二面でとらえること,③児童の言語に対する態度形成をつくるという意識をもつこと。
★本稿では,「くじらぐも」(国語科1年)と「100までの かず」(算数科1年)の実践を取り上げる。脈絡なく「出力」を求めるのではなく,自分の考えや思いを形成する学習活動を通して言語力を育成していくこと,指導者の言語に対する態度が児童の言語に対する態度形成をつくるという前提に立って,指導に当たることが肝要である。
社会科における言語活動の充実
★子どもの表現力、主として文集尾表現力は、指導のあり方によってはどこまで伸びるかわからない。授業がおもしろいと、子どもの表現も工夫され、おもしろいものが出てくる。逆に言えば、おもしろい表現が出てくるとき、授業は充実していると言える。
★学習活動が子どものニーズに合っていて、学習問題に子どもが興味。関心を強くもっていると、自然に豊かな表現が出てくる。子どもの表現(言語活動)をさかんにするには、「はてな?帳」が効果がある。
★どんな授業が子どもを熱中させ、言語活動をさかんにするのか。子どもに調べさせ、結論を自分たちで導き出せる授業を子どもは好んでいる。
理科における言語活動の充実
★観察・実験の結果を「成功」「失敗」で終わらせない。実験が終わったら、文章で表現し、表やグラフに整理し、相手に説明できるように指導をする。
★理科ノート・ワークシートの活用指導、子どもの話し方(話型)の指導、科学的な概念の指導に力を入れ、理科の言葉で表現できる指導をする。
★調べたことと、考えたことを区別して書くことができるようにする。
★学習の振り返りを書くことができるように指導をする。
英語による授業で言語力はどう育っているか ―英語の言語力だけでなく、日本語の言語力も高くなる―
★国語以外の一般教科の七割を英語で学ぶイマージョン教育により、一日一時間程度の英語授業ではとうてい達成出来ない高い言語習得をしていく。四年生から転校してきた中学一年生のTOEIC平均点は、英語・英文学科を専攻する大学一年生の平均点よりも高い。
★英語で学ぶことにより言語習得を超えた高い価値あるものを習得していく。今までの日本人が持ち合わせていなかった責任ある自分の意見を持てる日本人が育っている。
★これらの習得の基盤は、日本語の言語力である。子ども主体の意味のある具体的な活動・相手を意識した活動中で言語活動が繰り広げられると、英語の言語力が高まるばかりか、日本語の言語力も高くなる。
連載
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり- 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(37) 小学校四年の計算に関して成り立つ性質 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
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PISA型読解力を育てる(12)PISA型読解力と読書指導 | 新潟大学准教授 足立 幸子 |
これからの理科教育をどうするか(1)理科教育を取り巻く状況について | 広尾学園中学校・高等学校副校長 元筑波大学附属中学校副校長 角田陸男 |
第二回全国学力調査を分析する(5)全国学力調査をどう分析して活用するか | 東北大学教授 宮本友弘 |
ネット時代の読書論(16)本をどう読むか-その4-摩擦回避編- | 東京家政大学教授 平山 祐一郎 |
教育の窓(7)PISA2003読解力問題の類型と得手不得手 | 法政大学教授 服部 環 |
小学校英語活動のポイント(4)「外国語活動」におけるコミュニケーション能力の素地とは何か-その2- | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
「生きる力」の育成をめざした家庭科教育からのアプローチ-佐賀県小学校家庭科研究会の取組 | 佐賀市立春日北小学校教頭 手塚 美代子 |
だんわしつ 論理力を鍛える作文指導をもっと日常的に! | 東北福祉大学教授 上條 晴夫 |
ひとりごと 謝る | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |