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特集
確かな学力を育てる
★「確かな学力」の育成は、次期学習指導要領でも「人間力」の中心として重視される。その際、学力の「確かさ」については、1.知識・技能や感覚の「習熟・定着」における「正確さ」、2.思考や問題解決における「論理・機能」の「確実さ」、3.これら両者の吟味・調整・修正を行う「反省・内省」の「確かめ」という三つを視野に入れる必要がある。
★そのうえで、その実現方策として、基礎・基本の「習得型」学習と思考力などを育成する「探究型」学習との間に、両者をつなぐ、「活用型」学習を導入し、授業時数を含む学習時間を増やし、生活と学習の基盤作りとしての習慣形成を重視し、学校での集団を生かした学習形態を用いる必要があると考えられている。
確かな学力を育てる 子どもの国語力の育成
★国語力を育てるため、理解力と表現力を身につけることを課題として、次のことに取り組んできた。
★1.国語科の授業改善。指導は、系統性を押さえ、指導目標を明確にすることで、具体的・客観的な評価規準の設定や、子どもをありのままにとらえた評価と支援が可能となる。
★2.言葉の力を育てる学習基盤づくりを、国語科指導と関連させて教育課程に位置づけた。豊かな語彙、言葉の感覚、日本語に対して興味・関心を持つ子どもが確実に増える。
★3.司書教諭や図書館補助員が授業に参加して、「読む・聞く」双方の楽しさを味わわせたり、読書の質を高めたりした。
豊かな心の育成
★「人間力を育てる」うえで、豊かな心の育成はその中核ともなるべきものであり、学習指導要領に示された道徳的価値を含む内容を学ぶことを通して、その育成が図られる。
★豊かな心の育成に向けての課題としては、1.子どもの心の活力の低下、2.道徳の時間の形式化、3.学校、学年段階などを踏まえた重点化の見えにくさと、相互の関連を図った指導の不十分さ、4.道徳教育に取り組む指導体制のいっそうの充実などが指摘されている。
★その改善の方向としては、1.重点化を図ること、2.学びの主体化(教材、交流、表現・評価の工夫)を図ること、3.指導体制の充実を図ること、4.資質・能力の育成を図ることが望まれる。
豊かな心を育てる学級での取り組み Q-Uを活用して自己理解とリレーションを深める
★教師と子ども、子どもどうしの関係(リレーション)が指導の成果に大きくかかわる。また、人は他者との関係を通じて自己を理解し、自己を形成していける。したがって、豊かな心を育てるには、自己理解とリレーションを深めることが大事である。
★具体的には、構成的グループエンカウンターとアサーショントレーニングのエクササイズを行った。ただし、指導がすぐに入りにくい子どもには、子どもを受容しながら、さらに粘り強い教師の取り組みが求められる。
★あいさつ、何気ない会話など、日常的な取り組みも大切である。
★学年初めにQ-Uを実施して指導に活用し、また学年末にも実施して指導の成果を確認することも重要である。
健やかなからだを育むために
★顔と服を真っ黒にしながら、真夏の太陽の下で汗びっしょりになって遊び回る子ども。冬の北風にもめげず、鼻水をすすりながら走り回る子ども。夢中になって遊んでいる子どもたちを見て、私たちは「子どもらしさ」を感じとることができる。
★遊び込み、動き回る中で、子どもはさまざまな運動を経験し、健やかなからだを育んできた。しかしいまの子どもたちに、そんな「子どもらしさ」を感じることは少ない。からだを動かすことが少なくなり、朝ご飯を食べずに登校したり、夜遅くまでゲームやテレビと、子どものライフスタイルは悪化の一途をたどっている。
★「子どもらしさ」が奪われ、子どもたちのライフスタイルが崩壊した結果、子どものからだにさまざまな問題が生じている。
特別活動で人間力を育てる
★社会の縮図、小社会ともいわれるリアリティのある現実の学校生活の中で、「自分たちの生活づくり」を通して実践的な「人間力」を体得させることが特別活動の役割である。
★これからの特別活動においては、とくに「自尊・自律」「人間関係」「社会参画」に関する自主的、実践的な態度の育成が求められる。
★例えば「社会参画」については、自発(自らのリスクと責任を負う自己決定をして言動に表すこと)と自治(公共のために実践するための集団決定、集団実践をすること)についてしっかり教えたり、「公」と「個」の関係のあり方を体験的に理解させたりする指導を重視すべきである。
家庭の教育力
★現在、子どもにかかわる諸問題が多発し、その責任が家庭にあるといわれている。
★とくに昨年、「いじめ」が原因で自らの尊い命を絶つ中学生が全国であいついだことに対して、私たちは的確な対応方法を見いだせないまま、右往左往するばかりであった。
★このような問題の背景は、社会のさまざまな問題が複雑に絡み合っていると思われる。まずは、保護者が自らの責任を自覚し、教育の原点である家庭の教育力を高めなくてはならないと考える。
地域の教育力を活かすために 「教育立区」をめざす杉並区の事例
★杉並区では、将来像である「人が育ち 人が活きる杉並区」に向け、「地域ぐるみによる「教育立区」を柱に据えている。また、「教育ビジョン」(教育目標)で「自分たちで自分のまちをつくる人々の力」の育成を教育の基本的な考え方におき、教育改革の方針に「地域の教育力を高め」ることをあげている。
★学校と地域、教員と地域人材等、学校教育と社会教育との間にあって、「育て、育てられ」の関係の中で教育力を高め、「人間力」を育成し、活力ある地域づくりを進めている。
★一人一人がもつ「人間力」が地域で活かせるよう、教育改革により身近な学校を要として環境を整えるなど、教育に支援を惜しまない地域社会の実現をめざしている。
連載
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」-基礎・基本の考え方(13)かけ算(4) | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
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心理学を教育実践に活かす(1) 教室に活かす動機づけの心理学 | 名古屋大学大学院教授 中谷 素之 |
教育心理学の外国文献紹介(1) 新しい知能観 | (財)応用教育研究所所長 辰野 千壽 |
ペーパーテストで思考力・表現力を測る(12) 中学校国語科-第一学年 | 京都市立衣笠中学校長 北原 琢也 |
豊かな人間性を育てる授業シリーズ(4)コミュニケーションの基礎3 「気持ちをあらわす言葉を知ろう!」(小学三年生版) | 教育臨床研究機構理事長 中野 良顯 |
どうする?小学校英語(26) 小学校における国際コミュニケーションの素地つくり | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
だんわしつ タイ国境の分校の子どもたち | 須原 奈三雄 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |