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特集
教員の専門性と教員評価
★教員の専門性を考えるとき、教育の目的である「子どものすこやかな成長・発達を指導し支援するうえで必要な能力」という観点からとらえるべきである。そうであるならば、教員の専門性とは、教員が子どもとしっかり向き合うことができる能力だといえる。子どもとしっかり向き合えてこそ、学習指導や生活指導等のあらゆる教育活動において成果を上げることができるのである。
★現在、各府県で教員評価制度が導入されているが、教員の専門性をどう評価し、どう育成につなげるかが問われている。
★教員評価に際しては、子どもと向き合う姿勢を評価軸の中心にすえることが重要である。そして、教員が子どもと向き合い、成功体験を味わい、さらに子どもと積極的にかかわる意欲と教員としての資質を高めるという構図を、計画的にシステムとして創り出すことが今後の教員育成のポイントである。
実践レベルからとらえた教師の専門性
★現場で求められる教師の専門性について、自己の経験をもとに、教師にその力が問われるようになった経過を概括した。
★教師は指導・人格・管理の力によって、その仕事を進めているが、教育をめぐる状況が劣化するなかで、とりわけ「指導の力」「人格の力」が求められるようになった。例えば「やろうという気にさせる」「子どもに好かれ、信頼される」ことなどで、そこに教師の専門性が問われている。
★その専門性を高めるには、「教師」という肩書きに頼らず、方針の正しさによって、子どもや保護者に受け入れられるという、指導の優位性を確立する力量を育てることであろう。
教師の専門性を高める授業スキル
★児童・生徒が学習意欲を持って望める授業とは、1 学ぶ内容が知的で面白い、2 学ぶ活動自体が面白い、3 学びから得られるものがうれしい、の三つの面を満たしている。これらは次のような要素と構造に支えられている。
I 教科書スキル(教科の特性を生かす、教材の工夫など)
II 授業の「構成スキル」×「展開スキル」
III 学級集団の状態(児童・生徒たち個々の特性×児童・生徒どうしの関係性×発達段階)
★これらの構造と各要素をトータルでバランスよく、高いレベルで教師が対応できると、児童・生徒にとって学びの多い授業となる。
教師の専門性と教員養成および免許更新性
★「教員の専門性」の内容は、時代の経過とともに”変化しつつある”。最初に、その内容の変化を、「専門職」、「二つの教師像」の統合、「教師の役割の変化」および「得意分野」の四つの視点から考察する。
★「教師の専門性」は、一般的に「教師に求められる資質能力」とよばれる。この資質能力に関し、「実践的指導力」が強調されていることを指摘する。
★教師の資質能力は、「養成・採用・研修の過程を通して向上が図られるべきこと」、および「養成・採用・研修の段階」の「役割分担」を整理する。
★以上の考察を踏まえ、教員養成と採用の課題を指摘する。
★最後に、新たな資質能力(適格性・専門性・信頼性)の観点から、中教審における「教員免許更新性」をめぐる論議について考察する。
アメリカにおける教師の専門性と教師評価
★アメリカにおいては、第三者機関による教師の専門性の認定が進められている。これは、教師としての最低限の基準ではなく、優秀な教師を、その実践的力量をもとに評価しようとするものである。専門性が認定されると、多くの州で待遇の改善が図られる。教師の待遇が低いアメリカでは、教員組合も積極的に専門性の認定に協力している。
★日本の教育状況と異なる点もあるが、教育行政と教員組合が連携している点、認定と養成・研修の課程を連続させようとしている点など、わが国の専門性についての論議にとっても、大いに参考になるであろう。
指導力の向上のための研修
★教師の指導力といっても広範囲に及ぶ。大きくは 1「人間的・人格的側面」 2「専門的・学問的知識や技能」 3「実践的な指導力」の三つがある。狭義には3があげられ、さらにそこに「子ども理解」「設計能力」「指導技術」「分析・評価能力」「社会技術」「マネジメント力」などあげられる。
★したがって指導力不足という場合、どの内容で不足しているのかを見きわめ、それに即した研修内容と研修方法が求められる。ときに教師教育全体にかかわる構造上の改善が求められ、ときに個々の教師の”センス”とでもいうべき「個人的資質」にかかわることもある。それだけにきめ細やかな研修が求められる。
管理職の職務とその評価
★学校運営をめぐる環境の変化に対応して、スクールリーダーとりわけ校長には、経営感覚と経営力が求められている。とくに、経営ビジョンに基づくリーダーシップの発揮と組織マネジメント力が重要視されており、具体的な職務遂行にあたって必要な組織デザイン力や説明力、状況分析力、コミュニケーション力、意思決定力が求められる。
★こうした職務遂行力は、学校経営や人材育成にかかわる専門的知識に裏打ちされるとともに、スクールリーダーとしての資質も重要であり、そうした観点の評価が行われる必要がある。
学校評価からみた教育評価
★評価をめぐって絡んだ糸がもつれてしまっている。いちどきにそのすべての動きを受け止めようとすると、学校の処理能力を超えてしまいかねない。学校評価を意味あるものにしていくには、まずは学校が「組織」になっていく道筋に「学校評価」を位置づけ、しだいに人々を巻き込んで大きな改革の渦を起こしていくことである。
★その要諦は、相互に指導のあり方を批判し合える同僚関係づくり、(同僚評価の仕組み)、つまり、教職員が相互に自己を肯定的に主張し合い、その衝突を通じて自己の「不完全さ」に向き合い、発達への意思と希望に基づいて自己の再編成へと動き、また新たな自己の発見、主張、再構成というサイクルを繰り返していくことである。
連載
小学校算数の基礎・基本の指導と評価(26) 授業で大切にしたいこと(9)-共有ということ 2 | 元筑波大学附属小学校教諭 正木 孝昌 |
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学習指導に役立つ外国文献紹介(2) 動機付けと教室学習 | (財)応用教育研究所所長 辰野 千壽 |
作文指導(2)作文指導と言語連想法 連想法を取り入れた作文指導法の運用 | 東京家政大学教授 平山 祐一郎 |
諸外国の初等中等教育改革の動向(3)アメリカ アメリカ合衆国における教育改革の現状と課題 | 国立教育政策研究所統括研究官 名取 一好 |
私の教育評価実践(1) 学習ふりかえりシートの活用 | 跡見学園女子大学教授 藤澤 伸介 |
新しい教育評価の動向/主要論文の概説(11)H・ゴールドスタイン 生徒の達成度の国際比較:PISA調査の問題点 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
どうする?小学校英語(15) 小中連携の英語教育で育むべき資質・能力とは? | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
だんわしつ | 岐阜県立岐阜北高等学校教諭 加納 寛子 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |