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特集
これからの子どもたちに求められる「確かな学力」
★これからの子どもたちに求められる学力とは、知識や技能に加えて、学ぶ意欲や、自分で課題を見つけ、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力等をまでを含めた「確かな学力」であり、これは新学習指導要領が基本的なねらいとしている「生きる力」の知の側面である。
★また、「確かな学力」を育むためには学習意欲の向上がとりわけ重要であり、各学校や各教育委員会においては、ペーパーテストでは把握しにくい思考力・判断力・表現力や学ぶ意欲を含めた総合的な状況の把握に努め、教育課程及び指導の充実・改善を図るとともに、各学校において学習指導要領の「基準性」の趣旨を踏まえた指導と評価を行う必要がある。
「確かな学力」を身に付ける授業-小学校算数
★「確かな学力」と呼ばれて、小学校算数では、計算練習をたくさんさせて計算できるようになることが大切だと思われているかもしれないが、答申を良く読めばそうでないことが分かる。今まで言われてきた「関心・意欲・態度」「数学的な考え方」「知識・理解」それぞれが大切なのである。
★5年生最初の授業の導入場面の様子を記述しながら、これらの4観点を育てる授業について述べていく。すなわち、既習の知識や技能を振り返りながら、その理由を説明させることで、今回の学習でも使える数学的な考え方を思い出させる。既習の問題を少し変えた新しい問題を提示してその違いに関心を持たせることで、本時の課題に意欲を持たせるのである。
確かな学力を育成する理科指導
★確かな学力を育成するには、(1)素朴概念(これまでの生活経験や学習によって、身に付けてきたものの見方や考え方)を踏まえた問題解決的な学習を組織すること、(2)基礎的・基本的な学習内容を習得できたのか、生きる力としての問題解決能力が育ったのかを見取る評価が大切である。
★問題解決的な学習を組織する際、「生徒の強い動機づけに支えられていること」「難度でもやり直す場と機会が保障されていること」「生徒個々の発想やこだわりに応じた追究が保障されていること」が大切である。
「確かな学力」とリテラシー
★リテラシー(literacy)は、元来は「文字の読み書き能力」の意味であるが、その意味が拡大されて、社会の中に新しくて強力な道具が普及してくると、その使い方や使える力を意味する言葉として使われるようになった。
★リテラシーを教育との関係で吟味すると、道具性、ルール性、学習強制性、社会性の4つが主要な観点として浮かび上がってくる。
★「確かな学力」に含まれる、「知識・技能の学習」「内発的動機づけに従った学習」「問題解決学習」の三本柱のうち、「知識・技能の学習」には、リテラシー教育にはなじむが、これ以外については、リテラシーを超えた潜在的な部分にこそ、「確かな学力」形成の芽がある点を認識する必要がある。
確かな学力と評価 -学ぶ意味を感得する評価のあり方
★「確かな学力」を育成するためには、学習者自身が「学ぶ意味」を感得できる評価が求められている。学習者が、「学ぶ意味」を自覚するためには、学習前・中・後の学びの変容を学習履歴として捉え、可視的にかつ具体的内容を通してその全体を自己評価することにより可能になる。
★「基礎・基本」となる内容および「自ら学び自ら考える力」の評価を1枚の用紙の中で行い(1枚ポートフォリオ評価)、必要最小限の情報を最大限に活用し、学習の成果を構造的に捉えさせることによって「確かな学力」が形成・獲得できると考えられる。
★1枚ポートフォリオは、学習者に対しては「学ぶ意味」を感得させ、教師にとっては自らの授業評価に活用することができる。
生きてはたらくことばの力を付ける小学校国語の学習指導
★国語科における「確かな学力」とは、日常生活場面で生きてはたらくことばの力である。
★確かな学力がついかたどうか、教師は子どもを常に見続けなくてはならない。その範囲は学習前、学習中、学習後にまで及ぶ。
★確かな学力を付けるための学習をつくるポイントは、(1)子どもの言語生活の実態→目標の設定→指導事項の設定→学習材の選定→言語活動の設定、の手順を踏むこと、(2)子どもが本気になって取り組む場の設定、である。
★学習中の指導と評価の実際は、子どもの言語活動の中に教師自身も身を置き、子どもの言語行動を肯定的に受けとめ、そのつど適切に勝ちづけていくことが中心である。
「確かな学力」の指導とその評価-小学校算数
★「確かな学力」とは、「確かだと感じ得る学力」である。点数化されたり、時間、量などで測りとれる力に関心が向く中、私は「関心・意欲・態度」「思考」に重点を置きたい。日々の授業でも、学びの出発点である「関心・意欲・態度」をどう引き出すかに留意する。だからこそアイデアが生まれ、「数学的思考力」が育っていく。それが「確かな学力」の礎である。
★子どもの「関心・意欲・態度」や「思考」という内面を明確にとらえる必要があるが、そのために、子どもの生の声に注目したい。自然発生的に起こる声にこそ、興味・関心が表れると評価したい。学習感想などにも注目しながら地道な授業を積み重ね、「確かな学力」を身に付けさせたい。
標準学力検査CRTト教師による評定(小学校の結果と総括)
★目標準拠評価の信頼性を高めるには、他の資料との比較検討が必要である。標準学力検査CRTは、その比較検討に役立つ資料を提供してくれる。
★調査対象の4つの小学校について分析すると、CRTと教師による評定の間には、かなり高い正の相関が得られた。
★しかし評定値のずれを調べたところ、教師による評定がCRTの結果に比べ、過小評価傾向を示す学校と過大評価傾向を示す学校があった。
★最後に小・中学校の結果を総括し、CRTを用いた補正のあり方について提言を行った。
連載
小学校算数の基礎・基本の指導と評価(14) 計算について考える(3)-計算力をつける | 元筑波大学附属小学校教諭 正木 孝昌 |
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学習意欲のとらえ方・育て方(4) 効果的な評価法 | 応用教育研究所理事長・筑波大学名誉教授 櫻井 茂男 |
問題解決能力とその評価(4) 国語分野における問題解決能力と評価 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
ドリルについて考える=学習者の視点を考えるドリル論(4) 音読ドリルは4人で | 東北福祉大学準教授・授業づくりネットワーク代表 上条 晴夫 |
豊かな心と確かな学力の育成(3) 親や地域住民と連帯した教育活動と、小グループ活動と授業公開による授業改革 | 前静岡県富士市立岳陽中学校長 佐藤 雅彰 |
最新のテスト事情(2) テスト形式が学習方略に与える影響 | 東京大学大学院 村山 航 |
どうする?小学校英語(9) 英語活動でイニシャティブを育もう! | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
だんわしつ | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |