月刊誌 指導と評価

2024年 6月号
  1. 2024年 6月号 vol.70-6 No.835  定価:450円
特集
➊PISA2022の結果から見えてくること/➋新しい学び舎
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特集

❶PISA2022の結果から見えてくること /PISA2022の結果(概要)

「指導と評価」編集部  「指導と評価」編集部

★PISAは15歳が対象で、2000年から3年おきに実施される国際学力調査だ。目的は、知識・技能を実生活の様々な場面でどれだけ活用できるかを見ることだ。妥当性・信頼性を保障するため様々な手順をへている。参加国・地域は年々増え今回は81。多くの先進国が成績を下げる中、日本は好成績だった。

❶PISA2022の結果から見えてくること/PISA2022の調査の枠組み(1)作問と妥当性・信頼性

国立教育政策研究所国際研究・協力部  望野哲也

★PISAでは、詳細な調査枠組みの設定と各国・専門家も参加する問題作成プロセス、予備調査による問題の精査、標本の層化二段抽出法及びその厳密な規定と遵守、項目応答理論(IRT)の活用、CBT化に際したプラットフォームの工夫等により、偏りのない国際比較、経年比較を可能とし、調査の妥当性、信頼性を担保している。

❶PISA2022の結果から見えてくること/PISA2022の調査の枠組み(2)結果の解釈の仕方

横浜国立大学准教授  鈴木雅之

★PISAの結果を適切に解釈するためには、標準誤差や信頼区間、習熟度レベル、標準偏差など様々な指標の意味を理解することが重要になる。また、他国やOECD平均との得点差や、得点の経年変化については、統計的に有意であるかに注意する必要がある。本稿では、PISAの結果をより適切に解釈するために、これらについて解説する。

❶PISA2022の結果から見えてくること/PISA2022の結果をどう考えるか「読解リテラシー(読解力)」

国立教育政策研究所国際研究・協力部  大塚尚子

★PISAでは読解力(読解リテラシー)は単なる読む能力以上の広範なスキルを含むと定義される。PISA2022では、日本は前回調査より平均得点が上昇した。GIGAスクール構想の影響により情報探索・評価能力が向上し、読解力改善に寄与した可能性が示唆される。

❶PISA2022の結果から見えてくること/PISA2022の結果をどう考えるか「数学的リテラシー」

国立教育政策研究所国際研究・協力部  望野哲也

★数学的リテラシーは、現実世界の問題を解決するために数学を用いる能力を測定している。日本の平均得点はひきつづき世界トップレベルを保った。また、上位層・下位層とも女子より男子の割合が大きいといった特徴がある。一方、日本の生徒は、数学を使って実生活における課題を解決する自信がある割合が低く、また、数学を実生活における事象と関連付けて学んだ経験が少ない傾向にあった。

❶PISA2022の結果から見えてくること/PISA2022の結果をどう考えるか「科学的リテラシー」

国立教育政策研究所国際研究・協力部  大塚尚子

★PISA2022では日本の生徒は国際比較で高い成績を達成し、習熟度レベルの向上が見られた。男女間では得点に大きな差はないが、習熟度レベルでは男女で異なる傾向が見られた。次回2025年調査では科学的リテラシーが重点となるが、定義や測定枠組みの変更が予定されている。

❷新しい学び舎/校舎デザインに対する行政の取組み教育委員会の課題等

東京都北区教育委員会事務局教育振興部学校改築施設管理課計画係  関谷明治

★何世代にもわたり通うことになる学校は、時代や社会環境の変化に対応し、家庭・地域・学校が連携して「みんなでつくる学校づくり」を旗印に施設の整備を進めていくことが重要になる。筆者は平成27年に現在の職場に配属され、初めて教育や建築に携わり10年目を迎えた。8校の竣工を見てきた経験から、東京都北区の学校改築事業について紹介する。

❷新しい学び舎/新しい学びの場としてのエクステンションセンター

ヴォーリズ学園 近江兄弟社高等学校エクステンションセンター  吉澤謙昭

★「日々の授業をそこそこクリアしていればよい」という生徒の感覚を打ち破るべく、学校改革を行った。その一環として2014年には、生徒が自ら課題にあたる学びの場「エクステンションセンター(通称eTC)」を設立。2017年度にはクラス制を再編し、新たな学び方を追究した「ターゲット2017」を実施。問題解決のために自らできることを模索するなど、受け身だった生徒たちの姿勢が大きく変わった。ここでは、eTC設立の背景や施設・設備の活用法、今後の課題を概観する。

❷新しい学び舎/魅力ある教育活動の推進-「井口地域」という大きな家族に支えられて-

南砺市立南砺つばき学舎校長  酒井由美子

★南砺市立南砺つばき学舎は、富山県にある旧井口小学校・井口中学校が1つになり、2021年4月に、義務教育学校として開校しました。区切りのない九年間の学びを意識しながら、小規模校(児童生徒約90名)を強みとした教育活動・教育課程を展開しています。

❷新しい学び舎/0歳から15歳までの子どもたちが集う、遊びと探究の学び舎

福島県大熊町立学び舎ゆめの森園長・校長  南郷市平

★2023年春、福島県双葉郡大熊町に、国内で唯一、認定こども園と義務教育学校を一体化し経営する「学び舎ゆめの森」が開校した。大熊町も世界も、未来は不透明だ。廃炉や復興、少子高齢化や産業構造の変化、文化と宗教の摩擦など、唯一絶対の正解が見えぬ難問に直面したとしても、子どもたちは自分の頭で考えつづけ、考えや立場が異なる他者との分断を超えて共感・協働し、未来を創造していく力が求められる。それゆえ、「わたし」を大事にし、「あなた」を大事にし、みんなで未来を紡ぎ出す学び舎が求められた。

❷新しい学び舎/未来志向で取り組む新たな学び舎の創造

伊万里市立伊万里中学校長  坂本和人

★本校は、開校以来、たびたび水害の被害に遭い、耐震性と老朽化が問題となっていたため、令和元年から校舎改築及び外構工事を行い、本年3月にようやく終了。限られた敷地を最大限に活用したコンパクトな校舎に生まれ変わった。 グラウンドが広くなり、各教室への動線も短縮化された。校訓の「渭水精神」を引き継ぎながら、新築された校舎で学びはじめた機会に、新しい学校づくりに取り組んでいる。

連載

巻頭言/明治の学校建築 東京学芸大学名誉教授
河野義章
算数科で育てる「思考・判断・表現」する力(14)「面積」の学習で働かせたい見方・考え方 明星小学校副校長・前筑波大学附属小学校副校長
夏坂 哲志
生徒との対話を通して個別最適な学びをめざす 書く力を中核とした授業改善⑵論理的かつ表現力豊かな文章を書くLA(ロジカル・アクティベーション)の実践理論 神奈川県川崎市立宮崎中学校教諭
町田 憲二
言語技術としての「事実と意見の区別」⑶PISA2018公開問題<ラパヌイ島>問3-事実と意見の区別-を掘り下げる  文部科学省教科書調査官(体育)
渡辺哲司
教育の窓(69)アングロ・サクソン諸国における「事実と意見の区別」-渡邉雅子著『「論理的思考」の文化的基盤』を踏まえて 文部科学省教科書調査官(体育)
渡辺哲司
漢字を教える・学ぶ⑽漢字の書字学習を促すためのICTの活用 上越教育大学特任教授
大庭重治
心を育てるエクササイズ⑶「子どもの長所の棚卸し」-親子の愛情の再確認- 長野県伊那市立西箕輪中学校子どもと親の相談員
小椋佐代理
「ほめる」を考える⑶トラウマのある子どもをほめるうえでの留意点 同志社大学カウンセリングセンター京田辺校チーフカウンセラー
中村有吾
プロアクティブな支援⑶子どもたちの「健康面」へのプロアクティブな支援 教育環境研究センター代表
井ノ山正文
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