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特集
意欲をはぐくむ/子どもの意欲をはぐくむ
★子どもが授業(学習)だけでなく学校生活全般において意欲的であるにはどうしたらよいのか、近年の動機づけ研究から考える。結論は、学校での授業(学習)、部活、対人関係(とくに仲間関係)において、①知的好奇心、②有能さへの欲求(自律性の欲求を含む)、③向社会的欲求、④自己実現の欲求、⑤関係性の欲求といった重要な心理的欲求を充足させる(満足させる)ことが大事である。
意欲をはぐくむ/子どもたちの意欲の実態-全国学力・学習状況調査とPISAの結果から見えてくるもの-
★全国学力・学習状況調査の結果から国語と算数・数学の学習意欲の経年変化をみると、小学6年生はほぼ一定であったが、中学3年生はゆるやかな上昇傾向にある。
★また、小中ともに内発的動機づけが算数・数学の学力と強く関連することがあらためて確認された。
★PISAの結果からは、高校1年生の学習意欲は国際的には低い水準にあるが、確実に改善されつつあることがわかった。
意欲をはぐくむ/意欲的な学びを支える仲間とのかかわり
★児童生徒の意欲的な学びを考えるうえで、仲間とのかかわりは重要な役割をもっている。仲間の存在は学習を進めるための資源となることで、意欲的な学びを支えている。また、仲間とお互いに学習を調整し合ったり、グループで集団として学習を調整し合ったりすることもある。仲間とかかわりながら意欲的に学ぶ児童生徒の姿を具体的にイメージしながら、それを実現するための指導やしかけを行うことが大切である。
意欲をはぐくむ/児童生徒の意欲等の情意面の質問紙(自己評価)の結果をどうみるか-CRT質問紙を例に-
★学校現場で公的に意欲等の情意面の評価としての視点が示されているのは「主体的に学習に取り組む態度」の観点である。評価方法には、行動観察、質問紙法などがある。
★教研式標準学力検査CRTの質問紙の妥当性を検証した結果、生徒の自己評価と教師観察は一致する傾向にあり、学力とも相関があった。したがって、児童生徒の自己評価には妥当性があると言える。
★全体的には自己評価は教師評価・学力と関連がみられる。しかし個別にみると、自己評価が低すぎたり高すぎたりする児童生徒も一部いる。児童生徒の回答は、そう答えた意味を大切にし、指導に生かしたい。
意欲をはぐくむ/SGEを通して、対話を創造する-自ら学ぶ子どもたちを育てるために我々にできること
★SGE(構成的グループエンカウンター)では、エクササイズ(集団体験) を通して、自己の感情に気づき、自己との対話を深めていく。また、そこでの気づきを自己開示することで、他者との対話が深まっていく。こうした自己や他者との対話の積み重ねは、自己発見や学びの意欲につながっていく。
★こうしたSGEの理論に学ぶことで、子どもたちの学びの場面でも、対話を通して自他理解を深める機会を提供できるようになり、自ら学びつづけるアクティブラーナーを育成することができると考えられる。
意欲をはぐくむ/不登校児童生徒の意欲をはぐくむ
★小中学校で不登校を経験した子どもの多くが高校進学を果たしている。通信制高校に通う不登校経験者への調査からは、①安心、安全が保障され、他者と肯定的な関係が築ける環境があること、②自分の成長につながる学習や将来に向けた活動に取り組むことができる支援のあること、が高校生活の満足度と関連していることが示唆された。
★生徒の「自律性」を大事にしながら、「安心感」をもてる関わりを行い、生徒が「学習」や「将来」に向けた活動に取り組むための情報や適度なチャレンジの機会を提供することが、子どもの意欲につながるものと考えられる。
意欲をはぐくむ/意欲をはぐくむキャリア教育
★子どもの学習意欲は、年齢が上がるにつれて統制的になりやすい。勉強はだんだんと受験や成績のために「やらなければいけない、やらされているもの」になるのである。これを打破するためには、学ぶことの価値や意義を、いかに「自分事ごと」として受けとめられるようにしていくか、という点が重要である。キャリア教育の推進は、子どもたちの自律的な意欲と学びを促すための鍵となる。
意欲をはぐくむ/なぜ発達障害の子どもに意欲をはぐくむことが特に大切なのか
★教師は、子どもが意欲をもって授業や学校生活に取り組めるように、日々さまざまな支援を工夫している。ではその中でも、なぜ特に発達障害のある子どもの意欲をはぐくむことが大切なのだろうか。本稿では、私が中学校の校長時代に出会ったA君、指導主事時代にかかわった自閉スペクトラム症で長距離ランナーのB君、エンジニアとして大活躍中の衝動性の強かったC君の三事例をあげて検討していく。
★教師と子どもが良好な人間関係を構築し、決して子どもに自信を失わせず、そして早い段階から保護者と手を携えて就労に向けて支援していくことの必要性がみえてくる。
意欲をはぐくむ/家庭との連携で児童生徒の意欲をはぐくむ-学習や学校生活に意欲的に取り組めるようにするための支援について-
★不透明な未来への漠然とした不安から、意欲をもてない子どもたちが増えている。激動する社会を生き抜く力を身につけ、自立した子どもを育てるために、児童生徒の意欲を高めることは学校教育で取り組むべき優先課題であると考えられる。しかし、それは学校教育だけで完結できるものではない。車の両輪のように、家庭との連携によってはぐくんでいくものである。児童生徒にとって何が最善かを主体的に考え、できることから取り組んでいきたい。
連載
巻頭言/なぜ勉強するのか-学習動機の分類を指導に活かす | 東京大学名誉教授・帝京大学中学校高等学校校長 市川 伸一 |
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ここまでは押さえたいⅡ目標準拠評価を教育に生かす(14)国語の評価②-簡単な評価基準を詳しい評価事例集で補完 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
算数科で育てる「思考・判断・表現」する力(2)/子どもの思考過程に見える数学的な見方・考え方のつながり② | 明星小学校副校長・前筑波大学附属小学校副校長 夏坂 哲志 |
読解力の育成(小学校実践編)⑵/思考の系統を意識した説明文の授業づくり-小学校低学年 | 筑波大学附属小学校教諭 青山由紀 |
特別寄稿/学びの支援に役立つ認知理論⑸-テストの活用とその理論- | 大阪教育大学名誉教授 北尾 倫彦 |
教育の窓(62)多重知性の可能性②-キャリア教育と多重知性- | 二葉看護学院ほか非常勤講師 小田 勝己 |
いま必要な校内研修⑶研修教材としての「生徒指導提要」デジタルテキストの活用法 | 東京理科大学教授 八並 光俊 |
「叱る」を考える⑶発達障害のある児童生徒への指導について考える | 文教大学特任准教授・公認心理師・臨床心理士・特別支援教育士スーパーバイザー 小柴孝子 |
教科書をひらいて授業を創る(14)道徳性を育成する道徳の教科書-仮面性と自我関与を促す教材- | 横浜商科大学教授・教職センター長 東風安生 |
「あきらめる」を肯定的にとらえる⑶/あきらめることと適応、心理支援 | 十文字学園女子大学准教授 永作 稔 |
新/教育統計・測定入門⑻/統計的仮説検定とは② | 法政大学教授 服部 環 |