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特集
授業-「受ける」から「参加する」へ-
★大学の新入生の四月の授業、教師が話を始めてもノートをとる気配がない。それどころか、机の上にノートが出ていない。大学生がこんな状況なので、幼稚園・保育園、小学校、中学校、高校の接続期に、子どもたちが示すとまどいはさらに大きなものになる。
★今月の特集は「授業に参加する」とした。これまでの「授業を受ける」では、教師の提供する情報を漏れなく受けとめる受動的な学びであった。いま期待されるのは、自分に必要な情報を選びとり、知識を構成する主体な学びだ。
学びのスタートを保障する学習環境づくり
★ほとんどの小学校教師は、小学校生活のスタートにあたり、幼児教育との連携を意識し、生活科を中心にスタートカリキュラムの構築を行っている。しかし、学校生活や環境、教室での対話、教材など、子どもが主体的に学ぶスタートとしてふさわしいものになっていない状況があるのではないか。
★未来予測不可能な時代に生きる子どもたちに求められる学びのスタートは、小学校での教室での学び方のきまりを訓練することの重視から、子ども自身が興味や関心をもって、ねばり強く、見通しをもって行い、自己の学びを振り返り自覚したり、他者と共有する力をつけることが重要とされている。教師は、子どもの学びの意欲と力を信じ、いま目の前の子どもとともに授業をつくっていく覚悟が必要ではないか。
学習の基礎となる論理的思考力・表現力を育てる
★各種の学力調査から、日本の子どもたちは根拠や理由を示しながら自分の考えを述べることが苦手だということが明らかになっている。こうした力を育てる方法として、筆者は「根拠・理由・主張の三点セット]という思考・表現ツールを推奨している。
★小稿では、子どもたちの学習の基盤となる論理的な思考力・表現力の育成を教育課程に位置づけ、小中連携事業として取り組んだ事例を紹介する。
高校での学習スキル・トレーニング
★不登校経験をもつ生徒たちのための昼夜間定時制高校(筆者の前任校、都立稔ヶ丘高校)で、学校設定科目として実施されている学習スキル教育。授業で必要なスキルを補うと同時に、生徒たちに望ましい学習観を育てるねらいがある。年間計画は、「1 授業・試験ですぐ役立つスキル」で学習効果を実感させ、「チェックペン活用法」「箇条書きトレーニング」などの「2 理解のスキル」のトレーニングに取り組ませる。学習動機など「3 自立して学ぶためのスキル」がときおり挿入され、主体的に学ぶ意識を育てる。クラス担任が実施するこの授業は、十年以上、主担任を引き継ぎながら続いている。生徒たちに蔓延する「暗記主義」「結果主義」などのゆがんだ学習観を是正するヒントとしてほしい。
教室の学びを支えるきく力
★児童が主体的・対話的に学ぶうえで、大切な力の一つにきく力があげられます。きく力は教師や友達の話を聞くだけでなく、友達どうしで互いの意見を交流し、考えをまとめたり、新しい考えを生み出したりするうえで欠かせない力です。きく力をしっかり身に付けることによって、授業での学びの質が高まり、ひいては学力の向上につながると考えられます。
★そこで、信頼性と妥当性を十分に検討した児童のきく力尺度を作成しました。因子分析の結果、第Ⅰ因子:聴解応用力因子、第Ⅱ因子:聴解基礎力因子の尺度となりました。
★児童のきく力をつけるための効果的な実践として、朝の会で教師の連絡事項をその場でメモする「ききとりシート」の活用や、授業で友達の発言に対して意思表示を明確にするハンドサインの活用があげられます。
「概念」を使って学びの水準を引き上げる
★新学習指導要領がめざす資質・能力(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等)の育成には、その全体構造を踏まえたうえで、子どもたちの学びをトータルにデザインする必要がある。
★各教科等における学習内容の本質的な理解に関わる主要な「概念」について、それを子どもに明示し、それを使って考えたり表現したりすることで、深い学びを実現することができる。
★小学校社会科の単元開発と実践を通して、資質・能力の三つの柱のそれぞれが、「環境と人々の生活との相互関係」という「見方」と「環境への負荷」という「概念」のもとで、相互に結びついて伸びることが明らかになった。
子どもの学びを開く話し合い活動-小学校二年生・国語科の授業分析を通して-
★教室の話し合い実践の例として小学二年生の一学期と三学期の事例について比較・分析し、話し合いに参加する際の役割とその機能について取り上げ、話し合いを生成的な営みへと作り変えていく過程について考察している。
★読みを深める話し合いでは、学習者が互いに情報源となり、それぞれの機能を分担・交代することで、テクストと子どもとの出会いに多様な道筋を付けることが可能になる。話し合いという資源を活用し、自分なりの意味内容を構築していく側面に焦点を当てなくてはいけない。そして、一人一人の出番を保障し、学びの実感をもたらず学習として、話し合い活動の教育的意義を再検討することが求められている。
連載
巻頭言/明示的な指導の徹底-授業への十全な参加と深い学びのために- | 上智大学教授 奈須 正裕 |
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QUを活用したPDCAサイクルの推進(3)PDCAサイクルの推進のポイント(1)-Planの前の分析と組織づくりの重要性- | 東京福祉大学助教 河村 明和 |
「教師力」アップセミナー(3)質問づくりを考える | 帝京平成大学教授 白鳥 信義 |
説明文・意見文を書くことの指導(3)説明文と意見文 | 早稲田大学国際学術院教授 佐渡島紗織 |
「きめる」学びで知的にたくましい子どもを育てる-主体的・対話的で深い学びを実現する授業づくり-(3)社会科における「きめる」学び | 筑波大学附属小学校教諭 由井薗 健 |
新教育課程の評価を考える(11)社会科-歴史的分野 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
特別支援教育に生かすペアレンティング(3)ペアレンティングによる脳の育て直しとは | 文教大学教授・子育て科学アクシス代表 成田奈緒子 |
構成的グループエンカウンター再入門(4)教育委員会からのトップダウンで始まった定時制のSGE | 日本教育カウンセラー協会理事・ガイダンスカウンセラー 加勇田 修士 |
成熟した学習者をめざして(2)予習・復習の指導 | 日本大学准教授 篠ケ谷圭太 |
コミュニティにおけるガイダンスカウンセリングの展開(3)中学校教員としてのガイダンスカウンセリング | 埼玉県公立中学校さわやか相談員 中野昌一 |
これからのキャリア教育(3)キャリア教育で育成すべき資質・能力 | 筑波大学教授 藤田 晃之 |
講座カウンセリング心理学(3)カウンセリング理論の有用性と実体と今後の展開 | 東京成徳大学名誉教授 國分 康孝 |
教育統計・測定入門(67)グラフを用いた項目分析-トレースライン- | 法政大学教授 服部 環 |
新しい教育評価の動向(54)W・ハーレン「ビッグ・アイデアに立脚する科学教育」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
投稿/プログラミング学習の充実に向けて | 愛知教育大学准教授 磯部征尊 |