- トップ
- 指導と評価
特集
いじめ防止対策推進法を基盤とする生徒指導体制づくりの要点
★文部科学省の平成24年度生徒指導上の諸問題に関する調査では、いじめの認知件数は、前年度調査の2.8倍と急激に増加している。特色としては、小学校のいじめの認知件数の増加、いじめの態様では人権意識・コミュニケーション能力・非行性と関連の高さ、アンケート調査によるいじめ発見率の高さなどがあげられる。
★いじめの防止策として、成長促進型の生徒指導、客観的なアセスメントの実施、支持的・信頼的な学級・ホームルーム経営、専門的な知識・スキルをもつ教職員の登用、特別支援教育からのいじめ防止などがあげられる。
★いじめの実態や特徴を考慮し、「いじめ防止対策基本法」を基盤とした生徒指導体制づくりが今後の課題である。
いじめの早期発見・予防とアセスメント
★①いじめの問題は学級集団の状態・児童生徒たちのかかわりの質の影響を大きく受ける。いじめ対策は学級集団の体質改善が必要。すべての児童生徒の日々の学校生活の充実感・満足感の向上が、いじめ行動を抑制する。
★②早期発見のアセスメントは、児童生徒の学校生活上の困り感を把握することが第一歩。
★③学校の全教員の連携した組織対応が不可欠。一次,二次,三次レベルの統合された対応が求められる。
★①②③を実行するうえで、指標となる児童生徒の困り感を把握する質問紙の活用は有効である。
早期発見の限界-ネットによるいじめ
★ネットいじめの対応は重要な課題であるが、ネットには子どもたちが簡単に接続できるため、それを規制することはむずかしい。学校外・二四時間いつでも、教師にも保護者にも目が届きにくいところでネットいじめが起きる可能性があることが、その対応をむずかしくしている。ネットいじめには、学校の教師だけの対応では不可能であり、すべての保護者および地域社会で連携して対応しなければならない。学校は、道徳・生徒指導などあらゆる機会を通じ、情報化社会で生きていくうえで必須の情報モラルとして、予防に向けた啓発的な指導を行うことが求められている。
予防・開発に重きをおいたいじめ防止対策ー学校を支援するガイダンスカウンセラーの実践を通してー
★いじめ防止策を含め、児童生徒の発達課題解決のための具体策を教育課程に位置づけ、今まで以上に、児童生徒の人間関係構築力を高める教育実践に取り組む必要がある。児童生徒の人間関係構築力を向上させ、いじめ・暴力行為などの問題を未然に防ぐために、道徳教育のねらいを具現化するための社会性を育てるスキル教育(体験学習)等の教育実践を行う。具体的には、学校全体で、道徳の時間、学級活動・総合的な学習の時間等に、学校行事・体験活動等(直接体験)を相互に関連づけたカリキュラムを教育課程に位置付けた、教育実践を提示する。
特別支援教育といじめ
★特別支援教育の対象となる児童生徒の多くは対人関係形成に苦戦している。
★「障害者の権利に関する条約」の批准により特別支援教育関連の法的整備も行われ、「合理的配慮」という概念が示された。また、援助ニーズをもつ児童生徒の「環境調整」という考え方と取組が重要である。
★援助ニーズをもつ児童生徒へのいじめを防ぐには、予防・開発的な取組が必要である。
★発達に凸凹をもつ児童生徒への援助を推進するためには、保護者とのリレーション形成やコミュニティアプローチという視点が求められる。
諸外国のいじめ対策と日本の課題
★警察庁の調査では、いじめは著しく増加した。
★新法では、人間関係のある子どもの間で起こる行動で、心理的物理的影響を受けた側が苦痛を感じるもの、ネットいじめも含むと定義された。米国の定義では、望んでいない攻撃行動、力の不均衡、反復生起が強調される。
★日本では道徳教育の充実を、米国では好きな活動に従事させて楽しみを与え、友情を育ませることを強調する。また授業でいじめの知識を教え、いじめの認識と安全確保と大人への報告を可能にさせる。
★予防では自ら考え判断し行動できる子どもを育成することが課題である。
深刻ないじめが起こってしまったら
★「深刻ないじめ」は、いじめ防止対策推進法第二八条に示された「生命、心身又は財産に重大な被害が生じたとき」、「相当の期間学校を欠席することを余儀なくされているとき」に加え、自死や仕返し行動等に繋がるおそれのあるいじめを指す。
★このような「深刻ないじめ」に対しては、緊急かつ毅然とした対応が必要で、学校は教育委員会や警察等の関係機関と緊密な連携を図り、「被害者保護」の原則に則った対策に全力を尽くさなければならない。
連載
学級づくり実践セミナー(3)特別支援の必要な児童生徒もいる学級での学級づくりのあり方とは | 早稲田大学教授 河村 茂雄 |
---|---|
教師力アップセミナー(2)生徒指導をどう進めるか | 千葉市立こてはし台中学校長 堀米 宏 |
21世紀をよりよく生きる資質・能力の育成(3)21世紀をよりよく生きる資質・能力をとらえる枠組み-目標の分類と構造化 | 京都大学准教授 石井英真 |
感度を高める言葉の教育(3)専門語の語構成と生産性 | 京都大学准教授 石井英真 |
教育・心理検査を上手に活用しよう(3)学級集団を理解する方法QU① | 都留文科大学准教授 武蔵由佳 |
応用行動分析学入門(3)刺激-反応-結果の枠組みで考える | 教育臨床研究機構理事長 中野 良顯 |
新しい教育評価の動向(32)Ametller,J, Leach,J Scott,P教科教育に関する知見を指導計画の作成に生かすために:科学教育を例として | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
小学校算数の発展・応用を学ぶ授業をつくる(22)4年 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
小学校理科の授業づくり(26)4年A(1)空気と水の性質 | 筑波大学附属小学校校長 佐々木昭弘 |
どうする?小学校音楽の授業(8)「体を動かす活動」をどう活かす | 筑波大学附属小学校教諭 高倉 弘光 |
教育測定・統計入門(27)一般化線形モデルとロジスティックモデル | 法政大学教授 服部 環 |
学校の法律相談(15)生徒指導と所持品検査 | 日本女子大学教授 坂田 仰 |
だんわしつ/48歳からの劇団作りに必要だったもの | 劇団ドガドガプラス代表 望月六郎 |