月刊誌 指導と評価

2011年 6月号
  1. 2011年 6月号 Vol.57-6 No.678  定価:450円
特集
コミュニケーション力を育てる
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特集

コミュニケーション力とその指導

国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長  渡邉 寛治

★コミュニケーションとは、ラテン語のcommunicatioに由来しており「分かち合うこと」という意味。『広辞苑』では「社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達」と定義。
★今後、学校教育で育成すべきコミュニケーション力とは、まず「他を思いやる心(資質)」、次に「相手の意志や感情を的確に理解する力(資質・能力)」、さらに「自分の考え等を相手に的確に伝える論理力(能力)」である。
★理想的なコミュニケーションとは、双方の考え等から新しい意味が生じるようなクリエイティブな対話をいう。

国語科でコミュニケーション力を育てる

文教大学教授  藤森裕治

★本稿の目的は、小・中学校国語科においてコミュニケーション力を育成する際の留意点を指摘することである。まず、文学的文章の読みをめぐって行われた小学校の話し合い記録を実践事実として提示した。その実践記録に基づき、コミュニケーション力の育成にとって留意すべき事項を三点抽出した。①リボイシングに配慮して相手の話を聴くこと。②批判的思考と創造的思考を調和的に発揮できるような学びの場を提示すること。③ことばの学びにおける道徳的要素の意義を再認識すること。これらを踏まえ、最後に、子どもの発達段階を踏まえた小・中学校のコミュニケーション力育成のあり方について展望した。

小・中連携の英語教育で、コミュニケーション力を育てる

栃木市教育委員会学校教育課副主幹兼指導主事  金井 睦

★栃木市では、国際教育で求められる3つの資質・能力を、小・中学校の英語教育を通して育てたいコミュニケーション力ととらえ、その育成を図っている。
★「教育研究開発事業(英語教育関係)」の研究指定5校では、①PDCAサイクルによる[ねらい―活動内容―評価]の一体化 ②子ども達の思いや考えを大切にした指導内容や指導方法の工夫 ③小・中連携、等の視点から、コミュニケーション力を育む授業づくりに取り組んでいる。

自分の思いをもち、友達と共に生き生きと学び合う津ノ井っ子の育成

鳥取県教育委員会事務局東部事務局長  久岡賀代子・鳥取市立津ノ井小学校教諭  安田美恵

★国語では「ことばの力」、外国語活動では「自己決定力」を育成することを核にして、学校の課題解決に向けて取り組んでいる。
★児童の思いを大切にした学習計画を作成し、教室に掲示することで、自ら課題解決に向けて、見通しをもちながら意欲的に学習している。
★具体的な評価規準を設定し、活動中も一人一人を認め、励ますことで次の学習意欲につなげる指導と評価の一体化に努めている。
★「伝え合う方法」や「伝え合う場」を意図的に設定し、児童のコミュニケーションを育成する。

小学校でコミュニケーション力を育てる

北九州市立貴船小学校教諭  菊池省三

★小学校では学級経営の成功がコミュニケーション指導には必要不可欠である。そのために、まず学級目標からコミュニケーション指導を意識したものにすべきである。
★具体的な日常の指導としては、美しい言葉遣いの指導がポイントである。また、言葉を意識した生活を送らせる取組も重要である。
★人前でひとまとまりの話ができる子どもを育てるスピーチ指導は、双方向のコミュニケーションが生まれるように楽しいものにすべきである。そのための技術を教えなければならない。
★「よさ」に着目した「ほめ言葉のシャワー」の実践は、子どもの自尊感情を高め、豊かな人間関係力の育成に有効なコミュニケーション活動である。

中学校でコミュニケーション力を育てる

福岡教育大学・九州栄養福祉大学非常勤講師(元福岡市立長尾中学校校長)  岸川 央

★学力向上は、αノートを活用した家庭学習の充実と学級集団づくり(ソーシャルスキルトレーニング・構成的グループエンカウンター等を取り入れた学級活動や道徳)により達成できる。
★αノートは、生徒と学級担任、保護者と学級担任、親子をつなぐコミュニケーションツールである。
★中1ギャップ解消のためには、新入生交流会での人間関係づくりと春休みの宿題が効果的である。
★人間関係づくりの取組により、不登校生徒が減少し、遅刻者・服装違反者がいなくなった。

子どものコミュニケーション力をめぐる諸問題と対策

福岡教育大学・九州栄養福祉大学非常勤講師(元福岡市立長尾中学校校長)  岸川 央

★児童生徒のコミュニケーション能力の低下が各方面から指摘されている。対人関係がうまくとれずに、学校不適応問題に悩んだり、暴力行為やいじめ、短絡行動に走る児童生徒が増加している。
★この背景には、ゲーム機・ネット・ケータイの普及等の社会的要因や、発達障害等の個別的要因が指摘されている。
★学校では、全教育活動を通した言語活動の充実を図るとともに、情報モラル教育や自立を促すキャリア教育等を計画的・組織的に進めることが求められている。



連載

●新学習指導要領で教科調査官が求める授業(2)小学校社会 文部科学省教科調査官
澤井陽介
文部科学省視学官
杉田 洋
教室でできる特別支援教育(3)試してみよう!ソーシャルスキルと自尊感情を育む授業 名城大学教授
曽山和彦
これからの小学校国語の授業づくり(3)「読むこと」3年生-文学 昭和学院小学校長・前筑波大学附属小学校教諭
青木 伸生
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(60)-小学校六年、柱体の体積 青山学院大学教授
坪田 耕三
教師のための発達心理学(3)小学生の知性の発達 福井県立大学教授
黒田祐二
中学校外国語科の評価(3)コミュニケーション力(資質・能力)の評価-評価規準と段階的判断基準について  国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長
渡邉 寛治
PISA2009年調査国際結果の解釈と教育改善(2)数学的リテラシー 東京学芸大学准教授
西村圭一
小学校英語活動のポイント(26)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その6(指導案作成の基本2) 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長
渡邉 寛治
学校の法律相談(3)校内の盗難にどう対応するか 国立教育政策研究所名誉所員
菱村幸彦
だんわしつ/私のパフォーマンス評価 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
ひとりごと/コンビニの裏で 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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