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特集
新学習指導要領における言語活動
★言語活動の充実は、思考力、判断力、表現力の育成とのかかわりで考えていく必要がある。それは、各教科や総合的な学習の時間などの教育活動全体での取組を通して育成されるものである。
★各教科等で言語活動を充実することは、教科の目標を達成するためにも必要なことである。言語活動を行わない授業はない。これまで各教科等で行ってきた言語活動について整理し、学校として教科としてどのような言語活動を重視していくのかを考えることが充実への第一歩である。
★国語科は、教科としての目標達成を目指しながら、学校全体の言語活動を支える役割を果たすべきである。学校生活の中での生徒の状況を把握して、各教科等の学習で必要とされる言語活動ができる生徒に育てておかなければならない。
単元レベルで言語活動の充実を
★新学習指導要領の目玉は、思考力・判断力・表現力の育成である。それが成功すれば、応用力を評価しようとするPISAや文部科学省の学力テストの点数も向上する。その対策として、1コマの授業で教師が視点や手立てを示して、子どもに学ばせたり、ドリルや社会人講師を加える向きもあるが、教師がマニュアル的に指導する限り、うまくいかない。
★もっと単元の中で試行錯誤を組み込む必要がある。単元の冒頭で教師が最小限の知識や技能を講義式で提示した後、学習課題を提示し、子どもは「ああでもない、こうでもない」と個人やグループで議論しながら、考え、判断し、その結果を言語で表現させ、一般的なルーブリックで評価することである。
説明を読む言語活動-論理的な思考力・表現力を鍛える
★「説明を読む言語活動」は内容の論理的な理解力(受信)の基礎・基本技術として、教科書・図表・グラフ・スピーチ・報告・批評・論述など全教科・領域や活動の基盤となる活動である。全教科で取り組む必要がある。
★説明や記述・報告などを、まず論理的に読み解く観点や方法を、全員に楽しくシンプルに「習得」させる必要がある。身につけさせるための観点と方法のポイントを提案した。
★論理的な「受信」で終わらずに、着眼点・説得力やその人らしさ、資料選択や説明力の特質などを「自分の立場・課題意識」から評価・判断できる観点や、「構成・発信」「交流・学びあい」の観点から課題解決能力に「活用」できるような系統的指導観が求められる。
要約する言語活動
★要約には、実用的な目的だけでなく、教育的な目的もある。とくに、「肉付け法」と呼ばれる要約法は、読解力を高める有効なトレーニングとなりうる。
★要約力を強化するトレーニングとして、以下の三つが挙げられる。①「なぜ」を問うトレーニング…要約のヒントになりそうな文を選びだし、その文の「なぜ」(理由・根拠・意図)を自問自答するトレーニング法。②ネットワークをたどるトレーニング…接続詞や指示詞、文末表現など、言葉の形式を手がかりに、文章の意味的なネットワークを追うトレーニング法。③段落に分けるトレーニング…自分で分けた段落に小見出しをつけ、そのフローチャートによって文章の全体構造を把握するトレーニング法。
自分の考えを書く言語活動
★自分の考えを書く行動とは、自分自身とのコミュニケーションにほかならない。「どのように表現するか」と「何を表現するか」が重要である。
★表現の仕方に関しては、①豊かな語彙力や②文の定性的評価に従って表現することによってわかりやすい文章となる。
★何を表現するかについては、①読み手の無知に配慮することや読み手への表現の効果という読み手意識を持つこと、②あらかじめ自分の思考を整理しておき、知っていることをそのまま書くのではなくアイデアを階層化すること、が重要である。そのための方策として、例えば市販の付箋などを使った方法がある。また③書き終えた文章をピアレビューすることにより、説得力のある文章を書くことができる。
社会文化的アプローチから見た言語活動
★「聞く・話す」という言語活動は社会生活を営むための文化歴史的に形成されてきた主要な道具である。この道具は早い時期から家庭において使用されているため、子どもたちが教室にくる時点では、その使用方法が透明なものとなっている。一方、教室においては独特の使用慣習が要求されている。
★社会文化的アプローチでは「聞く・話す」ことの育成を、透明となっている言語の使用慣習を子どもたちが自覚し、自らの手で新たな使用慣習として作り上げていくことと考える。このことは言語活動の向上だけでなく、これを使う個人に高次の精神過程を発達させることに結びつくのである。
コミュニケーションをとりいれた言語活動
★児童生徒のコミュニケーション力は決して高くない。その要因は、コミュニケーションという言語活動の望ましい指導が具体的になされていないからなのだ。さらなる問題は、教師自身が何をどう教えたらいいのかがわかっていないことである。
★何をどう教えれば子どもたちのコミュニケーション力が身につくか。まず「言語技術の正体」を「言語に関する知識の行為化」であると定義づけ、「言語技術を支える言語知識」の例を豊富に示しながら、その知識の健全な行為化によってコミュニケーション力の向上を図るべきだと述べる。
韓国における言語活動
★韓国はPISA調査の読解力分野で、2000年から6位、2位、そして2006年では1位と持続的に向上している。
★その原因として、1987年に教育課程が従前の知識中心の教育から言語使用技能中心の教育に改められ、国語科でも、小学校の国語科教科書を「読む」「聞く・話す」「書く」の三分冊に、さらに2000年からは中学校でも「読む」「聞く・話す・書く」の二分冊にしたことが考えられる。これにより、読む一辺倒だった指導が改善されたと考えられる。
★しかし、上位と下位のグループには289点という大きな格差があり(OECD平均は325点であるが)、格差を生まない授業技術の研究が急務である。
★このほか、読書指導や、PISAの影響を受けた全国成就度評価も言語力向上に役立っていると考える。
連載
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(48) 小学校五年、基本図形の面積 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
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これからの国語科教育(3)小学校「読むこと 説明的な文章」 | 大阪府交野市私市小学校長 尾崎靖二 |
これからの理科教育をどうするか(9)中学校一年「大地の成り立ちと変化」 | 筑波大学附属中学校教諭 金子 丈夫 |
これからの学習評価(3)「思考・判断・表現」とスタンダード準拠評価 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
教育・心理検査入門(3)知能検査(集団式)の活用 | (一財)応用教育研究所副所長 宮島 邦夫 |
自己の生き方を育てる学校教育(4)「教科教育・理科教育の人格形成-事実に学び謙虚さを育てる」 | 文部科学省視学官 日置 光久 明治大学教授 諸富 祥彦 |
小学校英語活動のポイント(15)「外国語活動」におけるDo`s and Don`ts-その3 | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
教育の窓(10)パフォーマンス評価の必要性 | 京都大学准教授 西岡 加名恵 |
ひとりごと/ペインクリニック | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |