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特集
いじめ問題をどうとらえるか
★いじめは、集団内の人間関係のぶつかりやねじれなどから発生するが、それは集団内のゆがんだ人間関係を表すものである。
★いじめは人権にかかわるきわめて重大な問題であるという認識を持ち、その克服に向けて行動することが、何よりも大切である。
★現在、いじめがより深刻化する一方、いじめが見えにくくなっている状況や、いじめを生みやすい社会環境がいっそう広がっていることが指摘される。
★いじめは、けっして許されないことであり、また、どの子どもにもどの学校でも起こりうるものである。その認識に立ち、学校全体で取り組むことが求められている。
いじめをどう発見するか
★どのような学級集団でも、いじめは発生する可能性がある。教師はその発生を未然に防ぐべく、常に予防的な対応をしておかねばならない。
★学級集団の状態によって、いじめの発生率は大きく異なる。教師は学級集団の状態を把握し、その結果に基づいて学級経営のあり方を考えることが求められる。
★いじめ行為は、学級内で、加害者意識の少ない中で特定の子どもに向けられることが多い。そのような雰囲気に教師も巻き込まれ、適切な対応ができない危険性が考えられる。いじめと認識できないことを前提に、発見するための方法が必要である。
★子どもたちの友人関係は変化しやすく、教師はその変化を的確に把握することが求められる。
★学級集団が「なれあい型」や「管理型」の状態になってくると、日常観察だけでは半数以上の教師はいじめ問題に気がつかないという事実がある。いじめ問題を発見するには、それを補う心理尺度などの活用が不可欠である。
★同時に、担任する学級集団の状態を教師が把握することが、いじめ問題を発見するうえでも必要である。
学校におけるいじめの発見
★いじめが深刻化する前に発見する方法として、子どもへの質問紙がある。筆者らが作成した質問紙は、言葉、身体、脅し、仲間はずれ、卑劣の五因子から構成される。また、多様ないじめによる苦痛の程度をデータベース化した。
★筆者らの研究によれば、教師の指導態度を「毅然叱正」と「配慮気配り」に分けると、両方とも高い場合にいじめは最も少なく、両方が低い場合いじめは多発する。
★教師と子どもの欲求が対立したときの指導態度では、教師が譲歩する「負け型」の場合、いじめが多いことがわかった。
いじめにどう対処するか 学級担任
★学級担任は、「自分の学級でもいじめが起こりうる」と思い、常にいじめ防止、いじめ発見、そしていじめが起こった場合それを乗り越えてゆくことを考えていかなくてはならない。学級担任が、「いじめは絶対にいけない。許さない」という姿勢を生徒に表明することが大切である。
★ともすればいじめる者といじめられる者、二者への対応や指導を考えがちだが、「いじめは学級の病」ととらえ、学級全体に指導し、学級全体を育てるという発想で取り組んでいくことが大切である。
いじめにどう対処するか 生徒指導部として
★「学校はすべての児童生徒が安心してすごせる場である」ことを全教員が再確認することが、教育活動の基盤である。そして「いじめは絶対に許さない。被害者の立場に立って毅然と対応する。だから安心して相談してほしい」などと、全校児童生徒や保護者に呼びかける。
★すべての教育活動について、計画的な指導、記録、連絡、相談が行われるよう、組織的な生徒指導体制を整え、全教師が同じ方針・基準で指導することが大切である。
★日常の小さなルール違反、悪ふざけや揶揄などにも毅然と対応する。
★生徒指導部は、事前に決めている問題行動を起こした児童生徒に対し、別室での特別な指導を行う。
★教師は、子どものモデルとなるよう、自分の言動に責任をもたねばならない。
いじめにどう対処するか カウンセリングの現場から
★スクールカウンセラーは、さまざまな役割でいじめの対応にかかわっている。インテイカー(生徒との直接相談)、コンサルタント、調停者、予防的取り組みのオーガナイザー、アドバイザー、ガイダンスの先生など。学校の状況や勤務の形態などに応じて、柔軟に対応することが求められる。
★いじめの対処には、従来のカウンセリングモデル(発達・成長モデル)に加えて、その緊急性から「危機介入」という視点が必要とされる。安全性、即応性、危機状態からの回復に注目したい。
★家庭や学校で、SOSを出せずに(出してるが気づかれずに)苦しんでいる子どもたちがいる。それらの子どもたちは、ポケモンセンター(元気回復所)とアジール(かけこみ寺)を求めている。
いじめにどう対応するか 管理職として
★深刻ないじめが発覚した場合、まず、事実関係を早急に把握することである。そして以後は、報告・連絡・相談体制を確立し早期の誠意ある対応に努める。
★次に、被害生徒のケア、課外生徒の指導、保護者への説明と協力依頼などの介入をしつつ、教育委員会への報告・連携も遅れずに行う。学校として指導方針・方策と再発予防策を明確に示すことが大切である。
★いじめの問題が起きた際、「いじめられるほうにも問題がある」と言ってはいけない。軽く扱わない。対等なけんかやふざけとして見過ごさない。
★いじめはどこでも起こりうるととらえ、」発見する校内システムをつくることである。1.いじめの兆候をあげたチェックリストを学校として整備し、職員に徹底する。2.管理職が欠席・遅刻の状況や保健室の様子を把握する。3.教育相談関係の連絡会を設け、気になる子についての情報や指導を話し合う。
いじめない子、いじめられない子を育てる
★いじめを予防するためには、いごこちのよい学級にすることが最も大切である。そのためには、承認意識を高める取り組みを継続する必要がある。
★また、「望ましい学級の状態」で侵害行為の問題点を学ぶことが効果的である。そして、実態に応じた理解しやすい場面設定の資料を使う。授業では、問題場面の劇で明確に場面を把握させ、登場人物の行動の意味や影響を考えさせるようにする。そして最後に、侵害行為に対する実行力を身につけるため、加害者、被害者、観衆や傍観者の立場に立たせて、場面設定における行動のあり方をロールプレイによって言語化させる。
いじめない子、いじめられない子を育てる
★いじめを未然に防止する一番の取組は、加害者を出さないようにすることである。
★それには、温かで居心地のよい学級集団をつくったり、一人一人の自己存在感を高めたりして、どの生徒も多かれ少なかれかかえるストレスやイライラ感等を背景にしたいじめを予防する。
★そうした全体的な取組ではいじめを止められない子には、その子がそうせざるをえない内面を理解し、未達成の発達課題の獲得を支援する。
★また、いじめられる子に問題があるというのではなく、いじめられがちな子のもつ、加害者に何らかを感じさせてしまう特性や行動等を修正し、いじめの発生を予防する。
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