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特集
特別支援教育の現状と今後について
★障害のある子どもの教育をめぐる近年の状況を踏まえ、平成15年3月、文部科学省の有識者会議は、障害のある子ども一人一人のニーズに応じた適切な教育的支援を行う「特別支援教育」の考え方を打ち出し、文部科学省や各地方公共団体においては、各種の施策を展開してきている。
★「特別支援教育」の制度的な位置づけについては、平成17年12月に公表されて中央教育審議会の答申を受け、第164回通常国会において学校教育法等の一部改正が行われ、平成19年度より盲・聾・養護学校が廃止され、新たに特別支援学校が創設されることとなった。
★文部科学省としては、平成19年度から新たな制度の発足に向け、特別支援学校における教育課程の整備等、必要な施策の充実を進めている。
学校として何をしたらよいか
★学校として特別支援教育を進めていくためには、校長が特別支援教育に対するビジョンをもち、リーダーシップを発揮して学校経営にあたることが重要である。そのために、校長自らが研修に努め、特別支援教育を学校経営に明確に位置づけ、校内支援体制の構築を図らなければならない。
★特別支援コーディネーターを中心に支援の必要な子どもの把握に努め、必要に応じて保護者や専門機関と連携して支援活動を進めることが大切である。
特別支援教育コーディネータの役割
★特別支援教育コーディネーターには、支援が必要な児童生徒に対する学校全体としての組織的な対応を推進する役割が求められている。あわせて、児童生徒の校内のみならず地域も含めて関連する情報を把握し、担任・保護者・関連機関と連携しながら、児童生徒の特性理解とその特性に基づいた支援を組織的に実施することが求められている。
★求められている役割は多岐にわたるが、これまでの実践や機能と合致することも少なくない。大切なのは求められている内容を整理し、すでに機能しているものがあれば、そこをもとに特別支援教育コーディネーターの役割を付帯していくこと、そして、チームとして特別支援教育コーディネーターを組織し、お互いの実践を活かしながら支援体制を構築していくことであろう。
相談体制および教育支援計画と保護者、地域との連携
★障害のある児童生徒の「自立と社会参加」の実現に向けて、魅力ある特別支援教育を推進するためには、これまでの特殊教育の実践と成果を継承・発展させると同時に、学校、保護者、地域が相互の理解と意思疎通のもと、弾力的でよりよい連携システムの確立をめざし、協調して児童生徒一人一人のニーズに応えていくことである。
★これらの連携と協力をより確かなものにしていくには、児童生徒に対して実のある移行と接続を図る「相談体制」の充実と、豊かな「個別の支援計画」「個別の教育支援計画」の作成が鍵になる。
教室で使える指導技術
★軽度障害児の教育の場は通常の学級である。小学校の一学級の平均児童数は28.6人、中学校の一学級の平均生徒数は34人で、先進国中ワースト・ツーである。
★過密学級における学級経営の有効な技術は、行動療法の技術である。行動療法による教育の特徴は、ほめて育てることである。ほめられて育つ子どもは、「こう行動すると先生が喜ぶ。こう行動すると先生が悲しむ」という因果関係を学ぶ。
★通常学級では、加年に伴い成績格差が拡大する。是正技術は、ラーナー・フレンドリーな授業づくりと、学習方略の教授である。
★「子どもたちが私たちの教え方で学習できないときは、子どもたちが学習できる方法によって教えるように改めなければならない」(ロヴァス)。
特別な支援を必要とする子どもがいる通常学級の事例(小学校) -学級経営と校内支援を中心に
★2つの事例を紹介する。いずれも、校内の職員の動向が一人の担任を支え、子どもをも成長させたといえる。
★事例1は、「指導困難児を抱えた新米教師の学級」。広汎性発達障害の子どもと、注意欠陥多動性障害の子どもが在籍し、一時期は指導困難で校内の職員の全面的な支援を受けていた。その後、病院への紹介や就学指導などにより、年度末にはかなり落ち着いたケースである。
★事例2は、「不適応児を抱えたベテラン教師の学級」。アスペルガー症候群と診断された子どもの不適応を、校内の職員の支援で改善したケ-スである。
子どもの力を借りて -特別支援教育コーディネーターの取り組みの実際(中学校)
★本校の特別支援教育は、荒れた学校を立て直すために、生徒一人一人に合った指導をする目的で行った取組みの延長線上にある。具体的には、朝のあいさつ運動や、生徒と一緒に昼休みを過ごしたり清掃を行うこと、授業研究の充実、情報の共有、保護者・地域との協力と理解、などである。
★個別で学習する教室「リソースルーム」をつくり、特別な支援が必要な生徒は、希望によりそこで必要な教科・時間だけ個別学習をする。
★コーディネーターを複数つくり、仕事を分担する。通常級の教師がサポートティーチャーとしてリソースルームで授業を行う。
診断ツール「K-ABC」の概要とその活用
★近年、K‐ABCが他の心理検査とともに軽度発達障害児の診断や指導に広く用いられるようになってきている。K‐ABCは、認知処理過程尺度と習得度尺度から構成されており、認知処理過程尺度はさらに同時処理尺度と継次処理尺度から構成されている。
★これら4尺度間の個人内比較を行うことにより、子どもの得意な領域や苦手な領域を理解し、支援の具体的な手がかりを得ることができる。
★本稿ではこうしたK‐ABCの活用方法とその有用性について、学習障害児の漢字指導を通して紹介する。本事例は、継次処理優位の小学6年の男児に対し、聴覚的手がかりを活用した漢字カルタによる指導である。
連載
教育評価の基礎・基本(3) 教育評価の手順(1)評価目標の設定 | 文教大学学園長・応用教育研究所所長 石田 恒好 |
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授業をつくる(10)小学校図画工作 「知のネットワーク」を育てる授業づくり | 東京学芸大学准教授 西村 徳行 |
新しい評価の枠組み(6) 残された問題-総合的な学習、関心・意欲・態度、入試にかかわる問題 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
ペーパーテストで思考力・表現力を測る(1)中学校理科(第1分野) | 筑波大学附属高等学校講師・元筑波大学附属中学校教諭 荘司 隆一 |
標準検査を活用した教育実践(7) 標準学力検査の結果を踏まえた授業の改善 | 福島市立森合小学校教諭 高橋 哲也 |
だんわしつ | 澤本 和子 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |