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特集
習熟度別学習・少人数指導の類型と課題ー話し合い活動を軽視していないか
★習熟度別学習や少人数指導には、まず学習課題の「難易や好嫌」によって、また一斉指導との組み合わせによって四つの学習プログラムが考えられる。さらに、「学習時間」を考慮した二つの学習プログラムを作ることができる。これら六つの学習プログラムは、伝統的な一斉指導に取って代わる「個別指導」システムを構成するものである。
★一斉指導のすぐれた点は、集団思考すなわち話し合い活動にある。どうも現状の習熟度別学習や少人数指導は、一人一人がばらばらにプリントによる学習を行うというイメージがあるようだ。しかし新しい個別指導システムは、当然、一斉授業の持ついこのすぐれた点を引き継ぐべきである。
習熟度別指導・少人数指導の実践
★学習向上フロンティアスクールとして、個に応じた指導の一層の充実を図るため、数学・英語における習熟度別少人数指導の実施と検証を中核に事業を推進してきた。
★習熟度別少人数指導の実施上の課題に関して、生徒の学習意欲や基礎・基本の定着度など様々な側面からのデータをもとに、PDCAのマネジメントサイクルの機能を活かした充実・改善に努めている。
★フロンティア事業のまとめの年度を迎え、等質編成および習熟度別編成を交えた弾力的な少人数集団編成による指導を実施し、習熟度別少人数指導の有効性を検証していく。
すべての子どもへの発展的な学習
★発展的な学習を、学習したことの延長にあるものと考えてみると、発展的な学習は、確かな一般化を図るためにも、学習したことの理解を深めるためにも、役立つものにすることができる。さらに、容易に理解できるものはどんどん取り入れるとともに、難しいものであっても教師が使って見せるだけでもよいから取り上げたい。
★そのようなことを丁寧に考えてみると、発展的な学習の中には、遅れがちな子どもに欠かせないものも多く、発展的な学習は進んだ子どものためというのでなく、遅れがちな子どもにすべて与えたい。
少人数学級編成という取り組み
★「一クラスは何人がよいのか」。今までこのことに正対してきたことがなかった。たしかに昭和55年以来、義務教育標準法の40人上限定数は(但し書き改訂とはなったものの)据え置きである。
★それから25年、子どもたちは変わってはいないのだろうか。6-15歳まで一律40人という同じ集団規模でよいのか、今まで疑問はなかった。しかし一律40人でよいとする教育的根拠が見あたらない。幼児教育と接続する小1と社会へ巣立つ直前の中3に同等の集団規模が適切なのだろうか。
★学級「編制」(算定基準)から「編成」(集団人数の構成)としての教育的意義を見出せるならば、見てみない振りをせず果敢にやってみようとの考えから少人数学級実現に踏み出した。
「発展的な学習」をこう実践する ●小学校国語
★魅力的な学習活動を組織して、子どもの学習意欲を喚起し、習得させたい基礎的な学習内容だけでなく、発展的な学習の必然性を持たせる。
★発展的な学習を位置づけた単元を三つ示した。
1.音声言語単元「感動を伝えよう」(5年生)では、専門家の提示するスピーチから、子どもたちに様々な音声言語の要素を見つけ、選択するという発展的な学習。
2.読解単元「やっつけたぞ!すごい」(2年生)では、読解した事柄に関わる本を選択し、主体的に読書する学習。
3.読解単元「宮沢賢治を知ろう」(6年生)では、読解した事柄に基づいて、自分で課題を設定し、それを解決していく学習。
「発展的な学習」をこう実践する ●小学校算数
★「発展的な学習」は、
(1)基礎・基本がはっきりする。
(2)発展的に考えるおもしろさが味わえる。
(3)発展のさせ方を学ぶことができる。
(4)算数は創り出していくものだという意識を持つことができる。
などのよさがあり、学力低下を防ぐ特効薬になりうると考える。
★しかし、「少人数指導・習熟度別指導」と同様に、算数科の目標に迫る一つの道具であり、それが絶対的な手段のように語られることは大変危険である。道具・方法や「使う人の心」によっていかようにもなるからである。今こそ教師の授業力を鍛えて行かなければならないと感じている。「もっと授業を楽しく、魅力的なものにしていきたい」との想いで授業づくりを考えたい。
「発展的な学習」をこう実践する ●小学校社会
★社会科における学習は、単に難度の高い学習をさせればいいというものではない。指導目標(ねらい)に照らして、他の事例や地域を調べたり、学んだことと関連のある事柄を学習させたりすることなどが考えられる。
★発展的な学習は、教師が子どもの学習状況を評価し、評価規準(B)を達成していると判断したときに行うものである。それには、確かな判断基準、教師の鋭敏な評価感覚、卓越した評価力などが求められる。
★発展的な学習を効果的に行うには、子どもの学習状況や理解度を的確に把握して、個別的に行ったり、小集団で行ったりすることが考えられる。
「発展的な学習」をこう実践する ●中学校理科
★発展的な学習や補充的な学習は、習熟度別学習・少人数指導等の授業形態に依存するケースが多いが、一般的な授業形態でも、共通の課題を学習させたあと、発展・補充どちらにも展開できる教材を用意授業を行うことで可能になる。実際に、原子・分子のモデル化、力学的なエネルギーの速度測定装置の活用、パフォーマンステストの工夫などについて紹介する。
★本来、発展的な学習の究極的な目的は「生きる力」にあり、それを達成するためには、生徒が必修教科で獲得した学力を、選択・総合を通じていかに拡大、深化したかにある。そこで、選択教科のあり方や必修・選択・総合を連携させた発展的な学習の事例などを紹介する。
「発展的な学習内容」と標準学力検査
★小学校の教科書の検定結果が発表され、「発展的な学習内容」が扱われていることが明らかになった。そこで、この機会に、「発展的な学習内容」と標準学力検査の関係を応用教育研究所が標準化した教研式標準学力検査CRTとNRTから考察してみた。
連載
小学校算数の基礎・基本の指導と評価(13) 計算について考える(2) | 元筑波大学附属小学校教諭 正木 孝昌 |
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学習意欲のとらえ方・育て方(3) 学習意欲の発達 | 応用教育研究所理事長・筑波大学名誉教授 櫻井 茂男 |
問題解決能力とその評価(3) 社会科の歴史分野における問題解決能力と評価 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
ドリルについて考える=学習者の視点を考えるドリル論(3) 漢字ドリルは自己テスト法 | 東北福祉大学準教授・授業づくりネットワーク代表 上条 晴夫 |
豊かな心と確かな学力の育成(2) 一人で生きていく力と他者と共に生きていく力を育てる教育課程 | 東北福祉大学準教授・授業づくりネットワーク代表 上条 晴夫 |
最新のテスト事情(1) 新しいテスト理論の利点 | 法政大学教授 服部 環 |
だんわしつ | 武庫川女子大学教授 押谷 由夫 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |