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特集
❶小学校英語/小学校英語の目標
★国際理解教育の一環からスタートした小学校英語教育。新学習指導要領では、英語面を充実させながら、国際理解面も大切にしている。
★10年間に及ぶ英語教育の中で小学校が果たせるのは、10年間の下支えとなる音声面。
★児童期に合った指導法の探求、評価に振り回されない姿勢が重要。
❶小学校英語/担任が行う小学校英語教育
★学級担任は、英語の授業においてコーディネーターである。他教科の授業や日常生活から得た児童の情報を生かして、指導案を作成することが大切である。
★指導案作成では、場面設定が自然で、目標とする英文を使う必然性のある活動にする。
★学級担任とALTが協力することで、インプット量を二倍にし、より活発なやり取りを行うことができる。
★現行教材を活用する際には、デジタル教材とアナログ教材のよさを生かし、使い分けることが必要である。
❶小学校英語/小学校英語の授業づくり
★授業づくりでは、音声中心で、体験を通して英語で伝え合う楽しさを実感することで、主体的にコミュニケーションを図ろうとする児童を育てることを重視する。
★指導案は、題材、想定される活動、子どもの実態などを考慮して作成する。学習指導要領に示された3つの柱に沿って単元ゴールを明確にする。評価規準は指導に役立つようにわかりやすく書く。単元構成は、①インプット②内在化③アウトプットの3段階を意識する。
❶小学校英語/さいたま市の英語教育「グローバル・スタディ」
★さいたま市では、平成28年度から独自の英語教育「グローバル・スタディ」を実施している。
★小学校担任とALTや非常勤講師の複数体制・専科教員という指導体制やオリジナルのテキストやDVDの作成により、指導に不安をもつ小学校担任の負担をフォローできるような体制をとっている。
❶小学校英語/評価
★新しい学習指導要領の下での評価では形成的評価の充実が求められている。5年生と6年生の聞くことや話すことの技能の評価では、学習タスク・練習タスク・評価タスクという3つのタスクを用いて評価の妥当性を高めるとともに、児童の学習改善につながるフィードバックを与えたい。「学びに向かう力、人間性等」の評価を充実させ、通知表を工夫して、評価結果を関係者間でよく活用するようにしたい。
❶小学校英語/新学習指導要領「外国語活動・外国語科」の課題
★限られた授業時数の小学校の英語教育にスキル面の向上は期待できないが、音声英語に慣れ親しみ、言語活動を通してコミュニケーションの大切さや楽しさに触れ、異なる言語・文化への「気づき」を得ることは可能である。中学校以降の学習につながる外国語学習への「興味・関心」が育まれることが重要であり、言葉の教育としての指導を心がけることや「聴き解く力」を全教育課程で育成する視点が必要になる。
❷生徒指導に教育相談を生かす/生徒指導に生かす教育相談
★生徒指導・教育相談は、すべての児童生徒の個性の尊重や社会的資質の育成を支援する開発的・包括的な役割を果たしており、両者の機能の多くは重複している。
一方で、教育相談には独自で培ってきた技法(スキル)や基本姿勢(カウンセリングマインド)があり、開発的・積極的生徒指導や問題解決的生徒指導の場面で、有効に活用されている。
★「生徒指導に教育相談を生かす」とは、教育相談で編み出された技法(スキル)を直接活用することもあるが、カウンセリングマインドを基に生徒指導を推進するという意味合いをもつ。
本稿では、カウンセリングマインドの中でも、とくに生徒指導と関連の深い、①心理的事実を受容し、非なる客観的事実は指導する、②だれもがよい所をもつ、③だれもが自分で考えることができる、の3点を取り上げ、教育相談と生徒指導の関連性を考察する。
❷生徒指導に教育相談を生かす/校内暴力をどうとらえるか
★「校内暴力」という言葉には、ベテラン教員にとって、自身が被害者になるような苦い想い出がつきまとう。つまり「対教師暴力」である。TVドラマ「スクールウオーズ」が描いた情景は、廊下をオートバイが疾走し、金属バットで窓ガラスをたたき割るという強烈な場面であった。
★いまは違う。教員に向かってくるような暴力はほとんど姿を消し、代わりに目立つのは、いじめ一歩手前の子どもどうしのトラブルやけんかである。
❷生徒指導に教育相談を生かす/教育困難校での取り組み
★教師が「どの子も幸せになる力をもっている」「どの子も幸せになる権利がある」という思いで指導することが大切である。さらに、その思いを組織で共有して、さまざまな協力が得られることで効果的な指導となる。
★実際の指導では、生徒理解(アセスメント)を行い、卒業までの期間を見通した計画づくりによって、進路目標の達成に導くことができる。生徒が学校で学びの機会を失わないように指導することが生徒指導の第一歩である。
❷生徒指導に教育相談を生かす/アドラー心理学の実践への導入
★「ほめる・叱る」を放棄し、「他者を勇気づける」アドラー心理学的な生徒指導は、自律性支援的な効果を期待できるものと考えられる。しかし、現行の教育現場の指導観とは対立する可能性もあり、学校全体としてコンセンサスを得ることが、今後の課題となる。
★人間の行動には目的があり、その目的を理論的に見きわめることが、教育相談的な機能をもった生徒指導の実現を可能にする。
❷生徒指導に教育相談を生かす/解決志向アプローチによるいじめ問題への対応
★いじめは見えないところで発生するため、アンテナを常に高く上げつつ、以下に示す二段階の予防が必要です。第1次予防では、解決志向アプローチの考え方をもとに全員を対象にします。子どもたちの力を信じて、よさや強みに焦点化し、その部分を押し広げるように一人一人、子どもたち相互、学級全体にアプローチします。第2次予防では、解決志向ピアサポートにより、いじめを受けた子どもの元気さを回復するとともに、良好な人間関係を築いていきます。
❷生徒指導に教育相談を生かす/生徒指導に生かすカウンセリング技法
★筆者は構成的グループエンカウンタ-のワークショップに参加しはじめた初期のころから、教師としての自分の発言には「アイメッセージ(私メッセージ)」がたりないという自己盲点に気づかされた。その後、私だけでなく多くの教師に、アイメッセージのスキルが不足している現状に気づくこととなった。
★また、カウンセリング技法は生徒指導に必須な技法の一つであるという認識を深め、「生徒指導とカウンセリングの統合」理論の確立に向けて実践を続けてきた。
今月のイチオシ!ここまでは押さえたい学習評価(2)形成的評価に必要なこと
2019年度の連載「これだけは押さえたい学習評価」はどちらかといえば、さし迫った課題や問題を中心に考えました。本連載では次のように評価全般にわたり考えていく予定です。
・評価の目的や機能(総括的評価、形成的評価、診断的評価、アカウンタビリティ、選抜機能など)
・だれが評価するか(教師の評価、外部機関による評価、自己評価など)
・何を評価するか(知識、高次の技能など)
・評価手段(ペーパーテスト、パフォーマンス評価など)
・評価結果の示し方(ノルム準拠評価、集団準拠評価、クライテリオン準拠評価、スタンダード準拠評価など)
・評価の質的な基準(信頼性、妥当性など)
●形成的評価と総括的評価
形成的評価について考える際は、対比のため、総括的評価についても簡単に確認しておきましょう。
形成的評価は、評価の結果得られた情報を、生徒の学習の向上に用いることです(そのため最近では「学習のための評価(assessment for learning)」ともいわれます)。学習の向上のために評価の結果を生かすには、一定の内容の学習過程の途中でなければ得られた情報を活用できないので、形成的評価は学習過程の途中で行われる必要があります。一方、総括的評価は、一定の学習活動の結果として、生徒がどの程度成果を上げたかを要約して示すものですので、目的とする学習の最後の段階で行われ、形成的評価のように評価結果を学習の改善に用いることはできません(最近では「学習の評価(assessment of learning)」ともいわれます)。
(診断的評価は学習の初めに、生徒の学習状況を調べるための評価です。その結果を見て、学習指導の計画を立てたり、該当の生徒に適切な学習環境を選択したりする。生徒の学習の向上をめざす点では、形成的評価と機能的には近いといえます。)
●形成的評価への注目:P・ブラックら
1998年、P・ブラックとD・ウィリアムは、形成的評価がどの程度学習を向上させるか(効果係数)を0・4〜0・7で、これはきわめて高い数値であると論じました。同時に、実際の教室での指導の実態は、形成的評価が機能するようにはなっていないとも論じたのです。これをきっかけに世界中で形成的評価への関心が一気に高まりました。 今回の学習評価の在り方を検討したワーキンググループで多くの委員が形成的評価の重要性を指摘し、その強化を図る必要性を述べたのも、この影響を受けていると考えられます。
ただし、形成的評価の重要性を強調したり、PDCAサイクルで行うべきだと述べたりするだけでは、形成的評価が実際に行われ効果を上げることにはなりません。どのような点を工夫したり改善したりすれば、形成的評価が効果を上げるかを理解しなければならないのです。
●形成的評価が効果を上げる基本的な条件:サドラー
それに先立ち、オーストラリアのR・サドラー(1989)は、形成的評価が効果を上げるための条件を明らかにしました。形成的評価が機能するには、①〜③について教師が指導することが必要です。
【形成的評価が機能する三つの条件】
①学習の目標や、どのようなレベルの学習成果が求められているかを生徒自身が知る必要がある。
②学習の目標や、目標とするレベルと比較して、現在の自分の学習状況がどの程度乖離しているか、生徒自身が知る必要がある。
③生徒は学習の目標と、実際の学習状況の乖離を埋める方法を指導されることを必要とする。
三つの条件が必要な理由や注意すべき点は次のようです。
①について
生徒自身が学習で何を求められているかを理解しなければ、教師の指導に従っているだけで、教師の指導がなくなれば指導の成果はすぐに失われ、学習の向上とはなりません。生徒自身が目標等を自分自身に内面化し、学習を自己コントロールすることが必要です。例えば初歩的なレベルでは、漢字を書くにしても、漢字の「とめ」や「はね」の部分を区別することを理解する必要があります。このような初歩的なレベルでは、学習の目標を理解させるのは簡単です(ただし小学校一年では簡単とは言い切れませんが)。
しかし、高度なレベルの学習になると、学習の目標やレベルを理解させるのはむずかしくなります。例えば、論理的な文章を書くことが目標である場合、この目標を理解させるには、単に「論理的な文章を書くように」と言ってもわかりません。実際に論理的な文章の実例をたくさん示され、どこが論理的であるかなどについて詳しく説明されることが必要です。しかし、わが国で一般にはこのような学習指導が行われていません。現在のわが国では、高度なレベルの学習で何が求められるかを生徒に理解させることがもっと必要です。
②について
例えば、テストを行って点数や順位を知らせるだけでは、この乖離を知らせることにはなりません。学習の目標を具現化した評価基準と比較して、どこが不足しているか・問題点があるかを示すことが必要です。これも漢字の場合などでは容易ですが、高度なレベルの学習では相当の工夫を要します。
③について
乖離を埋めるための具体的な方法について指導される必要があります。例えば、簡単なものではもう一度繰り返すとか、自分の考えを文章にして添削してもらうとか、教科書の読み直す部分を指定されるなどです。
●工夫すべき四つの分野
サドラーのあげた条件や、P・ブラックらの研究により、形成的評価が効果を上げるために工夫すべき四つの分野があるといわれています。
(1)教師の質問のあり方
形成的評価のためには、教師の質問の改善が必要です。教師は質問により、生徒が何を考えているかを知ることが必要です。これまでの質問のように、あらかじめ教師が考えた正解を述べさせるようなものではなく、生徒に自由に解答を考えさせ、生徒が実際に何を考えているかを述べさせるような質問です。また、質問してすぐに解答を求めるのではなく、考える時間を十分に与えることです。さらに、間違ったことを言っても大丈夫だという雰囲気をつくる必要があります。
(2)フィードバックのあり方
前述したように、点数や順位を伝えるだけだったり、「よくできました」とか「がんばりました」と言うだけのフィードバックでは効果はありません。さらに、学習の状況に関するフィードバックを生徒に提供したとしても、それを実際に使うのは生徒ですから、生徒自身がフィードバックを用いて学習の改善をめざそうとしなければなりません。
よくない成績を何度も知らされた生徒は、そのような試みを避けるようになります。こうなると適切なフィードバックをしても、生かそうとしません。そこで、生徒がフィードバックをもとに学習の改善に取り組むには、クラスのだれもが成功できるという雰囲気に満ちていることが必要です。
実際に最も学習の向上をもたらすのは、学習の目標や評価基準に照らして、学習で達成した部分はどこで、逆に十分でなかった所はどこかについて、生徒が知らされることです。
(3)評価基準の共有
サドラーの指摘のように、教師だけでなく生徒も何が求められているかを評価基準の形で教師と共有することが必要です。ただしこれは、評価基準の共有自体が形成的評価の効果をもつということではなく、(2)で指摘した効果的なフィードバックを行う場合に必要でもあり、(4)で述べる生徒の自己評価のためにも必要となるので重要ということです。
(4)生徒の自己評価
生徒は、新しい知識等は古い知識に付け加えられるもの、学習は教師の指示に従って行うものという受身の認識をもっています。しかし、新しい知識と既存の知識は整合しなかったり相反したりすることに気がつき、このような不一致を熟慮して解決することを学習と認識するようにしなければなりません。そのためには、生徒自身にも学習の目的や評価基準を理解させて、学習しながら目標や評価基準に照らして、自己の学習状況を自己評価して、評価結果をもとに熟慮して学習上の問題点を解決していくことが必要です。これは生徒が自分で行う形成的評価といえます。
連載
巻頭言/小学校の外国語教科化を前に | 東京家政大学教授 平山 祐一郎 |
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木下是雄と「言語技術の会」ルネッサンス(12)木下たちの意義と限界、その限界を超える方法 | 国語専門塾「鶏鳴学園」塾長 中井浩一 |
「主体的・対話的で深い学び」を創る(13)小学校社会科3年『火事からまちを守る(地域の安全を守る働き:4年からの移行単元)-消防団は本当に必要なのか?」の授業を通して-』 | 筑波大学附属小学校教諭 由井薗 健 |
教育統計・測定入門(85)採点者間信頼性の高さを表す指標 | 法政大学教授 服部 環 |
教育相談はこう学ぶ!-全国各地の特色ある教育相談研修-(14)「だんだんタイム(短時間グループアプローチ)」を通して児童生徒・教職員がだんだん変わることをめざして | 出雲市教育委員会児童生徒支援課 有馬陽介 |
「概念」を教える・学ぶ(1)動物の学習 | 東京学芸大学名誉教授 河野義章 |
予防としてのコミュニケーション教育(2)思いやりを育むソーシャルスキル・トレーニング | 東京情報大学准教授 原田 恵理子 |