月刊誌 指導と評価

2010年 5月号
  1. 2010年 5月号 Vol.56-5 No.665  定価:450円
特集
特別支援教育のいま
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特集

特別支援教育の現状と推進に必要なこと

名城大学教授  曽山和彦

★「発達障害がある、発達障害の疑いがある、家庭環境等に問題をかかえている」等の児童生徒が、集団の中に溶け込み、気にならない学級がある。
★保健・福祉・教育機関連携により、さまざまな支援が「ワンストップ」で受けられるシステム構築の取組みがある。
★試行錯誤の上に積み上げられた各学校等の研究・実践知見に学び、真似、新たな知見を積み上げていくことが、これからの通常学級における特別支援教育推進に求められている。

子どもの行動をどう理解しどう指導するか

東京成徳大学大学院特任教授  中野良顯

★問題行動は、子どもが学校や家庭や遊び場や地域から排除される最大の理由になる。できるだけ早期に予防し解決することが望ましい。
★行動の理解には、形態による方法と機能による方法がある。機能によって行動を理解する手続きを行動の機能分析とよぶ。その教育実践への応用を機能的行動査定という。
★行動を理解し指導するベストプラクティスは、機能的行動査定に基づく積極的行動支援である。望ましい行動が一貫して賞賛され、問題行動には階層的結果が与えられるような学校文化を創造することである。
★望ましい行動をきちんと教え、問題行動に置き換えさせていくための決め手は、適切な学級経営、授業改善、環境整備である。

通常学級における特別支援教育を充実させる学級経営~学級ソーシャルスキル指導による試み~

東京成徳大学大学院特任教授  中野良顯

★特別支援の対象となる子どもたちもその他の子どもたちも、ともに満足する学級経営が求められており、それは学級にルールとリレーションが同時に成立している「教育力のある学級集団」を育てることである。
★特別支援の対象となる子どもたちだけでなく現代の子どもたち全体が対人関係が未熟であることが、学級にルールを定着させる障害になっている。
★「配慮のスキル」と「かかわりのスキル」からなる学級ソーシャルスキルを学級で指導することを通して、学級にルールを定着させることができる。この指導は、実態に合わせたレベルから、2つのスキルを高いレベルで発揮できるようにすることが目標である。

中学校における特別支援教育

岡山市立京山中学校教諭  唐川和江

★中学校での特別支援教育は、まず入学時から良いスタートをきること。そのために、小学校との連携、個別の指導計画などを活用した学校全体での共通理解が必要である。
★コミュニケーション、心理的な安定などがうまくいく方法を学びながら、進路選択をしていく重要な時期である。自己肯定感を育てることに留意し、長期目標と短期目標を立て支援する。
★本校では、年八回の校内研修で、「発達障害の生徒を視野に入れた授業づくり」に全教員で取り組んでいる。
また月一回の校内委員会は、各学年からの連絡や支援についての話し合い・共通理解をする場である。
★とくに学年団というチームでの情報交換や支援は、どの生徒にとってもわかりやすい授業や優しい縦断を育てていくことにつながる。

通級による指導の現状と課題

聖徳大学教授  河村 久

★通級による指導は平成5年に制度化されて以来、該当児童生徒が増加の一途をたどっている。特に発達障害のある児童生徒への適切な指導・支援が大きな課題となっており、そのためにも指導の成果を検証するシステムの導入も検討すべき時期にきている。
★「特別支援教室(仮称)」構想の実現を目指した実践的な研究を、一層進めていく必要がある。当面、交流及び共同学習の充実、特別支援学級の弾力的運用を進めつつ、通級指導に関しては巡回指導体制の拡充を図るなど、より柔軟な仕組みとしていく。
★通級指導担当者の専門性の向上を図るために、教員養成の在り方の検討、教員採用制度の見直し、大学等への派遣を含めた研修の充実が求められている。

特別支援教育コーディネーターを活かす校内体制づくり

長野県教育委員会主任指導主事  岸田優代

★特別支援教育の在り方に関する調査協力者会議から「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」が示されて7年が経過し、特別支援教育の体制整備は整いつつある。今、求められるのは、その体制を実際に機能させるための各校の工夫である。
★コーディネーターを活かす体制づくりに向けた工夫のポイントとして、①学校グランドデザインに特別支援教育を位置づける ②校内委員会の組織・機能を見直す ③支援体制の機能を促進するツールの活用 ④専門性を尊重しあう関係づくり の4点を挙げた。 
★さらに、自校の「校内の支援体制づくり」のみでなく、その地域全体の特別支援教育の支援体制を整備することが各校の特別支援教育コーディネーターを支え、コーディネーターが活きる支援体制づくりにつながる。

養護教諭の果たす役割

鹿児島県薩摩川内市立川内南中学校養護教諭  松尾治子

★保健室は、学級に居場所のない生徒が来室しやすい場所である。特別な支援を必要とする生徒などの来室頻度は高い。
★そのような生徒の中には、コミュニケーションが苦手だったり、学習課題ができないなど、周囲からその違いが指摘され、二次障害として立ち止まってしまう生徒も多い。
★養護教諭だから気づけること、時間を自由に使える養護教諭だからこそできることがある。小規模校と大規模校で、特別支援コーディネーターとして取り組んだ例を紹介する。

地域との連携-大塚特別支援学校の取組みから

筑波大学附属大塚特別支援学校副校長  神田基史

★平成15年度より独立部署として専任3名体制をとってきた「支援部」の7年間の実践から、年間の活動概要と相談・支援ケースの実態を中心に報告する。
★特別支援学校のセンター的機能は六つに分類されるが、支援部が個々の支援ニーズに応じて支援を進める活動では、地域との連携といっても、やはり保育園・幼稚園・小学校との連携・協力・支援がその中心である。
★さまざまな支援活動を行う中で、ケースの支援をいくら追究してもきりがなく、結局は園や学校組織全体をパワーアップすることが重要であることが分かってきた。

連載

坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(47) 小学校五年、小数のわり算 青山学院大学教授
坪田 耕三
これからの国語科教育(2)新学習指導要領による新しい国語科教育(2)                              東京女子体育大学教授
田中洋一
これからの理科教育をどうするか(8)中学校一年「植物の生活と種類」 筑波大学附属中学校副校長
新井 直志
これからの学習評価(2)「思考・判断・表現」の観点の評価システム 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
教育・心理検査入門(2)知能検査(集団式)と知能理論 法政大学教授
服部 環
東京福祉大学講師
三好一英
小学校英語活動のポイント(14)「外国語活動」におけるDo`s and Don`ts-その2  国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長
渡邉 寛治
だんわしつ/メンタルトレーニングで不登校をサポートする メンタルトレーナー
加藤史子
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