- トップ
- 指導と評価
特集
宿題の役割
★宿題は、昔から学校教育において重要な役割をもつと考えられ、賛否の意見を伴いながらも、いろいろな形で宿題が出されてきたが、近年、個性重視、自発性・自主性尊重の立場から宿題が軽視され、宿題を出さない学校や教師もみられた。
★しかし、最近、学力低下が社会問題化し、確かな学力の向上が重視されるにつれて、再び宿題の役割が見直されるようになった。
★そこでここでは、宿題の役割、授業における宿題の扱い方、宿題の出し方などについてあらためて考える。
わが国の宿題の現状
★TIMSSやPISAなどの国際調査によると、日本の子供たちの家庭学習時間や宿題に費やす時間は、ほかの国々と比べてかなり短く、時系列でみても減少傾向にある。
★教員が宿題を課す分量も、国際的にみて少ない。日本では、国語や算数・数学、英語などの教科を中心に、三〇分より少ない課題を出す教員が多い。
★宿題量と学力には一定の比例関係が認められ、多くの宿題を課しているクラスではペーパーテストの得点が高い。宿題には「やらなければならない」という強制力があるので、子どもたちが学習習慣を身につけ、学力を高めるうえで重要な機能を果たしている。
イギリスでの宿題の現状とその分析 -中等教育を中心として
★イギリスでは教育技能省が、宿題に関してのガイドラインを出している。
★宿題に関しては、政府、教師、学校、保護者、生徒などの関係者は、異なった現状認識、異なった見解をもっている。
★宿題への取り組みの相違は、生徒のモチベーション、科目の特質、学校段階、宿題の難易、教師の考え方、家庭の状況の相違によって生じる。
★諸条件の違いを考えれば、宿題を一律に設定したり、時間を規定したりすることは意味がない。
宿題の出し方
★「学校で宿題をやっていいの」「学校で塾の宿題やっていいの」と聞かれたことで宿題について話し合ったことがある。当時は多様な意見が出た。しかし、学校五日制、宿題の出し方も変わってきた。保護者から流行の教材による宿題を求められたり、進度消化の宿題、生活管理のための宿題などが増えてきた。
★そんななかで、どのような宿題を出すか。内容・難易度・量・調べ方・評価から、そのあるべき方向を探ってみた。
★そのうえで、とくにこれからは、難易度選択の自由がある宿題、個別指導へ開ける宿題、楽しい宿題を工夫したい。
★できれば、人生に残る楽しい宿題を出してほしいと願う。
数学科における家庭学習の充実を目指して
★家庭学習の習慣化を図るためには、宿題として一斉に同じ内容を課す場合と子ども自身が学習の計画を立てて学校や家庭での学習時間と学習内容を決める場合の両面から考えていく必要があるだろう。
★こうした両面を考えているのは、宿題がないと家庭での学習が進められないような子どもになっては困るからである。
★中学生から高学年にかけて、自分で計画を立てて学校での学習を進めたり家庭での学習を進めたりする習慣ををつけていく必要がある。特に、本稿では子ども自身が学習計画を立てて進める家庭学習に焦点を当ててまとめている。
わたしはこんな宿題を出す(小学校国語)
★小学校の国語の宿題の定番といえば「漢字」「音読」と「作文」だろう。宿題指導のコツは二つある。一つは初期の学習法指導をていねいにやることだ。各家庭で一人でやることになる宿題の仕方を、まず教室でていねいにみてやることが大事である。子どもの中には効率的な勉強の仕方をする子もいれば、まったくトンチンカンな勉強の仕方をする子もいるからである。
★もう一つは、家庭学習の習慣をつけるためには宿題開始の時間を決めさせるなどの、時間コントロール法を教えることである。最初は五分くらいから始めて、だんだんながくしていくとよい。
私はこんな宿題を出す(中学校数学)
★数学を学ぶことの楽しさや充実感を味わいながら主体的に学習できるようにするためには、学校での授業の工夫と家庭学習の充実が必要である。
★そのための宿題として、-学習内容の理解を深めたり、技能の定着を図ったりするための宿題 -学習内容をもとに、さらに数学的な見方や考え方を広げたり深めたりするための宿題が考えられる。
★限られた授業時数の中で、多くのことを生徒に伝えることは難しいが、新たな数学の素材を生徒に提供し、家庭においてもじっくりと演習問題に取り組んだり、考えたりする機会をもたせたい。
★そのためには、教師自身がさらに教材研究を深め、生徒にとって取り組む価値のある宿題を出せるようにしたい。
私はこんな宿題を出す(中学校英語)
★”やらされる”「宿題」ではなく、”自分の意志で行う”「家庭学習」を、授業を含めたトータルな学習指導の一環として指導する。
★やる気を育てる授業と、学習発達段階にあった家庭学習指導が大切である。
★入門期の学習習慣形成、妥当性のあるノート指導、力を伸ばすための長期休業中の学習指導が鍵である。
宿題を学校でコントロールする
★平成十四年に文部科学省から出された「学びのすすめ」には、「確かな学力」の向上のため、「適切な宿題や課題など家庭における学習の充実を図ることにより、学ぶ習慣を身につける」としている。もちろん宿題には、学校における学習を補完する目的もある。
★これまで各教科でばらばらに出されていた宿題について、教官研究会で話し合った。その結果、各教科で宿題の意味や目的を見直し、子どもにとって過剰にならないよう、基本的に宿題を出さない教科を決めるとともに、長期休みの宿題は学年手動で分量と内容をコントロールすることになった。
連載
諸外国の初等中等教育改革の動向(1)ドイツ 学力と教育政策-ドイツにおけるPISAの影響から | 玉川大学助教授 坂野 慎二 |
---|---|
小学校算数の基礎・基本の指導と評価(24) 授業で大切にしたいこと(7)-新しいことが見えてくる楽しさ | 元筑波大学附属小学校教諭 正木 孝昌 |
新しい教育評価の動向/主要論文の概説(10)P・ブラックほか 評価の再定義:Assessment in Educationの最初の十年 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
豊かな心と確かな学力の育成(9) 実践報告を読んで | 教育臨床研究機構理事長 中野 良顯 |
どうする?小学校英語(14) 小学校の英語教育では子どもの何を育むべきか? | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
だんわしつ | 関西大学教授 安藤 輝次 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |