月刊誌 指導と評価

2001年 5月号
  1. 2001年 5月号 Vol.47-5 No.556  定価:450円
特集
新指導要録のポイント(4) 総合所見及び指導上参考となる諸事項
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特集

「総合所見及び指導上参考となる諸事項」欄の意義と役割

東京学芸大学教授  児島 邦宏

★この欄は、生きる力は全人的な力であることから、児童生徒の成長の状況を総合的にとらえるという主旨から新設された。

★記載する事項は、各教科等の所見、行動の所見、進路指導やその他の指導の参考となる事項、これらを合わせた総合的所見など六項目に及んでいる。

★この欄の評価は、教師の指導の改善、子どもの生きる力の確立、教師と保護者の子育て支援体制に役立てられ、個神内評価が求められている。

★この欄の情報開示にあたっては、客観性や信頼の確保が強く求められる。そのためにも、評価規準や評価法の開発、教師の評価力量の向上、保護者への説明が重要である。

「各教科や総合的な学習の時間の学習に関する所見」とその記入の仕方

文部科学省初等中等教育局視学官  宮川 八岐

★新しい指導要録の形式では、これまでの各教科、特別活動、行動の記録の所見、指導上参考となる諸事項を「統合すること」としたことから、平成十四年度からは各教科や総合的な学習の評価の所見もその欄内に記入することになろう。したがって各学校においては、児童生徒の成長の状況を総合的にとらえる工夫についての研究に取り組む必要があるが、総合所見欄は特別活動をはじめとする他の評価項目も多いため、十分評価資料を収集し、児童生徒の顕著な特徴の的確な把握につとめる必要がある。

★各学校は、「通知」等を踏まえ、今年度中に個神内評価の在り方をはじめ総合的に評価する実践的な力量を身につけさせるための研究に積極的に取り組みたいものである。

「特別活動に関する事実及び所見」とその記入の仕方

栃木県教育委員会児童生徒指導推進室長  須藤 稔

★今回の指導要録改善の基本方針は、従前からの特別活動の評価の在り方を変えるものではないが、日頃の指導と評価を確認し、評価改善の契機とすることが大切。

★特別活動における評価の対象・内容は、個々の児童生徒の資質・能力や態度の発達が中心となるため、特別活動で育てる「力」を体系化し、それにそった評価方法を工夫するなど、指導と評価の一体化を図ることが必要。

★「事実及び所見」の記入については、評価者(教師)の主観や児童生徒の表面的な活動にまどわされることなく、多面的な評価の観点を作成し、総合的かつ客観的な所見になるよう工夫する。

「行動に関する所見」とその記入の仕方

東京都教育研修センター教授  立中 幸江

★行動は「生きる力」の源である。「行動の記録」は、各教科・道徳・特別活動・「総合的な学習の時間」その他学校生活全般にわたっての行動状況を評価し記録するものであり、「生きる力」の記録である。この生きる力の源となる評価は、指導と評価の一体化という点からも、重要視していきたい。

★所見欄は、統合されて記入することとなったが、取り上げ方が弱まるということがあってはならず、健全育成の上からもしっかり記入し評価していく。

★記入にあたっては、児童生徒の良さを取り上げる「個神内評価」を基本とする。

★社会の要請に基づいて、情報公開を視野に入れた所見欄の記入を心がける。

「進路指導の記録」とその記入の仕方

埼玉県上尾市立瓦葺中学校教頭  小林 三智雄

★新指導要録においては、児童生徒の成長の全体像をとらえられるようにする趣旨から、「進路指導の記録」は「総合所見及び指導上参考となる諸事項」欄に合わせて記載されることになる。また、学級活動の(3)の活動内容に従来(2)で示されていた「学業生活の充実」が加えられた。

★しかしながら、生き方指導としての進路指導と、プレースメントサービスとしての進路指導は別物といった、ときに全く違うベクトルを示す「進路指導二極論」の風潮が現場にはまだ根強い。「主体的な進路選択」と「学業生活の充実」は車の両輪という基本的な考えに立って、指導と評価の一体化をめざした進路指導の取り組み、指導要録への記載のポイントを考える。

「特徴・特技、学校内外における奉仕活動、表彰を受けた行為や活動」とその記入の仕方

栃木県南河内町教育委員会指導主事  綱川 浄

★各学校では、所見欄等が統合された趣旨を十分認識し、この欄に記述するいくつかの内容について十分検討する必要がある。

★その子のよさや可能性が、その子なりにどのように伸びていったか(縦断的)や、どのようなことが優れているか(横断的)などを積極的に評価する。

★学校の活動の中で得られる様々な評価情報を指導要録にどのように記録するか、その関連を示す評価計画が必要である。

★評価データの収集やそれらの事務処理が、できるだけ簡単にいくような補助簿の工夫が必要。

★指導要録への記入にあたっては、教師がこの子にとってすばらしいとおもっていること、ぜひ伸ばしたいことを子どもへの思いを込めて記入したい。

「知能・学力等について標準化された検査の結果」とその記入の仕方

文教大学学園長・応用教育研究所所長  石田 恒好

★知能・学力等について標準化された検査の結果は、すべてこの欄に記入する。

★標準検査の結果が、資料として必要な理由は、学力低下問題、「評定」を正す、個性重視の教育、進路指導、「生きる力」の育成など広範にわたっている。

★必要な事情が広範にわたるので、知能検査、学力検査はぜひ、行動・道徳性検査、スポーツテスト、中学校では進路指導用検査など幅広く実施して、結果を記入したい。

★スペースに限りがあるので、主要なものを記入し、記入できなかったものは、各児童生徒のファイルを作って記入・蓄積し、活用したい。

連載

生きる力を育てる評価(7)   「生きる力の評価-情意・行動面-」 応用教育研究所理事長・筑波大学名誉教授
櫻井 茂男
新教育課程における評価の課題(6)   「高校の問題-評定の絶対評価と大学入試-」 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
教科の基礎・基本   <小学校社会科>(2) 東京都江東区教育センター
落合 静男
パフォーマンス評価の実践的研究(2)   「教科ごとのパフォーマンス評価」 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
新しい教育評価の動向   主要論文の概説(1) 「R・サドラー」 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
総合的な学習の実践と評価(1)   「こうすれば総合的な学習は創れる」 関西大学教授
安藤 輝次
だんわしつ (財)応用教育研究所所長
辰野 千壽
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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