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特集
いじめを乗り越える学級を築こう、4月から
★いじめは、被害者-加害者の二者関係だけではなく、集団の問題として向き合う。
★いじめが起きにくい、たとえ起きても、その解決へのプロセスが成長につながる学級づくりをめざそう。
★学級開きからはじめる「魅力ある学校づくり」による未然防止、いじめが発生しやすい時期に計画的に実施するアンケートによる早期発見と的確な早期のチーム対応、予後の見守り、先行研究を踏まえた防止教育の継続的な実施が重要である。
出会いに全力を尽くし、魅力ある学級へ!
★いじめのない魅力ある学級づくりの方策として、『居場所』、『絆』、『安全な環境』の3つの観点を踏まえ、キラキラプログラムⅠから学級開きと授業開きを提案する。
★年度当初は、教師がリーダーシップをとり、グループサイズや時間に配慮し、子どもへの負担を減らす配慮が必要である。子どもと対話は深めながら、教師の想いや考えを打ち出すことで、いじめが起こったときに子どもが教師に相談できる関係をつくり出す。
★魅力ある学級づくりを通して、教師が外からの歯止めとなることで子どもが安心を感じられ、仲間づくりで培った絆が内からの歯止めになる学級をめざす。実施には、練習が必要であり、教師自身が構成的グループエンカウンター(SGE)を体験しておくことが役立つ。
包括的学校支援モデルでいじめを予防する
★世界の生徒指導は、予防・開発的な取り組みを含む包括的学校支援モデルが主流となっている。4月の生徒指導やいじめ対策も、そのモデルの中に位置づけられる。
★子どもたちの満足度が高い学級経営では、いじめは発生しにくい。学級満足度の高い学級経営とは、ルールがあり、友達がいることである。友達づくりでは、SGEやピアサポートが有効である。
★ルールづくりは、学級目標と連携したアメリカで開発されたPBISを活用すると有効である。
★始業式からの黄金の一週間で学級経営が決定されると言っても過言ではない。4月に人間関係づくりと、PBISを活用したルールづくりをすることがいじめ予防につながる。
感情共有のサークルタイムと共感を意識した教員のかかわり
★不登校経験者が8割を超える小規模の通信制高等学校のサポート校兼中学生対象のフリースクールにおいて、いじめのない学級を作るためにできる仕組みとして、加害をしようと思わない個人を育て、もし起きたとしても守れる集団を育てることを目指して実施している、3種類のサークルタイムと教員の基本姿勢を紹介する。
★とくに、4月当初に優先的に実施するとよいのは、感情共有型のサークルタイムである。また、教員は共感的に生徒と関わることである。これらによって、粗暴で攻撃的な生徒や、注意喚起行動をしがちな生徒といった、いじめ加害者になりうる生徒の加害行為予防につながる。
いじめを生まない学級社会づくり-特別活動の活用を中心に-
★特別活動は、内容の特質からも集団での活動を通して自主的・実践的な態度を育てる好適な内容となっている。生徒指導の中心的な役割を担っている活動であると言えよう。いじめは当事者どうしという個人の問題ではなく、彼らを取り巻く学級社会の問題であり、集団における関係性のあり方を高めるためにも特別活動を活用したい。学級活動や児童会・生徒会活動など、小集団から異年齢集団と、さまざまな活動を通して他者とのかかわりを通して学びながら、いじめを生まないための学級社会をつくりたいものである。
特別活動を通じて学級の土台をつくる
★多忙化解消の波に反する道徳、外国語の教科化、プログラミング教育の必修。慌ただしい教育現場で、いま本当に見直すべきことは何なのか。いまこそ特別活動の意義について考えていく必要がある。
★新しい児童との出会いまで、ごく僅かなこの期間に1年間の特別活動の大体が決まっていく。「人間関係形成」「社会参画」「自己表現」の資質・能力を育成するために年間を通してどのような特別活動を設定していくのかが重要である。
★児童の成長をより確かなものにしていくためには、教育現場の「当たり前」に対して疑問を抱き、よりよいプロセスを見いだしていかなければならない。
教室の差別構造を壊す
★子どもの世界には、ときに、差別構造が存在することがある。授業で活躍できる子は、活躍できない子よりも、権力を強めてしまう。そして、権力の強まった子と、そうでない子の階層構造ができてしまうことがある。そんな学級では、いつのまにか、いじめが生み出されてしまう。
★そこで、教師が「意図的に」、差別構造を壊す手だてを打たなくてはならない。では、4月に学級担任としてどういう手だてを打っていけばよいのだろうか。まず子どもに理解させたいのは、「いま現在のできる・できないの差は微々たるものであり、今後の努力で決まる」ことである。そして、努力をすればできるようになるという事実をつくり、さらに、いまの実力差は逆転可能であることと、できるということにはさまざまな考え方があることを示したい。
温かなつながりを生み出す授業づくり-小学校外国語(外国語活動)を中心に-
★新学期、子どもたちに「どんなクラスにしたいですか」と尋ねると、どの年でも「楽しい」「いじめのないクラス」という答えが上位にあがる。子どもたちは、教室が楽しくて安心できる空間であることを求めているのである。学級開きなど、私たち教員はさまざまな工夫をして子どもたちにとって安心できる空間づくりに力を注ぐ。
★しかし、学校生活の大部分を占めるのは「授業」である。「授業」の中に、子どもどうしの温かなつながりを生み出すこともまた、私たちの大切な役割である。本稿では、いよいよ1年後に全面実施をむかえる外国語(外国語活動)の授業づくりを中心に、「いじめのない学級をつくる」ための方策について紹介する。
連載
巻頭言<心のつよさ>考 | 早稲田大学名誉教授 菅野 純 |
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「教師力」アップセミナー子どもとともに成長する教師をめざして(1)出会い・学びのネットワークづくりと人に対する敬意 | 創価大学教職大学院准教授 大関 健道 |
QUを活用したPDCAサイクルで教育実践の向上をめざして(1)カリキュラム・マネジメントで教育実践の向上をめざす際のポイント | 早稲田大学教授 河村 茂雄 |
続・説明文・意見文を書くことの指導(2)「批評読みとその交流」における「書くこと」の指導 | 白百合女子大学教授 河野順子 |
木下是雄と「言語技術の会」ルネッサンス(1)木下是雄と「言語技術の会」とは | 文部科学省教科書調査官(体育) 渡辺哲司 学習院高等科教諭 松濤誠之 |
新しい教育評価の動向(56)J・フラベル「メタ認知と認知活動のモニター」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
教育相談はこう学ぶ!-全国各地の特色ある教育相談研修(1)教職員支援機構の教育相談指導者養成研修 | 教職員支援機構つくば中央研修センター 猪股智秋 |
通常学級の実践から学ぶ特別支援のヒント52(1)優れた教育技術を共有・継承するために | 埼玉県立大学准教授 森 正樹 |
こうすればうまくいく!スペシフィックSGE(2)すき間時間を使い「簡単、短時間、効果あり」の三拍子そろった予防的・開発的援助-時間がないからできたSGE- | 北海道札幌市立札幌平岸高等学校教諭 澤尻知徳 |
公認心理師の資格をもつガイダンスカウンセラーの実践(1)公認心理師試験合格体験記 | 東星学園小・中・高等学校校長 大矢正則 |
講座キャリア心理学-キャリア発達を支援する-(1)キャリア心理学とは | 労働政策研究・研修機構副統括研究員 下村英雄 |
成熟した学習者をめざして(12)課題を見つける | 労働政策研究・研修機構副統括研究員 下村英雄 |
思考・判断・表現の評価と指導<中学校>高校入試問題の分析から(6)〈国語科〉論述式問題にかかわる諸問題(1)-採点の信頼性について- | 「指導と評価」編集部 「指導と評価」編集部 |
本の紹介(1)『日本語の思考法』 | 「指導と評価」編集部 「指導と評価」編集部 |
教育の窓(40)学習における「エンゲージメント」とは | 応用教育研究所理事長・筑波大学名誉教授 櫻井 茂男 |