月刊誌 指導と評価

2018年 4月号
  1. 2018年 4月号 Vol.64-4  No.760  定価:450円
特集
学級で生活する
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特集

学級で生活する・学ぶ

名古屋大学大学院教授  中谷 素之

★子どもにとって学級は、多大な時間を過ごす生活の場でもある。教師が、授業だけでなく休み時間や教科外の時間を含め、どのような教室環境をつくるのかが、学びの背景を構成する。
★教室の学びの構造(教室の達成目標構造)は、①課題の面白さや新奇性、②子どもの学習への参加や権限、③学びのプロセスや努力の評価、という三次元からなる。これらの三つをともに促し高めることが子どものやる気を促す。
★教室に①向社会的目標構造(思いやりや配慮)と、②規範遵守目標構造(明示的・暗黙の、適切なきまりや規範)を構築することは、学習への興味や主体的な取り組みに結びつく。そのために、子ども間の相互尊重と自律性を中心とした学級づくりが重要である。

小学校での児童どうしの人間関係づくり

東京都台東区立平成小学校特別支援教室専門員  朝日 朋子

★四月、新しい学級での生活がスタートするにあたり、よりよい人間関係づくりを意図的に進める手法を紹介したい。
★構成的グループエンカウンターは、児童どうしのかかわりやコミュニケーションを豊かにする「面白くてためになる」手法である。様々な課題(エクササイズ)が、小学校向けにも研究・開発されている。特に、新学期早々の学級活動では、「学級開き」という位置付けで実施すると効果的である。
★構成的グループエンカウンターの活用は、児童どうしの対話力を向上させるにも絶好の手法であり、新学習指導要領の目指す「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」を促進させる原動力になりうるものと考える。

中学校での生徒どうしの人間関係づくり

長野県松本市立明善中学校教頭  輿 幸雄

★構成的グループエンカウンターのエクササイズは、疑似空間や教室等のせまい空間で行われることが多い。構成的グループエンカウンターと同様の効果が期待されるものに、対人関係ゲーム・プログラムがある。これは、比較的広く空間で行われる。
★中学校に入学したばかりの学級や新年度クラス替えを行った学級では、早急に現実の学級空間の中で関係づくりを進める必要がある。そこで、構成的グループエンカウンターや対人関係ゲーム・プログラムのエクササイズと、学校や学年行事等の体験活動を組み合わせた、関係づくりのプログラムを提案する。

学級を観る-スクールカウンセラーによる学級適応支援-

愛知教育大学准教授  三谷聖也

★スクールカウンセラー(以下、SC)が学級を観るためには準備が必要である。学級に入る前に児童生徒たちからSCがどう観られているかを自覚し、児童生徒とのかかわりが「悩みを相談する」という一義的な意味にとどまっているならば、それを多義的になるように拡大しておくという準備である。実際にSCが学級を観ることになったならば次の三点をおさえておきたい。
★個ではなく学級全体に寄り添う立ち位置で学級全体に参与しながら観察すること
★単回の観察や支援者でありつづける位置ではなく、五回程度の縦断的参与観察を通して所見をまとめ還元していくこと
★持続可能な適応支援のために教師の予防的かかわりを抽出し、ひきつづき資料として残すこと

あたたかい学級をつくる

富山県公立学校教諭  小西一博

★「あたたかい言葉かけ」を実践する方法として、ソーシャルスキル・トレーニングによる介入例を紹介する。ソーシャルスキル・トレーニングとは、効果的な対人行動や社会的スキルを積極的に学習することで、対人関係などの問題を解決しようとする技法である。小西(2016)は、この技法を用いて、不穏な雰囲気のある学級に対して、あたたかい言葉かけの促進に向けた介入を試みた。その結果、あたたかい言葉かけをし合う友達の数やあたたかい言葉かけの種類を増やすことができ、学級の雰囲気がよくなった。児童がソーシャルスキル・トレーニングを通して、あたたかい言葉かけの仕方を学ぶことで、学級集団の改善を図ることが期待できる。

子どもたちの成長の先にある「理想の学級」をめざす

大阪教育大学附属平野小学校主幹教諭  四辻伸吾

★「学級崩壊」などの諸課題の原因の一つに、「子どもと教師の関係性の中に潜むズレ」があげられる。子どもたちと教師が思い描く「理想の学級像」には、双方で大きな相違は見られないが、現実場面への対応に焦点を当てたときに「ズレ」が生じると考えられる。目の前の子どもたちの行動や態度は、その場面だけでとらえると「理想」からはかけ離れたものにうつるかもしれない。しかし、「時間軸」のもっと先にある子どもたちの「成長」した姿を「理想」としてとらえたとき、目の前の子どもたちの行動も実はその「理想」に向かう姿の一つとして考えることができる。子どもたちが自ら主体的に「理想」に向かうために、教師はその一助を担う必要がある。

学級担任の困り感をふまえた支援

栃木県高根沢町立東小学校教諭  加藤恵子

★「特殊教育」から「特別支援教育」へと転換して十年がたったが、支援を必要とする児童はもちろん、支援を必要とする児童が在籍する通常の学級(以下、通常学級)の担任自身が、多くの困難をかかえているという現状がある。そこで筆者は担任を支援するための有効な方法を考えるため、小学校教員へのインタビューを行った。その結果、適切なタイミングで適切なサポートを周囲から受けることが、担任の自己効力感を高めることがわかった。また、このようなサポートを効果的に機能させるためには、困っていることや悩んでいることを外に出せる「開かれた文化」を創り出すことが必要である。

学級でのトラブルに対処する

山形県長井市教育委員会幼保小等連携専門員  鈴木英子

★学級での生活にトラブルはつきものです。私たち教師は、トラブルを子どもたちからの何らかのサインととらえ、子どもたちが自力で解決できるよう、その能力を信じ、ときには背中を押し、ときには一緒に考えて寄り添うことが大事なのではないでしょうか。本稿では、「勇気づけ」の基本スタンスでトラブル対応にあたった筆者自身の学級担任としての取り組みの一端を紹介します。

連載

巻頭言*映画館と教室 山形県長井市教育委員会幼保小等連携専門員
鈴木英子
QUを活用したPDCAサイクルの推進(1)新学習指導要領の理念の実現のキーとなるカリキュラム・マネジメント 早稲田大学教授
河村 茂雄
「教師力」アップセミナー(1)教師としての生き方・考え方 帝京平成大学教授
白鳥 信義
特別寄稿*客観的資料を生かしたカリキュラム・マネジメント-KKD(勘・経験・度胸)の学習・生徒指導からの脱却を! 横浜市立中川西中学校校長
平川理恵
説明文・意見文を書くことの指導(1)小・中・高校から大学までの「書くこと」の指導をつなぐために 筑波大学教授
島田康行
『きめる』学びで知的にたくましい子どもを育てる(1)「きめる」学びとは何か 明星小学校副校長・前筑波大学附属小学校副校長
夏坂 哲志
新教育課程の評価を考える(9)外国語の評価基準案:「聞くこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
パフォーマンス評価の実際(2)子どもの科学的思考力を育てるための『自由記入型実験シート』と学習意欲を育てるための『ルーブリック』-形成的評価の機会としての活用 立教英国学院
羽田 徳士
特別支援教育に生かすペアレンティング(1)遺伝素因に打ち勝つペアレンティング 文教大学教育学部特別支援教育専修教授・小児科専門医
成田奈緒子
構成的グループエンカウンター再入門(2)学級開きは安全・安心な居場所づくりから-一人一人の子どもを育むために- 元公立小学校教諭
大木百合江
コミュニティにおけるガイダンスカウンセリングの展開(1)スクールカウンセリングとガイダンスカウンセリング 文教大学教育学部教授
会沢信彦
これからのキャリア教育(1)キャリア教育登場の経緯と背景 筑波大学教授
藤田 晃之
講座カウンセリング心理学(1)カウンセリング心理学の定義と実体と限界 NPO法人日本教育カウンセラー協会会長
國分康孝
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