月刊誌 指導と評価

2014年 4月号
  1. 2014年 4月号 Vol.60-4 No712  定価:450円
特集
これからの道徳教育
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特集

道徳教育の一層の充実を期して

帝京大学教育学部教授  赤堀博行

★道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行われる道徳教育は、道徳性を養うことを目標としている。道徳性は、道徳的な心情や判断力などの内面的資質と、道徳的行為や道徳的習慣などの道徳的実践としてとらえることができる。各学校においては、学校における道徳教育の在り方を再確認し、校長の方針の下、子どもの実態や学校の実情を勘案して、目指す子ども像を定め、道徳な内容を重点化し、学校独自の道徳教育を行わなければならない。
★学校における道徳教育は、借り物の計画などでできるものではない。道徳教育を充実させるためには、まさに学校のカリキュラムマネジメント力が問われるのである。

学校における道徳教育はどこへ向かうのか

金沢大学教授  松下良平

★学校における道徳教育には、生活の多様な場面でなされる道徳教育を補足する役割と、国家に資する人間を育成する役割がある。そのような道徳教育の行く先には二つの分岐点があり、われわれに選択を迫っている。第一は、道徳教育を特定の時間に行うのか、それとも学校生活の全体を通じて行うのかという問いをめぐる選択である。第二は、国家に必要なのは規範教育か、それとも市民教育かという選択である。どちらの道を選択するかにより、道徳教育は大きく異なるものになろう。

道徳教育の実践-読み物教材を使った他者との学び合い

神奈川県川崎市立宮崎中学校教諭  町田 憲二

★「教科化」云々にかかわらず、現在の日本の教育には道徳的側面が重要である。単なる知識を得て、入試合格をゴールとする風潮を打破し、これからの日本国を担う、心身ともにたくましい子どもたちの教育を目指すべきである。しかし、道徳教育は、思春期の中学生相手に難物である。短絡的に「これは善い」と教えるのではなく、第三者的に、価値判断しやすい「読み物教材」を入口とし、最終的に、「私はどう他者と生きるのか」、という問いを問う授業が有効である。

道徳教育の実践-映像教材の活用を通して

千葉県習志野市総合教育センター指導主事  松田憲子

★「道徳の時間」の充実には、読み物教材に加え、心に響く映像教材の活用が効果的。
★インターネットで「NHK for School」の活用がおすすめ。「道徳ドキュメント」「時々迷々」等の番組が視聴でき、ワークシートや画像・指導案をダウンロードできる。
★「道徳ドキュメント」の長所は、「訴える力が強い」「わかりやすい」「言葉・表情・声から思いが伝わる」「情報量が多い」等。短所は「小学生にむずかしいものも」「話し合いの時間が短くなる」「展開の工夫が必要」等である。
★被災地の人々の思いを描いた「ふるさとの絆をもう一度」や授業参観で好評の「プロを夢みた野球少女」、戦争関連の「悲しみを繰り返さないために」等は特におすすめ。

自立して生きていくための基盤となる豊かな心をはぐくむ道徳教育

埼玉県越谷市教育委員会主任指導主事  正籬洋子

★幼・小・中・高等学校連携の第一歩は、発達段階の異なる他の校種の様子を知ることから始まる。道徳教育推進校を中心とするさまざまな取組により、学校・家庭・地域社会が連携した道徳教育の実践の輪を市内に広める。
★道徳の時間を要として、全教育活動で取り組む道徳教育の実践。
★授業づくり・心づくり・規範づくりの三つの視点から「生きる力」をはぐくむ道徳の時間における言語活動の充実を図る。

道徳教育の実践-品川区の「市民科」

東京都品川区立芳水小学校長  村尾勝利

★子どもたちの社会性・人間性の育成において、道徳は中軸となる重要な学習である。
★道徳教育の中核的な役割を担う道徳の時間において、大切なことは内容ではなく方法である。
★道徳教育を補充・深化・統合することは、道徳の時間のみではむずかしい。
★学んだこと・教えられたことを日常において実行できるという知行合一の視点が必要である。
★「自己の生き方」という共通目標をもつ道徳、特別活動、総合的な学習の時間を育成すべき観点で有機的に統合することで、より効果的な育成を図る。



これからの教員に望む道徳教育

東京都教職員研修センター  東京都教職員研修センター

★これからの教員には、心の豊かな子どもたちを育み、道徳的価値を自覚させる道徳教育に対する確かな指導力が求められる。東京都教職員研修センターでは、「東京都教育ビジョン(第三次)」を受け、道徳心や社会性を身に付ける教育の推進に取り組んでいる。また、OJT・Off-JT・自己啓発といった人材育成の三つの手段の関連を図った研修運営を推進し、教員採用前の段階においても道徳教育の基本的な理解や具体的な指導法等に関する研修を行っている。これらの取組を着実に実施していく中で、一人一人の教員が指導力を身に付け、授業に自信をもち、優れた指導を工夫することを望んでいる。

連載

21世紀をよりよく生きる資質・能力の育成(1)ポスト近代社会が求める人間像と学力像-背景と論点 京都大学准教授
石井英真
感度を高める言葉の教育(1)言葉の「なぜ」を考える 京都大学准教授
石井英真
学級づくり実践セミナー(1)いま、計画的な学級づくりが求められている 早稲田大学教授
河村 茂雄
教育・心理検査を上手に活用しよう(1)教育・心理検査の特長-標準化とは- 法政大学教授
服部 環
応用行動分析学入門(1)応用行動分析学とは 教育臨床研究機構理事長
中野 良顯
新しい教育評価の動向(30)/Foster.C 「数学教育における還元主義に抗して」 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
評価を指導に生かす(5)読みの質的な深まりに着目したルーブリックを指導に生かす②小学校中学年 鳴門教育大学附属小学校教頭
宮本 浩子
小学校算数の発展・応用を学ぶ授業をつくる(20)4年 青山学院大学教授
坪田 耕三
小学校理科の授業づくり(25)6年A(2)「水溶液の性質」 文部科学省教科調査官
村山哲哉
どうする?小学校音楽の授業(7)音楽科の授業展開の特性を考える 筑波大学附属小学校教諭
高倉 弘光
教育測定・統計入門(25)説明変数に質的変数を含む重回帰分析 法政大学教授
服部 環
学校の法律問題(13)入学式と教員の国歌斉唱義務 日本女子大学教授
坂田 仰
だんわしつ/愛着のある継続飼育体験で命を実感させる 全国学校飼育動物研究会顧問
中川美穂子
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