月刊誌 指導と評価

2010年 4月号
  1. 2010年 4月号 Vol.56-4 No.664  定価:450円
特集
教師力を高める
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特集

教師力とその向上

(財)応用教育研究所所長  辰野 千壽

★今日、教師力ということばがよく用いられ、その向上が求められている。教師力とは教師としての役割を効果的に遂行する能力である。
★教職の専門性について、教師の資質能力、教師の使命感と実践的指導力、教師の威光の面から考える。
★教師に必要な基本的資質は、①子どもが好き②勉強が好き③教えることが好きの3つである。
★指導力については、生徒理解能力、学習指導能力、生徒指導能力、学級経営能力、カウンセリング能力、地域・保護者との連携能力などの面から考える。
★教師の養成・採用・研修の役割と評価の役割についても述べる。

授業力、授業の技術-小学校

青山学院大学教授  坪田 耕三

★子どもはそもそも魅力ある存在なのだという意識が、よい対応につながる。子どもの動きを見逃さず、子どもの声を聞き逃さず、間髪を入れずにほめ言葉を言い逃さないことが大切である。
★子どもが持っている意欲に寄り添った授業を考える。「考えたい」「知りたい」「やってみたい」という意欲に応じた授業展開の工夫が大事。
★授業づくりの基盤は学級づくりにある。子ども同士が気軽に話ができる学級をつくることが肝要。

授業力、授業の技術-中学校

広尾学園中学校・高等学校副校長 元筑波大学附属中学校副校長  角田陸男

★教師には、授業力(技法)、子どもを慈しむ心、人間的な魅力などが必要だ。
★教科教育の第一義は、人類の知の財産、文化の伝達である。各教科でそのエッセンスは異なる。自然科学は人類の探究心、好奇心、模倣心の成果であり、理科では子どもに内在するそうした心をいかに揺り動かして引き出していくか、が問われる。理科の授業構成は、「導入-展開-発展-高次の展開-観察・実験-結果と考察」が基本となる。
★日々、「教える専門家」をめざす「学びの専門家」でありたい。

子どもと関わる力

聖徳大学大学院教授・同附属小学校長  松山武士

★子どもと関わる力は、子どもにどう関わるかの問題であり、学級経営力、とりわけ、授業力、生徒指導力の問題である。ここでは、関わり力を児童理解力と位置づけ、そのあり方を考察する。
★子ども理解を伴う関わり力の五カ条を提言する。
★子どもの関わり力を高めるには、カウンセリング・マインドも必要である。

子どもと関わる力

聖徳大学大学院教授・同附属小学校長  松山武士

★今の子どもと適切に関わるためには、まず子どもたちの実態を正確に把握し理解しておく必要がある。 
★教師の人間的な魅力と教師役割の魅力は、子どもと関わる力の両輪である。
★いろいろな子どもとの関わりの中で、一人一人の達成感・効力感を満足させることが大切である。
★子どもと同じ目線で話ができることはよいことであるが、指導者であることも忘れてはならない。
★教師自身の人間性を高めていくことが、子どもの人間性を高めていくことにつながる。

学級経営力

山梨県南アルプス市立大明小学校教諭  深沢和彦

★親和的でまとまりのある学級集団では、教育的な効果が大きい。教師には学級づくりの力が求められる。
★教育力のある学級集団に必要な条件とは、学級内にルールとリレーションがバランスよく確立していることである。
★集団が成熟していく過程をふまえて、1年間の学級づくりを見通し、地道な実践を積み重ねていく力が学級づくりの力である。
★学級集団の状態をアセスメントし、ルールとリレーションのバランスに修正をかけながら、退行していく学級状態に対応できる力が学級づくりの力である。

生徒指導力

山梨県南アルプス市立大明小学校教諭  深沢和彦

★生徒指導は、問題が起きた後の問題解決的な指導だけではない。むしろ、予防的開発的に、計画的に行うものである。リアクティブな(治す)生徒指導からプロアクティブな(育てる)生徒指導へと主流を移す必要がある。
★いずれの場合も、アセスメント=児童・生徒理解が大切である。それも個人と集団のアセスメントをすることだ。多用なアセスメントをすることにより、予防的開発的生徒指導の内容が決まる。このプログラムを計画的に実施することで、成果がでてくる。
★また、リアクティブな生徒指導では、教師の共通理解とチーム対応が重要である。指導方針の共通理解とチームワークがあって初めて問題行動の早期発見と早期対応が可能となるからである。

保護者対応力

山梨県南アルプス市立大明小学校教諭  深沢和彦

★保護者対応力の基盤にあるのは、「保護者はパートナー」との認識と、気持ち(心理的事実)は受容し、客観的事実には毅然と対応する姿勢である。
★すべての教員が身に付けなければならない基本的対応力はコミュニケーション力(カウンセリング力・コーチング力)である。
★リーダー的役割を担う教員には、これにコーディネート力、コンプライアンス力、コラボレーション力が加わる。さらに、管理職はコンサルテーション力とリーダーシップ力が必要となる。  

学校として教師を育てる

東京都品川区立大井第一小学校長  大島久幸

★教員の世界もスムーズに世代交代をしなければならない。新旧の引き継ぎをするための研修の内容や仕組みを考える必要がある。
★制度や仕組み内容を変えただけでは、教育は、教師は変わらない。意識を変えることが近道であり効果的である。
★教師を育てるとは、学校力を高めることである。組織的に日常的に行なわなければならない。すなわち、OJTである。
★教師の研修は、自校で単独でなく近隣校と連携することにより幅が広がる。
★教師を育てるための指導者を育てることが必要である。

連載

坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(46) 小学校五年、小数のわり算 青山学院大学教授
坪田 耕三
これからの国語科教育(1)新学習指導要領による新しい国語科教育 東京女子体育大学教授
田中洋一
これからの理科教育をどうするか(7)中学校一年「身の回りの物質」 筑波大学附属高等学校講師・元筑波大学附属中学校教諭
荘司 隆一
これからの学習評価(1)これからの学習評価の論点 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
教育・心理検査入門(1)教育・心理検査とは 法政大学教授
服部 環
第三回全国学力調査結果を分析する(4)中学校国語 京都橘大学教授
北原琢也
小学校英語活動のポイント(13)「外国語活動」におけるDo`s and Don`ts-その1 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長
渡邉 寛治
だんわしつ/心の雨の日をどう過ごすか? ヒューマン・ギルド代表
岩井俊憲
ひとりごと/家庭訪問と並行して 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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