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特集
学校評価の意義と課題
★学校評価は、これまで繰り返しブームを呼んできた。しかし、今日の学校評価はこれまでとは異なり、学校に強く実施を迫るものとなっている。それだけに学校は、自らの発意に基づいて、学校評価への取り組みを再構成する必要がある。その際の最大の観点は、「学校組織開発に向かう」(学校評価に対する受容的で支援的な学校組織づくり)である。
★その観点が生じるには、問題を問題として捉える認識が必要である。その認識のスイッチは、学校や個人の内面からすると「危機認識」であり、機能的には「応答的リーダーシップ」である。そして、これらによって生まれた力を束ねたり新たな力を解発して行くのが、「本音で語り合う協議の場」である。
諸外国の学校評価・学校参加の現状とわが国への示唆
★学校評価システムを確立させている諸外国の事例から、学校評価システムを確立・維持させていくための視座となる共通課題として、
1.学校自己評価の評価領域と合致する、年間もしくは数年にわたる学校教育に関する実施計画の作成
2.外部評価における「専門性の確保」
3.学校自己評価と外部評価の関連性の強化
4.評価結果に基づく専門的な支援体制の確立 を 揚げた。
★「学校の評価システムの確立」とは、学校自己評価や外部評価の実施の義務化が最終目標ではない。学校自己評価の結果を学校改善に結びつける継続的な「学校経営-評価-支援-学校改善」サイクルを定着させることが重要である。
わが国における学校評価の現状
★制度化が急速に進んでいる。学校評議員精度の普及と絡んで、外部評価や結果公表を促す動きが加速してきている。また、手引き書づくりもさかんになされ、基本的な考え方が示されている。
★ただ、「学校評価」をある一定の期間終了時に実施する「評価シート」そのものをもって捉え、必ずしも形成的な評価にはあまり関心が払われていない。また、研修も普及してきているが講義中心のものが少なくなく、受講者の理解を必ずしも深めるものになっていない。
★そのため、学校ではいまだ従来の取り組みから脱せられずに、形骸化の危険を抱えている。研究者がその専門的な知見をもとに、学校の実践にも深く関わり、実際的な取り組みを支援していくことが求められる。
特色ある学校づくりと学校評価-高校-
★これからは学校が明確に教育目標を打ち出し、目標に向けての取り組みに対する自己評価・外部評価をもとに改善を加えていく、学校の自主性・自立性が求められる。
★子供や家庭、地域の方を外部評価者として捉えるのではなく、学校のために力を「借りられる」存在、共に学校をつくっていく仲間であるという意識をもとことが必要になる。
★それぞれの学校が個性をもち、特色づくりを進めるためには、取り組みを常にふり返り、改善を加える必要がある。そこでは学校評価が大きな意味をもつ。
大阪府における学校評価の取り組み
★大阪府における学校評価(学校教育自己診断)は、学校教育計画の達成度を点検することによって、教職員の自己評価と児童生徒や保護者の評価との「ずれ」を発見し、改善に生かすことが大切である。
★自己診断の結果は、児童生徒や保護者にフィードバックし、学校改善の方策を明らかにするとともに、学校協議会(学校評議員制度)に診断結果と改善方策を提示し、外部の意見を求めることが大切である。
★評価・育成システムは、学校の教育目標や教育計画を達成するために、個々人が組織における役割を踏まえて、各個人の1年間の教育活動に、計画・実行・点検・改善のPDCAサイクルを導入するものである。
★学校教育自己診断と評価・育成システムを軸にした学校評価の目的は、学校組織の活性化と地域に根ざした学校づくり、児童生徒や保護者のニーズに対応した学校づくりにある。
地区としての学校評価の取り組み-品川区を例に-
★品川区の学校評価は、内部評価(選択される側=学校内部の評価)と外部評価(選択する側=学校外部の評価)とから構成される。学校の主体性を維持しつつ、外部の評価にも十分反応する新しい学校評価をコンセプトとしている。
★外部評価については、各学校に8名程度のモニターが委嘱され、学校教育全般にわたって年間を通じての学校訪問を基礎にして実施される。学力調査もその一環として考えることができる。
学校評価を通して教育の質の向上を図る
★広島県教育委員会より学校評価システム導入モデル事業の指定を受けて調査・研究を行った。
★多様なアンケート方式による1年目の評価活動から、何を変えていけば教育の質の向上が図れるか見えてき、改善策を立てることができた。
★マネージャーサイクルによる「学校評価自己評価表」を作成して、年度当初より評価項目まで考えておけば、より教育の質の向上と学校の活性化が期待できる。
「開かれた学校」の実現を目指して
★「開かれた学校」を実現するために次のような方策を実施した。
ア.評価規準の概略の公開
イ.NRT結果と指導改善策の公表
ウ.評価基準の公開
エ.学校診断アンケートの公表
オ.生徒の授業評価結果の公表
★前述の情報開示を、学校運営評価計画に示す。このことにより長期的方策(次年度からの実施)と短期的方策(次学期から実施)に区別しながら、即時的な方策による改善に向けた取り組みが可能となる。
連載
教育評価再入門(12) 「自己評価の新しい地平線」 | 二葉看護学院ほか非常勤講師 小田 勝己 |
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私が行っている継続可能な目標準拠評価(1) 小学校算数 | 山形県南陽市立中川小学校教諭 網代 良一 |
私が行っている継続可能な目標準拠評価(1) 中学校数学 | 愛知県小牧市立小牧中学校長 玉置 崇 |
新しい教育評価の動向/主要論文の解説(6) P.ブラック&D.ウィリアム | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
標準学力検査を活用した教育実践(10) 「人づくりは学力向上から(1)CRTの活用」 | 岩手県一関市教育研究所学習指導専門員 茂庭 フヨ |
総合的な学習の実践と評価(18) 「連載をふり返ってまとめと今後の課題」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
だんわしつ | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |