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特集
学校と<生きる力> -学校は生きる力を育ててきたか-
★日本が高齢社会になっている状況から、「生きる力」を第二の人生を生きがいをもって生きる力ととらえて、青少年時代の体験との関係を調査した。
★調査から得た結論は、
1.自分が他者の役に立っていると感じているほど、第2の人生での生きがい・充実感が高い。
2.人間関係に関する達成体験が高いほど、生きがい・充実感も積極性も高い。
★したがって、これからの学校教育は、「第2の人生を生きる力」を育てるという点から、子どもに豊かな人間関係達成体験をさせるようにしたい。
★総合的な学習の実践には、生きる力を育む上で注目すべきものが多い。また、基礎学力の習得にも達成体験は必要だ。単純な学力低下論に流されず、頑張ってほしい。
学校の学力と社会で生きる力 ●国語科の場合
★国語科で培うべき学力として、「論理的思考」と「読書力」を取り上げる。どちらも、学校で培われる学力と社会で生きる力とを結ぶ学力として期待できる学力である。
★論理的思考の育成のために、説明文についての読解指導と作文指導の充実が必要だ。読解指導にあっては、話題に流されることなく、文章を通じての理解ということを指導上の要点としたい。作文指導にあっては、言語化の指導や機能語の指導がその要点になる。
★読書力の育成では、態度的学力の育成に重点をおいて、総ルビつきの本を用意するとともに、読書の楽しさを経験させるような読書指導をすることが大事な点である。
学校の学力と社会で生きる力 ●社会科の場合
★現在、社会科授業で育てている学力には、世間一般でいわれている知識過剰との言説とは違って、情報量の不足という大きな欠陥がある。身に付いた豊かな情報なくして、生きる力の形成はできない。
★身に付いた豊かな情報を獲得させるためには、人間の表情が見えるミクロな情報まで書き込まれた書籍をしっかり読むことが重要である。それが暗黙知を形成し生きる力の基盤を形成すること、また、人間理解をさせることにつながることを、価値判断場面の例をあげながら述べた。
★こういったことを実現していくためには、概念探求過程としての授業展開とともに、未来予測、価値判断をさせる場の意図的配慮が重要である。
学校の学力と社会で生きる力 ●算数科の場合
★生きる力は、今を生きることによって育つ。子どもたちは将来の準備のために算数を学習しているのではない。この一時間に算数という場面で生きること。それが算数を学習するということである。
★生きるということは、端的に言えば「対象に働きかけて対象と自分の間に新しい関わりを作ること」である。そして、働きかけるとは、対象を自分の意志で変えたり動かしたりすることである。働きかけるためには、対象の中に個性的な問いをもつことが必要である。
★したがって、生きる力を育てる授業は、どのように子どもたちの問いを引き出し、それを活動に結びつけていくかということが要になる。
★今、私たち現場の教師に求められているのは、理想的な言葉で授業を語ることでなく、子どもたちが本当に生きる授業を現実に追い求めることである。
学校の学力と社会で生きる力 ●理科の場合
★社会人として生きる上で重要な科学的リテラシーには、科学的に書かれた文章を読み、科学的に論述する力が含まれる。しかし、第3回国際数学・理科教育調査の結果を見る限り、日本の中学生の「科学的論述力」は必ずしも高いとはいえない。
★科学的な知識が「生きて働く」ものであるためには、日常的または社会的事象の中に、科学的に探求・解明可能な形で問いを立てる力が必要である。そして、具体的な事実に基づいて妥当な結論を導き、それを他人に伝え、対話する力量が重要である。それが「生活と健康」「地球と環境」「技術」などに関連した問題について、具体的に考え、身近なレベルで判断し、行動できる人間の育成につながる。
学校の学力と社会で生きる力 ●英語科の場合
★社会で生きる力を授業で養成するためには、「先生に教えてもらう」受け身の学習態度から抜け出した「自立した学習者」を育成することが大切である。
★自立した学習者を育成するためには、授業自体の改善だけでなく、授業と家庭学習を有機的に関連づけた学習システムが必要である。
★生徒との関係作りに配慮しつつ、
1.授業
2.家庭学習
3.豊富なインプット
4.好きなもの・好きなことを要素とした「おさらい」 を
大切にしたシステム作りが望まれる。
学校の学力と社会で生きる力 ●保健体育科の場合
★学校体育は、これまでも、生涯にわたる豊かなスポーツライフの実現を目標に掲げ、社会に生きる力を培おうとしてきた。加えて新学習指導要領では「生きる力」の柱として、問題解決力、豊かな人間性、健康の3つがテーマとして掲げられ、これらのすべてに関連して体育科の学習内容や方法のあり方が構想されてきた。
★本稿では、豊かな人間性にかかわった「体ほぐしの運動」について、そして健康問題にかかわった「体力つくり」の方法について検討する。
国際的視野からみた日本の子どもの「生きるための知識と技能」 OECDのPISAの調査結果から
★日本の子どもの「生きる力」は国際的にどのような水準にあるのか。我が国の学力低下論議に一石を投じる国際的な規模の調査結果が、昨年12月4日のOECDから発表された。
★PISA調査は、世界32カ国の子どもたちが「実生活において知識や技能をいかに活用することができるか」を評価した、初めての試みである。
★日本の子どもたちは読解リテラシー、数学的リテラシー、科学的リテラシーにおいて上位に位置していることがわかった。
★本稿では、日本の代表として調査総括責任者を務める立場から、調査の目的や対象、内容、方法及び調査結果の概要を報告するとともに、発表後好評を得ている問題例を紹介する。
連載
教育評価再入門(1) 「教育評価を学ぶ重要性」 | (財)応用教育研究所所長 辰野 千壽 |
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中学校理科の基礎・基本(2)第2分野 | 筑波大学附属中学校教諭 金子 丈夫 |
総合的な学習を支援するメディア活用(1) 「メディア活用の前に大切なこと」 | 大東文化大学講師 苅宿 俊文 |
目標準拠評価の評価規準の体系化の方策(1) 「評価規準の体系化と発達段階の見取り図」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
標準学力検査を活用した教育実践(1) 「学校現場で生かす標準学力検査の理論と実際」 | 岩手県立大学助教授 藤井 義久 |
だんわしつ | 東京都荒川区立第四峡田小学校教諭 善元 幸夫 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |