- トップ
- 指導と評価
特集
教育評価とは-測定・評定・評価・アセスメント
★測定、評定、評価、アセスメントの表す概念が文脈において異なることがある。真正の教育評価を普及させるには用語の正確性を図ることが必要とされる(石田,2017)。
★測定とは量的な属性の大きさを表すために数値を割り当てること、評定とは基準に従って測定結果を数段階で表示すること、評価とは教育的資料に基づいて実態を把握し、改善を図ることである。
★evaluationと区別するためにはassessmentをアセスメントと表記するのがよいであろう。
学力とは-観点別評価の変遷から
★二つの学力観を対比的・対立的に位置づけ、その在り方を議論する手法が積み上げられている。学力を探求する営みと、それを測定・評価する手法の開発が、表裏の関係として変遷をたどりながら今日にいたっている。
★観点別学習状況の評価は、授業に際し、目標を分析的にとらえ、その成果を観点別に診断することによって、きめ細かい学習指導と学習内容の確実な定着のために実施されるものである。
★「メタ認知」と称される自分の思考や行動をとらえる“自らを理解する力”が、「生きる力」として求められる。その育成を図る観点から、観点別学習状況の評価について持続的な運用の工夫と改善が問われている。
測定・評価技術とその具備すべき条件
★学習評価の対象となる学力は直接観測できない構成概念である。その把握にあたっては、学力が反映されていると想定される事象を間接的にとらえることになる。その際、構成概念の強弱に応じて事象に数値を割り当てることを「測定」という。
★具体的な学力を把握する方法は、テスト法、パフォーマンス評価、質問紙法、観察法がある。いずれにおいても測定という手続きが介在するか、その余地がある。
★測定のよしあしを表す概念に、信頼性(尺度得点の安定性)と妥当性(尺度得点の適切さ)がある。両概念ともに、統計学的な指標によって評価される。近年、学校教育の現実をふまえて、新たな信頼性、妥当性の視点が提起されている。
絶対評価・相対評価・個人内評価
★目標準拠評価(絶対評価)を具体化する手順としては、①おもな学習活動での行動目標を三観点に対応づけて評価規準とする、②単元末評価(客観・記述式テスト・質問紙法)等によって、評価規準の達成状況を観点ごとに三段階で判定する、③その判定値の平均を総括的評価の判定値とする、ことが考えられる。
★右の手順による目標準拠評価を主体とし、大集団での集団準拠評価(相対評価)を歪みの有無の照合等の補完的役割として利用する。
★下学年にさかのぼって学力の遅れをとらえる縦断的個人内評価や、優れた力や個性的よさをとらえる横断的個人内評価を子ども一人ひとりの支援に生かす。
資料の記録・保存・管理・活用-指導要録・通信簿・補助簿
★指導要録は、児童生徒の学籍ならびに指導の過程及び結果の要約を記録し、その後の指導の資料及び外部に対する証明の原簿となるものである。個人情報保護の対象である。
★指導要録は、教育的決定や教育評価のための測定、評定、資料作成の基準である。通信簿、補助簿等の教育情報・資料作成の拠りどころとすることである。
★通信簿は、保護者、児童生徒と学校、教師との間の連絡、協力のための代表的な手段である。保護者には協力の仕方を、児童生徒には意欲的に今後努力するよう、記入する。
★補助簿は、確かな証拠であることが求められる。各方面について、客観的で確かな事実とそれを裏づけるデータの収納を心がける。
形成的評価・総括的評価
★形成的評価とは学習の文脈の中で実施され、その結果が教師、あるいは学習者にフィードバックされ、指導や学習の改善に利用される、学習者の能力を高めることを目的とした評価のことである。総括的評価とは学習の文脈から切り離された形で実施され、一定程度の学習を終えた学習者の状況を証明することを目的とした評価である。総括的評価を主目的として実施した評価を形成的評価として利用することは可能であり、必要なことでもある。しかし、形成的評価のために行われた評価の結果を総括的評価に利用することは、学習評価の妥当性の点で問題がある。
アセスメントとは―「真正の評価」論、パフォーマンス評価、ポートフォリオ評価法
★アセスメントという言葉には、子どもたちに育成すべき能力と評価方法の在り方を問い直す考えが込められている。「真正の評価」論は、質の高い教育目標の設定や子どもの評価への参加、真正の文脈における評価を提唱する。パフォーマンス評価は、知識や技能の活用を求めるものであり、採点においては評価指標であるルーブリックが使用される。学習の自然な流れの中で行われるポートフォリオ評価法は、子どもの作品やさまざまな記録を系統的、長期的に蓄積し、それらについて教師や子どもが対話することを通して、全体的個性的な学習の見取りと、子どもの自己評価能力の育成をもたらす。
連載
「学校力」「教師力」アップセミナー(11)教師のメンタルヘルスを改善する | 公立学校スクールカウンセラー(元富山県南砺市立福光中部小学校校長) 水上 和夫 |
---|---|
QUを活用した学級づくりと個別支援(12)教員こそ求められるアクティブ・ラーニング | 早稲田大学教授 河村 茂雄 |
特別支援教育のこれから(12)「縦の連携」を実現するためには | 明星大学教授 小貫 悟 |
教育評価のこれから(12)スタンダード準拠評価と長期的ルーブリック | 滋賀県立大学准教授 木村 裕 |
感度を高める言葉の教育(36)日本語とニホン語 | 国立国語研究所教授 石黒 圭 |
教えて考えさせる授業(7)小学校の実践事例(3)五年体育「ゴール型のボール運動-バスケットボール」 | 神奈川県横浜市立千秀小学校教諭 佐藤 学 |
コンピテンシー・ベイスの授業づくり(8)家庭科の資質・能力育成におけるカリキュラム水準の文脈づくりの意義 | 広島大学教授 鈴木明子 |
小・中学校国語の「書くこと」(12)中学校 書くこと指導のカリキュラム・マネジメント | お茶の水女子大学附属中学校教諭 渡辺光輝 |
先人に学ぶ『数学的考え方』(10)文部省『昭和22年学習指導要領 算数科数学科 編(試案)』 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
アクティブ・ラーニングで社会科授業を変える(8)高等学校の「現代社会」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
アクティブ・ラーニングで子どもの探究心や科学的思考力、表現力を育てる理科学習(11)ジグソー法を生かした理科の授業実践② | 千葉県野田市立福田中学校教諭 柳 勝也 |
英語をどう指導したらよいか(8)高等学校―授業準備の一例 | 筑波大学附属高等学校教諭 江原一浩 |
「評価」の一語一義・同語同義を急ぐべし | 応用教育研究所所長 石田 恒好 |