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特集
戦後日本の道徳の歴史-「特別の教科 道徳」の戦後史からの位置付けと課題―
★戦後の教育は、道徳教育についての明確な指針を示さないままに進められてきたといえる。その後、さまざまな改革がなされてきたが、平成18年に改正された教育基本法においてようやく明確にされたといってよい。つまり、我が国の教育は、幼児期から生涯にわたって人格の完成を目指してなされるものであり(第1条、第3条、第11条)、人格の基盤に道徳性があること(第2条)が明記された。その道徳性の育成を計画的・発展的に行うのが道徳教育であり、その要として「特別の教科 道徳」が設置されるのである。
これからの道徳教育の在り方と評価
★道徳の教科化で、これからの道徳教育はどうあるべきか。まず、道徳教育と道徳授業の目標を統一して、子どもの道徳性を認知的・情意的・行動的側面から総合的に育成すべきである。次に、先進諸国の人格教育やシティズンシップ教育を参考に、実効性のある取り組みにする必要がある。第三に、問題解決的な学習や体験的な学習など多様で効果的な指導方法を積極的に導入すべきである。最後に、子どもの道徳的成長を促すために、自己評価、観点別評価、パフォーマンス評価、ポートフォリオ評価等を取り入れ、指導要録に文章で記述すべきである。
シティズンシップ教育とは何か
★シティズンシップ教育は、グローバル化が進展する現代社会において、主体的に考え、多様な人々と協働で新たな社会を創造していくために必要な資質・能力を育成する教育として、世界各国で注目されている。新しい道徳教育を進めるためには、このシティズンシップ教育の視点を生かし、地域社会の問題解決に実際に参加・貢献しつつ学ぶ体験的活動の充実とともに、新教科・道徳では、問いの探求や話し合いに必要なスキルの育成を重視し、答えが一つではない論争的なテーマも協同で探求できるような授業づくりが求められる。
アメリカの道徳教育の歴史
★アメリカは、多様な人種と文化から構成されるモザイク社会でありながら、その社会の根底には「建国の父」由来のピューリタニズムが今も息づいている社会である。アメリカの歴史の中でもアメリカ社会が混乱と腐敗に陥ったときには、このピューリタニズムの伝統が復活し社会の道徳的再生を果たすことがある。1990年代に入ってキャラクターエデュケーションが教育運動としてクリントンおよびブッシュ大統領はじめ国民の広範な支持を集めたのも、価値や文化の相対主義がその極に達した1960-70年代への反動もあって、アメリカの民主主義に本源的な価値を子どもに伝えていこうというピューリタン的伝統が自然な形で広くアメリカ国民に受け入れられるようになったからである。そして、キャラクターエデュケーションの具体的な活動として実践されるサービス・ラーニングもまた、学校を取り巻く地域コミュニティに子どもを自主的に参加させるといった形態を取って、アメリカ伝統のコミューンに根ざした民主主義の復活を果たそうとするものなのである。
日本のこれからの道徳教育の在り方-小学校低・中学年
★道徳教育の充実が強調されている。とりわけ道徳授業については、これまでにも、画一化、形式化しているといった批判があったことも事実である。物語を中心にして、そこに登場する主人公等の気持ちを追っていくといった展開が多くなされてきた。学年の発達によっては、もっと子どもたちの心の奥にあるものを引き出していくことも大切ではないかという声が出てきていることももっともである。ここでは、低・中学年に絞って、道徳的価値の自覚を深めるための道徳授業の在り方について、これまでの成果や課題を踏まえながら工夫・改善を考えてみた。
日本のこれからの道徳教育の在り方-小学校高学年から中学校
これからの道徳教育は、規範意識を育み、自己のよりよい生き方を育むための教育である。
★道徳の時間の指導方法は、発達段階に応じて、これまで以上に「多様で効果的な指導方法」を工夫する必要がある。
★高学年~中学校では、他律から自律への移行期であることから、自分を見つめる時間(内省)が重要であり、資料に応じて「ウェビング(マッピング)」や「ランキング」「スケーリング」等の手法を活用しながら、多角的思考力と意思決定力を育てるとよい。
★ドキュメント等、魅力的な資料や映像教材を活用することも大切。
道徳教育の指導の工夫-多様な指導方法による道徳教育へ
★今回の道徳の教科化において特筆すべきは、道徳の内容と方法、評価について言及したことである。道徳の指導方法の工夫においては、「多様で効果的な指導方法の積極的な導入について」の中の対話や討論、問題解決的な学習、学ぶ意義をもとにした主体的な学習等のキーワードに着目し、今求められる授業像(具体化)がイメージできる。道徳の授業づくりのポイントはさまざまあるが、主に次の2つを大切にしたい。①問題意識を大切にした授業づくり、②多様な価値観を大切にした言語活動の工夫である。
連載
教師力アップセミナー(11)教務主任の役割は何か | 千葉市立こてはし台中学校長 堀米 宏 |
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学級づくり実践セミナー(12)一年間の学級づくりをふりかえる | 早稲田大学教授 河村 茂雄 |
21世紀をよりよく生きる資質・能力の育成(12)資質・能力の育成と評価-初等中等教育と高等教育をどうつなぐか | 京都大学教授 松下佳代 |
学校の法律問題(24)給食費の徴収の職務命令 | 日本女子大学教授、日本スクール・コンプライアンス学会会長 坂田 仰 |
教育・心理検査を上手に活用しよう(12)学校経営に生かす教育・心理検査 | 青森市立佃中学校長 久慈和寛 (財)応用教育研究所課長 納富涼子 |
感度を高める言葉の教育(12)四種類の普通体 | (財)応用教育研究所課長 納富涼子 |
わたしたちの学校づくり(10)NRTを活用した子どもの学力への意識改革と基礎学力の向上-龍樹プランのPDCAサイクルを核とした取組 | 山形県南陽市立梨郷小学校長 淀野 秀樹 山形県南陽市立梨郷小学校教諭 高野伸哉 山形県南陽市立梨郷小学校教諭 佐藤秀樹 |
新しい教育評価の動向/S・コリンズ、M・レイス、G・ストバート「全国学力テストが中止されたらどうなるか-継続するイングランドと中止したウェールズの比較」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
小学校算数の発展・応用を学ぶ授業をつくる(31)5年 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
どうする?小学校図画工作の授業(12)図画工作科教育、これからの展望と課題 | 東京学芸大学准教授 西村 徳行 |
教育測定・統計入門(35)スピアマンの因子分析-2因子モデル | 法政大学教授 服部 環 |
教育の窓/心が痛む経験をしよう | 全校国公立幼稚園長会事務局長・前東京都公立中学校長 楚阪 博 |
教育の窓/高校の実情から大学入試改革を考える | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
だんわしつ/身近な自然の多様性を保育・教育につなげ、子どもたちのやりたがる心の力を高める | ウレシモパシリ 森と子育て文化をつなぐ研究会代表 高橋京子 |