- トップ
- 指導と評価
特集
これからの小中学校で育てたい算数・数学の学力
★文部科学省の全国学力調査のB問題のような学力(PISA型)が,新しい学習指導要領で求められているが,現場ではそれを定着させることはむずかしい。指導時間に限りあるなかで,基礎・基本の定着と活用力の育成を図るには、意識的に学習に強弱をつけて指導することである。
★思考力,判断力,表現力等の能力形成という面からも,また現実生活への応用・活用や探究する力を育てるという面からも,その基礎・基本となっている知識や技能の学力が,まず必要である。そのため,各段階での指導内容の精選や家庭学習などが学力定着の鍵となる。
小学校算数の低学年で育てたい学力とその指導
★子どもの算数授業観が形成される下学年の算数授業には、算数的活動が欠かせない。それは、算数的活動が、生活や学習に活用できる基礎的な学力や活用しようとする態度を養う源だからである。
★しかし、下学年の子どもが算数の学習内容に対して目的意識をもち、主体的に取り組むためには、それなりの教師の配慮が不可欠である。本稿ではそのポイントとして次の三つを示した。①発問や学習課題を子ども目線の言葉に翻訳する。
②子どもが素直に表現した言葉を生かし、それを洗練させていく言語活動を充実させる。③低学年に「D数量関係」領域が設定された意図を踏まえ、今まで以上に低学年から「式の表現と読み」を意識した授業を構築する。
小学校算数の上学年で育てたい学力とその指導-思考力・表現力の育成で算数好きを増やす
★新学習指導要領では、理数教育を重視が改善の柱の一つに上げられている。そこで焦点となる「活用できる学力」をどのように育成すればよいかを考えたとき、「できる」「わかる」だけを目指す教育観ではだめである。
★学力を「基礎的な知識・技能」や「数学的な思考力・表現力」だけでなく、「学ぶ意欲・態度」を含んだものとしてとらえたとき、「上学年で育てたい学力」をもう一度明らかにする必要がある。
★「思考力・表現力の育成で算数好きを増やす」という観点で、授業づくりを見直してみると、ちょっとした工夫で子どもたちが生き生きと取り組む授業が生まれてくる。
★算数的活動の重視、増えた指導内容の扱い、広がる学力差に応じる対策等は、教師の授業力の向上が一番の近道である。これからの教育はそれにかかっている。
中学校数学で育てたい学力とその指導
★数学の授業を通して、子どもたちに算数・数学を学ぶことの楽しさや大切さを伝え、数学的に見たり考えたりすることのよさを実感させ、算数・数学を使って問題解決する経験をさせていくことが大切である。
★数学で育てたい学力とは、①算数・数学の学習に対する興味・関心を高め、生涯にわたって数学の楽しさを感じていけること、②数学的な見方や考え方を豊かなものにして、数学を学ぶことの大切さを実感できること、③算数・数学の知識・技能および表現をより確かなものにして、積極的に活用していくこと、の3つとしたい。
これから小中学校で育てたい理科の学力
★理科学力の形成・獲得における今日的課題は、学習意欲が低い、理科学習の基盤となる自然体験、生活体験が乏しい、科学的に解釈する力や表現する力、活用する力などが十分でない等があげられる。
★学力の形成・獲得が可能になるモデルの明確化と学習、授業および評価の具体的な対応が重要である。
★一枚の用紙を用いるOPPA(One Page Portfolio Assessment:一枚ポートフォリオ評価法)は、学習や授業の中でその活用を通して思考力、判断力、表現力およびメタ認知能力などを育成できるので、右にあげた学力の課題を解決する一つの方法である。
小学校理科3・4年で育てたい学力とその指導
★高学年になってから、中学年の学習内容を振り返ると、活動した記憶はあっても、意外なほど学習内容を忘れていたり、誤解をしていたりすることがある。中学年では活動中心の授業展開になりがちである。理解の定着をある程度期待するには、実験・観察の活動だけではなく、活動したことを言語化したり、活用したりする時間も十分に保証する必要がある。情報を入力する実験・観察などの活動と、知識や技能を出力する言語活動や活用課題は、理解定着を推進する「両輪」である。
中学年の児童に合った方法で、十分な活動を保証したい。
小学校理科5.6年で育てたい学力とその指導
★実験後、科学的な規則をノートに記録していても、十分理解しているとは限らない。
★これからの理科で育てたい学力は、次のような表現力であると考える。①科学的な根拠を明確にして考えをもつ力。②自然現象を分かりやすく説明する力。③問題を解決するために適切な情報や技能を使いこなす力。
★表現力を育てるために、活用のあり方を考えたい。
中学校理科で育てたい学力とその指導
★学習指導要領の改訂は、客観的な実情を把握して進められるべきで、今回は国際学力調査の結果が大きな影響を与えた。
★中学校理科で育てたい学力は、①科学(理科)の楽しさを実感すること、②学校で学習したことが日常の生活との接点があることを理解すること、③科学的な思考力、に絞り込んだ。
★これらを意識して単元を構成した。その例として、理科嫌いを生む温床ともいえる小単元「電流と磁界」授業の展開を紹介する。
連載
●新学習指導要領で教科調査官が求める授業(1)小学校国語 | 文部科学省教科調査官 水戸部修治 |
---|---|
●坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(57)-小学校五年、割合 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
●これからの国語科教育(12)読書指導の位置づけと新しい国語教育 | 東京女子体育大学教授 田中洋一 |
●これからの学習評価(11)「基準か規準か」から新しい「キジュン」へ | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
●教育・心理検査入門(12)日本版KABC-Ⅱにおける下位検査の構成 | 北海道教育大学札幌校教授 青山 真二 筑波大学心理・発達教育相談室相談員、筑波大学名誉教授 熊谷 恵子 法政大学教授 小野純平 |
●これからの理科教育をどうするか(18)中学校三年「科学技術と人間」 | 広尾学園中学校・高等学校副校長 元筑波大学附属中学校副校長 角田陸男 |
●教育の窓-PISA2009年調査の結果から何を得るか | 国立教育研究所国際研究・協力部長 渡辺 良 |
●小学校英語活動のポイント(23)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その3(年間指導計画作成の基本1) | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
●だんわしつ/「すみませんが……」と言えない子と親 | 浪合こころの相談室 諏訪 耕一 |
●ひとりごと/一つだけ | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |