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特集
論理的思考とは、堪え、粘ることである
★論理的思考とは、堪え、粘ることである。それは、①疑問、反論に備えて、時節の弱点を補強する。②その場の思いつきで言葉を換えず、言葉使用の原則を貫く。③自らが答える責任、説明する責任を全うする、ことである。
★論理的思考の指導は、堪え、粘ることを教える。そのためには、批判的思考、想像的思考などと別の思考だと考えるのをやめることだ。
具体で考えれば論理的思考力は育つ
★次の二点は、何が書いてあるか正確に読み取り、自分の意見をしっかり持つための方法である。①資料文から目を離さない。②論点を絞る。
★看護学生に次の方法で論理的思考力を育てる授業を行っている。①資料文を読ませる。②意見文を書かせる。③書いた意見文を批判的に検討させる。④教師が発問し学生に答えさせる。意見文(の一部)の検討を紹介する。
国語科で論理的思考力を高める
★国語科で「論理的思考力を高める」とは、考える筋道を自覚させ、必要に応じて自分の考えの筋道を言語で適切に表現できる能力を高めることである。
★そのために、言葉の力、すなわち語彙力の増大と言葉の使い方の理解を図ることが重要である。
★そして、「考える」ことを自覚させるためには、問い返すことが有効である。
★考えを深めさせるには、段階を踏まえて援助しながら、書くことの充実を図りたい。
★「考えること」を楽しませて、論理的思考力を高めたい。
算数・数学科で論理的思考力を高める
★算数・数学科で指導される論証は、「AならばB」という形の命題の連鎖として実現される。しかし、その命題を知識として提供してしまうと、論証する行為は単なる形式的な操作と化してしまう。
★人間には先天的に原理や構造を見抜く力がある。それを基礎数学力と呼ぶ。大人が用意した知識の連鎖ではなく、基礎数学力の発露として得られる自分自身の理解を連ねていくことで、論証は意味のあるものになる。
★算数・数学科のカリキュラムにおいてそうした論証を明示的に指導する単元はないが、日頃から「AだからB」という表現を使って会話するように心がけるとよい。それによって基礎数学力が活用される機会が増え、論理的思考力が高められる。
社会科で論理的思考力を高める
★社会科においては、論理的思考ということばはあまり使われないが、それは社会科の本質を担いうる重要な概念である。
★社会科における論理的思考とは、事象の当事者の心情に思いをめぐらせて共感する思考とは異なり、一人一人が自分たちの社会を吟味、批判するために必要な思考である。
★それは、既知の命題に基づいて、その命題と同等の未知の命題を導き出すことである。したがって、授業はそのような既知の命題の習得や活用が重要になる。
★思考を論理的なものにするために必要不可欠なものは、社会科学理論であり、それを体系化して習得すること、そして活用して、未知の命題づくりをすることである。
理科で論理的思考力を高める
★国際教育調査で日本の理科は上位の成績を示しており、思考力・表現力も国際的に上位にある。一層の充実にはより広い育成を考える必要がある。
★実験レポートでは目的、操作、結果、考察の関連を念頭において書くことで思考力や表現力の育成となる。特に実験では見たまま書く結果(事実)と、考えないと書けない考察(意見)の区別がしやすく、論理的な思考力や表現力の初期段階での育成に適していると考えられる。
★理科でのグラフ化は、単にプロットを結ぶのではなく、たとえ同じ数値でも直線が適切な場合や曲線が適切な場合など、事柄により異なる。読み取る際には、描く人の考えがグラフに反映されることを念頭におく必要がある。
英語で論理的思考力を高める
★今後の日本の国際・英語教育では、英語によるコミュニケーション特有の論理的思考力及び積極的な表現力が要求される。なぜなら、多くの日本人は「以心伝心」的コミュニケーションを好む傾向があるが、そのようなコミュニケーション・ウエイは国際的な場では通用しないからである。
★国際的なコミュニケーションの場では、首尾一貫性を重視した論理性が求められる。したがって、論理的思考力及び表現力を高めるためには、グライスの4つの会話の金言(①数量の金言:必要な情報はできるかぎり多く伝える。②質の金言:[常に根拠を示し] 真実を伝える。③関連性の金言:関連ある事を伝える。④様式の金言:明瞭かつ簡潔に伝える。)を重視した指導をする必要がある。
論理的思考力を育成する取組-フィンランドの教室から-
★フィンランドでは、社会構成主義的理念に基づいて、「知識を自ら組織していくような学習」を展開していくことを目指しており、そこで子どもたちに身に付けさせたいとされる力は、論理的思考力に通じるものである。
★根拠を説明すること、図式化して理解すること、自己の学習成果を正確に認識し、評価すること、等の取組を通じて、論理的に考える力を育んでいる。
★論理的な思考力の基盤として、客観的かつ分析的に物事をとらえ、正確に理解する力の育成が重視されている。
連載
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(45) 小学校五年、小数のかけ算 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
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●PISA型読解力を育てる(19)今後への期待を込めて | 聖徳大学教授 福沢 周亮 |
これからの理科教育をどうするか(6)中学校第一分野「身近な物理現象」 | 広尾学園中学校・高等学校副校長 元筑波大学附属中学校副校長 角田陸男 |
自己の生き方を育てる学校教育(3)「教育カウンセリングで各領域をつなぐ」 | NPO法人日本教育カウンセラー協会会長 國分康孝 明治大学教授 諸富 祥彦 |
第三回全国学力調査結果を分析する(3)中学校数学 | 明治大学教授 諸富 祥彦 |
特別寄稿/評価用語の混乱と不足-実り多い議論のために | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
ネット時代の読書論(24)電子の本は人を圧倒するか | 東京家政大学教授 平山 祐一郎 |
小学校英語活動のポイント(12)コミュニケーション力(資質・能力)の育み方と見取り方のポイント-その5- | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
だんわしつ/授業で大切にしたいこと | 元筑波大学附属小学校教諭 正木 孝昌 |
ひとりごと/科学的根拠はないのだが | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |