月刊誌 指導と評価

2005年 3月号
  1. 2005年 3月号 Vol.51-03 No.603  定価:450円
特集
目標準拠評価を保障するシステム
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特集

目標準拠評価の課題と乗り越える努力

京都大学教授  田中 耕治

★目標準拠評価は、その前提として「平等と質」を同時に追究し、「授業研究」に寄与するものでなくてはならない。

★目標準拠評価の課題と克服策を概括すると、

1.スタンダードの設定とルーブリック作りに取り組むこと。

2.教科固有の学力モデルを追究すること。

3.子どもたちの「参加」を保証する評価方法の開発を行うこと。

4.「成績づけ」(指導要録や通知表、内申書)の方法について独自に探究すること。

5.入試制度のあり方については、選抜型から資格型に変換するとともに、教育的な「接続」としての入試のあり方を探究すること。 である。

「思考力・判断力」「表現力」の目標準拠評価の妥当性を高める

京都大学准教授  西岡 加名恵

★「思考力・判断力」「表現力」とは、単元を超えて繰り返し現れてくるような「転移可能な概念」「複雑なプロセス」を、特定の場面や文脈において使いこなす力を指していると考えられる。

★それらの力についての目標準拠評価の妥当性を高めるためには、実際にそれらを使いこなすことをもとめるような自由記述問題やパフォーマンス課題を用いることが必要である。

★今後の課題としては、まず「転移可能な概念」「複雑なプロセス」とは何かを明らかにする必要がある。そのうえで、それらに対応する課題を繰り返し与えることによって、長期的に評価し、「思考力・判断力」「表現力」の保障を図ることが求められている。

「関心・意欲・態度」の目標準拠評価の妥当性を高める

国立教育政策研究所総括研究官  山森 光陽

★評価の四観点における「関心・意欲・態度」とは、「思考・判断」を働かせながら「技能・表現」と「知識・理解」を身に付けるための問題解決活動を支えている子どもの心的状態である。そのため、学習活動に直接かかわる部分での「関心・意欲・態度」が評価されなければならない。

★評価を行うためには、単元レベルの評価規準の設定と、学習過程レベルでの評価規準の具体化、そして評価規準に対する実現状況を判断するための評価基準が必要である。

★妥当性を高めるには、用いられた評価規準と評価基準、そして事例を教師間で持ち寄り、検討を行うことによる評価方法の取り組みを、学校内や地域で行うことが必要である。

目標準拠評価の解釈の変遷と評価の統一   スタンダード準拠評価とモデレーション

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★目標準拠評価は、グレイサーによりクライテリオン準拠評価として初めて提案された。

★クライテリオンの解釈によって、クライテリオン準拠評価は二つの方式に分けられる。最初はドメイン準拠評価が有力であったが、高次の技能が注目されるとスタンダード準拠評価が登場した。

★評価の統一の手続きをモデレーションと言い、評価結果の統一と、評価過程の統一の二つの方法がある。

目標準拠評価を保障するシステムとしての標準学力検査

(一財)応用教育研究所副所長  宮島 邦夫

★目標準拠評価についての新聞報道などに接するに、評価の客観性や評価手続きの一般化が、教育界のみならず広く社会にも求められているというのが、目標に準拠した評価をめぐる昨今の状況である。

★目標準拠評価を保障するシステムとしての標準学力検査の第1の側面は、各学校の評価基準を補正する方法として利用することであり、それが、目標準拠評価を今後も維持していくための方策になる。

★目標準拠評価を保障するシステムとしての標準学力検査の第2の側面は、いかに補充指導に活用するかということであり、標準学力検査による総括的評価の場合でも、補充指導の必要性はある。

目標準拠評価の客観性を高める研修

岡山県教育センター指導主事  佐々木 弘記

★評価規準や評価方法、規準を実現している状況が具体的にわかる児童生徒の作品等(ワークシート、レポート、パフォーマンスなど)の実例が掲載された「評価実例集」があれば、教師はそこに掲載されている実例と、児童生徒の作品とを比較することで客観性の高い評価が実現できると考えた。

★評価実例集を作る手続きとして、海外で行われているモデレーション(各学校の教師が、自分たちの評価した児童生徒の事例を持ち寄って検討する会合)を導入し、わが国の実情を考慮しながらアレンジしてモデレーションプログラムを開発した。

★モデレーションプログラムを研修講座で実践し、評価実例集を作成することを通して、評価の客観性を高めると共に、教師の力量を高めることができた。

オーストラリアの目標準拠評価を保障するシステム

オーストラリア・アデレード教育センター指導主事  アンナ ウッズ

★南オーストラリア州では、生徒の学習成果を示す評価基準が9教科、2・4・6・8・10学年で設定されている。これが生徒のカリキュラムを規定する。

★その評価基準は、生徒の学習状況を一定の連続的な発達の中にあるレベルに該当するととらえる、スタンダード準拠評価の考え方によっている。

★判断は、質的・量的の両方の資料から行われる。

★このシステムでは「評価の統一性」の確保が必要である。

1.理解しやすい評価基準の作成。

2.指導計画の共同作成。

3.共通の評価課題と合同での採点。

4.サンプルのモデレーション。

5.レベルに該当する生徒の学習成果の事例。

★さらに、高校卒業資格は評価の統一のために、より多様な方法をとっている。

連載

小学校算数の基礎・基本の指導と評価(22)   授業で大切にしたいこと(5)-子どもたちが積極的になるとき 元筑波大学附属小学校教諭
正木 孝昌
ドリルについて考える(10)   漢字学習「さかのぼりくり返しと字源の授業」 兵庫県神戸市立西山小学校教諭
岡 篤
読書教育(6)   絵本がもたらすもの 福沢周亮
福山 幸恵
法政大学教授
渡辺 弥生
豊かな心と確かな学力の育成(7)   開かれた学校、保護者との相互理解と連携が学校を変える 神奈川県茅ヶ崎市立浜須賀小学校長
松本 友行
豊かな人間性を育てる授業シリーズ(6)   意志決定編(中学生版) 教育臨床研究機構理事長
中野 良顯
大石 有里子
どうする?小学校英語(13)   小中連携の英語教育における到達目標設定時の留意事項 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長
渡邉 寛治
だんわしつ 国立教育政策研究所総括研究官
千々布 敏弥
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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