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特集
今の子どもに付けさせたい学力は何か -基礎基本・学び方をどうするか
★今の子どもに付けさせたい学力とは、「人間としての基礎(技能と感覚)」と「各文化領域ごとの基本(概念と方法)」と、これら二つを土台にして自由に展開される「個性的・創造的能力」である。個々の要素としてみると従来のものと特に変わっていないが、変わっているのはこれら三者の関係であり、その中身の質と量である。
★これらの「基礎」「基本」の教育は「人と人をつなぐ教育」として不可欠である。またこれを用いて展開する個性・創造性」の教育は「能力を引き出す教育」として、これまで以上に重要視され、この前者から後者へ重点を移さねばならない時代に入っていると言って良い。
子どもに付けさせたい学力と総合的な学習
★昨年出された中央教育審議会の答申では、学習指導要領の方向性を示唆する概念として、「確かな学力」を強調している。それ自体には異論があるわけではないが、肝心な点は、どうしたらその「確かな学力」が付くかということである。本来そのための中核的な役割を担うべき総合的な学習の時間については、いまだ十分な理論的掘り下げが見られない。
★教育について私事性と公事性という二つの視点で分析を試みると、各教科等は公事性として、また総合的な学習は私事性に位置付く。人間の一生を貫く学習の核をつくる場として、総合的な学習を位置づける必要がある。
社会・産業界ガ求める能力 -今、子どもに付けたい学力-
★国際化・技術革新など、社会や経済環境は変化を続けている。企業は、伸ばすべき事業と縮小・撤退する分野を決め、人材や資金の重点配分を進めている。この事業分野の見直しによって、働くべき職場を失う人も出てくる。離転職の頻度が高まり、キャリア形成の機会も増加する。生きていく力、雇用されうる能力、エンプロイヤビリティの要請が急務である。
★学校教育においては、カリキュラムが定められテキストが用意され、教師が課題を出し、それには必ず正解があることが多いが、現実の社会では、何が問題かがわかりにくいことも少なくない。答があるのかないのかも判然としない。テキストも教師もいない。
★今日以上に激動期であった敗戦後の学校教育は、児童・生徒に何を教え、何を学ばせたのか。豊かな日本を作り上げてきた世代は、その時代に育ってきた人々である。人を励まし、能力を向上させるたくさんのヒントを先人に学ぶことができるのではないだろうか。
今必要な学習論
★教育界は「知識・技能」と「思考・学び方」の二つの主張の間を、振り子のように揺れてきた。この振り子に振り回されないためには、それぞれを強調することが、なぜ弊害をもたらすことになったのか、という根本的な問題を考えなければならない。
★知識、特に構造的な知識形態を軸にして考えると、「詰め込み教育の問題点は詰め込めていない」「問題解決学習のスタイルは必ずしも万能ではない」「読み・書き・算にも構造は存在する」といったことが見えてくる。行われている学習の内実をよく考えれば、無批判に「基礎ではドリル」「思考では問題解決学習」といった考えにはならないはずである。
中学校から見て小学校で身に付けておいてほしい国語の力
★授業を通して、昔と比べて生徒の気力「じっくりと一つのことに取り組む力」がなくなってきたと感じている。それにともない、以前はテンポのよい授業を優先しがちだったが、今は、むしろ授業の中でこそゆっくりとした時間の中で、腰をすえて「読み」「話し」「聞き」「考える」時間を取り戻すことが必要ではないかと考えている。そしてその中で、まず国語の基礎である「読書する力」と「読む力」を生徒には身に付けさせたい。
★しかし、中学校段階では、すでに開いてしまっているこの力の差を埋めるのは難しい。是非小学校段階から、年間指導計画に「読書活動」と「読む活動」をメインとした授業を組み込み、組織として取り組んで頂けるとありがたい。
小中高連携における英語教育で身に付けてほしい学力
★前半では、まず、小学校における英語活動の主な成果を紹介。次に、その成果をもとに中学校との連携を意識しながら「小学校ではどのような学力を」、また「中学校では何を」身に付けるべきか考察する。
★後半では、これらの論を踏まえて中高連携の英語教育について考察。具体的には、高校で求められる学力の観点から中学校の段階で定着すべき学力について、国の学力調査の分析結果をもとに考察する。
★最後に、小中高の連携を意識した「実践的言語活動」のすすめを提言する。
「金沢スタンダード」の策定と実施-金沢版学習指導基準
★金沢市では、平成十四年度に独自に実施した学力調査や、毎年行ってきている教育課程実施状況調査の結果等に基づいて明らかになった、児童生徒の学力面での課題に対応するため、「金沢スタンダード」を作成した。
★金沢スタンダードとは、各教科の学習指導要領の目標達成のため、内容やその取り扱いにおける、金沢市全体で共通実践すべき独自の指導基準である。
★金沢スタンダードでは、次の二つの指導基準を示している。
1.その学校においても、学力の定着が不十分で理解が難しい「重点的に指導する内容」と、定着状況がどの学校においてもおおむね良好で一層伸ばすことが可能な「発展的な内容」を示し、全校での取り組みを促している。
2.内容に合わせて、単元指導計画例と評価判定基準例を示し、各学校で実践の質を高める際の手がかりとしている。
連載
私が行っている継続可能な目標準拠評価(11) | 大分市立植田南中学校教諭 大渡 寿美代 |
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小学校算数の基礎・基本ノ指導と評価(10) 子どもたちが能動的になる瞬間(5) | 元筑波大学附属小学校教諭 正木 孝昌 |
教科におけるポートフォリオの活用(5) 目標準拠評価を充実させるために(5)-観点別長期ポートフォリオ | 鳴門教育大学附属小学校教頭 宮本 浩子 |
新出漢字の前倒し習得学習(3) | 広島県尾道市立土堂小学校教諭 三島 諭 |
新しい教育評価の動向/主要論文の解説(8) R.ドリバーら:子供の科学概念の理解 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
標準卓力検査ヲ活用した教育実践(17) 標準学力検査を活用して「教材×学習者の適性×処遇」により学習効果を最大にする方法の追究 | 福島県伊達市立冨野小学校長 八島 喜一 |
中学校社会科の「確かな学力」ヲ育む授業改革と評価 歴史分野の「多面的・多角的な見方」を育てる教材開発ト作業的・体験的な学習 | 富山市立北部中学校教諭 高瀬 一寿 |
だんわしつ | 東北福祉大学準教授・授業づくりネットワーク代表 上条 晴夫 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |