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特集
自己評価の重要性-教育目標としての自己評価-
★自己評価能力の育成が教育目標である。自己評価そのものが目標ではない。
★現代においては、対人関係の社会的能力の育成や、地球規模の諸問題の解決のために、自己評価能力の育成が求められている。
★自己評価能力の育成には、その意義を理解させることと、その方法を身につけさせることの二つがある。いずれも、計画的・段階的、長期的、体験的に育てなければならない。
★自己評価の基本は書かせることである。初めは、先生など他者の評価規準に従って行い、しだいにその規準を内面化させ、自己で評価できるようにする。仲間での話し合いなどの相互評価も、たいへん有効である。
自己評価のメカニズム-自己評価能力はどのように発達するか-
★自己評価活動には、
1.学習目標(評価規準)を設定する。
2.学習活動をモニターし、調整する。
3.いわゆる評価を行い、自分をほめたり、励ましたりする。
といったプロセスが考えられる。
★自己評価活動に必要な力には、
1.メタ認知的知識
2.学習活動をモニターし、調整する力(メタ認知的活動)
3.学習結果を客観的に評価する力
4.自分をほめたり、励ましたりする力 がある。
★こういった自己評価能力は、小学校高学年くらいになると充実してくる。小学校中学年くらいからの自己評価の訓練が望まれる。
★自己評価は現在のような生涯学習時代にあってはとくに必要なもので、自ら学び自ら考える力も育んでくれる。
自己評価能力をどのように育成するか 自己評価カードの工夫、他者との交流、評価基準の共有化と更新
★自己評価力を子どもに育てていくためには、
1.その時々の自己評価の目的(何のために自己評価をするのは、またそれを学習にどう活用するのか)を明確にする。そのためには、自己評価カードの形式を工夫する。
2.自己評価活動と相互評価(友達から、友達への双方向のアドバイス)とを一体化してとらえて、学習を組織化していく。
3.自己評価力を育てる「授業づくり」の時間を、年度当初や単元構想の段階で位置づける。
4.「評価規準」を子どもの問題解決的過程にそって具体化し、子どもとともに共有化し、更新していく。
自己評価能力をどのように育成するか アメリカの事例から学ぶ「自己修正」の大切さ
★自己評価には大きく二つのタイプがあるように思う。ひとつは、到達すべき目標が示される学習で、自分の学習成果なりプロセスが、その目標に照らし合わせてどのあたりに位置するかを自己で判断する場合である。
★もうひとつは、学ぶべき大きな概念が与えられる学習では、自分の力でどこまで理解を深めたか、関連性を発見したか、修正していったか(要するに、どれだけ自分の頭で考えたか)を自分で判断する場合である。
自己評価能力をどのように育成するか イギリスでの自己評価能力の発達段階の研究から学ぶ
★自己評価の発達段階に関する研究によって、適切な指導が可能となる。イギリスでの自己評価研究の第一の特徴は、自己評価能力の発達段階に関する研究が行われていることである。
★第二の特徴は、教室での効果的な指導方法の研究である。教室内での教師の適切な問いかけや、自己評価例の提示が生徒の発達を促す。
自己評価能力を育てる実践 意味ある自己評価のために
★自己評価は、ふり返り活動を通じて自分をとらえ、それをいろいろな基準や目標と照らし合わせて判断し、自分自身で今後どうすればいいのかという計画を考える活動で、自己教育力につながる活動である。
★授業において自己評価を促す支援を意図的、継続的に行い、自己評価の生きる授業を計画したい。
★通知表は自己評価と教師のそれに対する評価から子ども自身が学習や生活の状況、成果と課題を知り、励みを与えたりふり返りの機会をもてたりするものにしたい。
自己評価能力を育てる実践 自由記述式の自己評価
★21世紀に生きる資質として、自己を見つめる力、自己統制力、自己表現力を育てようと、自由記述式の自己評価に取り組んでいる。
★自己評価力を育てるためには、まず「共感」的な受け止めが必要だ。とりわけ低学年では、これがすべてといってもよい。
★それに加えて、中学年では多様な見方を理解させたい。また、高学年では「自己評価の評価」も指導したい。
★自己評価を後日さらにふり返ることが重要だと言われており、今後の課題としたい。
単元テスト、自己評価ノートなどの工夫
★自己評価の仕方は、学習方法の一つとして生徒に身につけさせたい。
★教科学習では、学習方法の基礎基本を見につけさせる指導を工夫する。また学習計画を立てさせる。同時に、授業の中で行う自己評価表の評価項目と対応させて、単元テストを作り実施する。テストの結果と自己評価表を比べ、成果と課題を明らかにさせる。保護者にもこれを見せることで、教師・生徒・保護者が達成状況を共通理解することも大切である。また、テスト後の事後指導も大切である。
★学習態度・生活態度については、「自己評価ノート」を作成して、毎週金曜の帰りの会でふり返り、学期末に再度まとめて、通知表記入の参考にする。
連載
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中学校理科の基礎・基本(1) 第1分野 | 渡邉 康夫 |
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総合的な学習の実践と評価(8) これまでの教師の働きとどう違うのか | 神戸大学附属住吉小学校教諭 勝見 健史 |
だんわしつ | 東北福祉大学特任教授 有田 和正 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |