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特集
学力調査のあり方-よいテストの要件を中心として-
★テストの信頼性とは、同一受検者から一貫して同一の得点が得られることを指す。受検者の人生を左右する局面で利用されるテストでは、高い信頼性が望まれる。テストの信頼性は日常用語の信頼とはニュアンスが異なる。
★テストの妥当性とは、テストの得点から導かれる解釈の正当性を指す。信頼性が高くても妥当性が高いとは限らないが、妥当性の高いテストは信頼性も高い。
★採点の客観性とは、答案を誰が採点しても同じ採点結果になることである。
★学力の経年的変化を調査するには設問を非公開とした上で再利用すること、個々の児童生徒の到達度を知るには設問を公開する標準学力検査や教師自作テストを利用することが望ましい。
おもな国際調査、国内調査について
★この十年ほど、国際的にも国内的にも、教育改革に生かすために学力調査の要求が高まり、様々のタイプの調査が頻繁に行われ、学力に関する実証的なデータが集められてきた。
★学力の新たな評価法として、ペーパーテストにおいて活用の問題が開発され、ペーパーテスト以外では、実技やコンピュータによる出題も試み始められた。
★調査の実行可能性の観点から、「調べるべき学力」と「実際に調べた学力」は必ずしも同じではないという限界もみられる。
★PISA二〇〇九年調査にも見るように、この十五年間、わが国より得点の高い国/地域が次々に現れはじめた。ただし日本のように人口の多い国/地域はない。
★児童生徒の学習に対する態度は依然として課題が多いが、態度は変わりやすいので教師はあきらめずに常に指導法を工夫する必要がある。
標準学力検査による学力調査
★標準学力検査は標準化の手続きを経ているため,一定以上の妥当性と信頼性が確保されており,結果の解釈も標準化された基準によってなされるため客観性が高いという利点がある。教師作成テストは実際の授業との整合性が高いため指導の改善に利用しやすいことに加えて,論述項目を出題しやすいといった利点がある。
★どのようなテストであっても利点と難点を併せ持っているため,ある一つのテストだけで複数の目的を一度に満たそうとするのではなく,目的にあったテストを柔軟に使いこなす必要がある。
★「思考・判断・表現」の評価を行う方法として普及しつつあるパフォーマンス課題の妥当性と信頼性を検討するために標準学力検査を利用することは,標準学力検査の利点を活かした利用方法の一つである。
全国学力調査のこれまでと今後―調査の役割と基本設計を再考する―
★全国学力調査は平成十九年度から実施され、導入期の四回が終わった。これから定着に向けて、「経年変化の分析」が可能な設計とすることが提案されている。大規模学力調査としては当然だが、「各児童生徒の状況把握」という目的とは根本的に矛盾する。
★約四十年間の全国学力調査空白期間にテストの理論と技術は格段の進歩を遂げた。諸外国の学力調査では「重複テスト分冊法」を用いて「対応付け」を行うことで幅広い学力の諸相を描くことが可能となっている。全設問を全受検者が解く、という発想を改めない限り、わが国の学力調査、それ自体が世界の趨勢から取り残される。
★全国学力調査と自治体による調査、教師作成テストの役割分担と相互補完が必要だろう。
学力調査を授業改善に活かす
★学力調査を、授業改善に活かす方法として、①学力調査全体の結果を受けて学校全体の算数科の授業改善をする、②学力調査の問題毎の結果を受けてある授業場面の展開を改善する、という二つの授業改善が考えられる。
★算数科の学習過程に、数学的な表現力を高める具体的方策を位置付ける。
★第5学年「割合」での、授業改善の一方策を紹介する。
★基礎的・基本的な知識・技能の定着と、数学的な思考力・表現力を高めることとのバランスを大切にしながら、今後も研究を続けていく。
学力調査はどうあるべきか
★活用力や思考力・判断力を調査するには、定型化されていない生徒の解答を許容する問題や課題を出題する必要がある。
★定型化されていない解答を採点する技術は、イギリスのGCSE試験のその例があり、解答のレベルを区分する方法で採点している。
★サンプリング調査では、悉皆調査では不可能な詳細な調査が出来る。問題の解決過程で生徒がどのような思考・判断をするか、問題点は何かが分かる。その例としてAPU調査があり、参考とすべきである。
思考・判断・表現の評価方法-イギリスの学力調査の採点技術-
★活用力や思考力・判断力を調査するには、定型化されていない生徒の解答を許容する問題や 課題を出題する必要がある。
★定型化されていない解答を採点する技術には、解答のレベルを区分する方法がある。ここでは イギリスのGCSE試験の例を紹介する。
★サンプリング調査では、悉皆調査では不可能な詳細な調査が可能である。問題の解決過程で 生徒がどのような思考・判断をするか、問題点は何かなどが分かる。その例としてAPU調査が あり、参考とすべきである。
連載
●坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(56)-小学校五年、立体の見方 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
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●これからの国語科教育(11)伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 | 東京女子体育大学教授 田中洋一 |
●これからの理科教育をどうするか(17)中学校三年「地球と宇宙」 | 筑波大学附属中学校教諭 金子 丈夫 |
●これからの学習評価(10)評価規準の参考資料をどう補充するか | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
●第4回全国学力調査結果の考察(4)中学校国語 | 広島女学院大学准教授 植西浩一 |
●教育・心理検査入門(11)KABC-Ⅱが依拠する二つの理論 | 吉備国際大学学長 藤田 和弘 東京成徳大学教授・筑波大学名誉教授 石隈 利紀 法政大学教授 服部 環 |
●自己の生き方を育てる学校教育(7)「道徳と人格形成」 | 武庫川女子大学教授 押谷 由夫 東京学芸大学教授 永田繁雄 明治大学教授 諸富 祥彦 |
●教育の窓-PISA2009年調査国際結果の速報 | 指導と評価編集部 「指導と評価」編集部 |
●小学校英語活動のポイント(22)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その2(教育内容課程編成の基本) | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
だんわしつ/いじめ自殺する子をなくするために | 国立教育政策研究所名誉所員・2014年度戸田市英語教育運営指導委員会委員長 渡邉 寛治 |
ひとりごと/季節の足音 | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |