月刊誌 指導と評価

2008年 2月号
  1. 2008年 2月号 Vol.54-02 No.638  定価:450円
特集
全国学力調査の結果とその活用
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特集

全国学力・学習状況調査結果と結果から見た課題

国立教育政策研究所総括研究官  山森 光陽

★全国学力・学習状況調査の結果を総合的に解釈すると、わが国においては水準の等しい義務教育が全国各地、各学校で実施されていると解釈できよう。

★「教科に関する調査」の正答率は、地域や学校の取り組みの程度を直接反映しているとはいえないため、各市町村別、各学校別結果を公開し、その順位を論じることに積極的な意義は見いだせないだろう。

★この調査は「児童生徒が身に付けるべき学力の特定の一部分を中心にしながら、児童生徒の教室、家庭、地域での様子と学校の取り組みを総合的かつ概略的にとらえた調査」という特質がある。そのため、地域、学校・教師といったレベルで、着目すべき点はおのずと異なるといった点に留意すべきであろう。

★この調査の結果を用いた指導の改善が、単なるテスト対策に陥らないようにするためには、テスト結果を利用する者の知性と理性が問われよう。

全国学力調査の結果とその生かし方   小学校国語

岩手県奥州市立衣川小学校長  藤川 ひとみ

1.検証改善の計画

本校では、四月の実施直後より、当該学年の担任だけではなく、全教員で、問題や解答類型の分析を行ってきた。

今回の調査は、児童の学力実態の把握とつまずきの回復と同時に、教師の指導改善と本校の教育課程の改善につなげることに、その目的をおいていたためである。

2.調査結果にあたって

3.検証改善の方策

(1)指導改善

ア.教育課程の改善、イ.授業改善

(2)事後指導

ア.全体指導、イ.個別指導

(3)結果説明と対話

4.おわりに

学力調査の結果とその生かし方

東京都世田谷区立八幡山小学校長  廣田 敬一

1.全般的な傾向

文部科学省は算数科の調査結果として、「A(知識)については相当数の児童が学習内容をおおむね理解していると考えられる」、「B(活用)については、知識・技能を活用する力に課題がある」と発表している。AとBの間にこのような差が生じるであろうことは、当初から予想されていたことである。

いずれにせよ、一問一問について、その出題の趣旨を踏まえながら、児童の解答状況を多面的に分析し、課題を明確にしてとらえて、指導の改善に役立てることが重要である。

2.A(知識)問題についての結果の考察

3.B(活用)問題についての結果の考察

(1)必要な情報を選択・活用する力を育てる

(2)自信がないときでも、できるかぎりの表現をしようとする態度を育てる

(3)理由と結論がしっかり説明できる表現を学ばせる

学力調査の結果とその生かし方   中学校国語-「記述」を意識した指導改善を

神奈川県川崎市立川崎中学校教諭  黒尾 敏

★全国学力・学習状況調査の中学校国語の結果について、調査問題A(知識)、B(活用)それぞれの着目すべき点を明らかにし、それをどのように指導に生かしていくか、具体的に述べてみたい。

1.調査問題Aについて

(1)大問2「手紙を書く」の問題

(2)大問3「文学的な文章を読む」の問題

(3)大問7「グラフを基に考える」の問題

2.調査問題Bについて

(1)大問1「ロボット」の問題

(2)大問2「蜘蛛の糸」の問題

(3)大問3「広告カード」の問題

学力調査の結果とその生かし方   中学校数学

福岡市立小呂中学校教頭  吉塚 憲博

★今回の調査では、中学校数学は活用する力に関して課題が残される結果となった。

中央教育審議会答申で述べられているように、習得型学習と探求型学習、それをつなぐ「活用型学習」の考え方が、今後の授業改善の要となると考える。そこで、今回の結果のどこに注目し、それをこれからの指導にどのように生かしていけばよいかについて考えていきたい。

1.分析の手順

2.具体的な分析と結果の生かし方

(1)主として「知識」に関する問題

(2)主として「活用」に関する問題

(3)授業改善への取り組み

質問紙調査の結果と生かし方   クロス集計結果について

北海道教育大学教授  今泉 博

1.教育現場の努力が反映

2.学力低下ということが言われてきたが

3.基礎的・基本的なことを豊かに学ぶ

4.「総合」の学習が好きだという子は多い

5.「総合的な学習の時間」は重視すべき

6.重要だとは思っているが楽しくない

7.「やり方を覚える」こと中心の学習では

8.教育現場に自由で創造的な雰囲気が必要

質問紙調査結果の見方と生かし方

岐阜聖徳学園大学教授  玉置 崇・愛知県教育委員会指導主事  野木森 広

1.質問紙調査結果の見方

2.質問紙調査の結果の生かし方

3.愛知県版分析プログラムの開発

4.学習状況調査の結果を生かす三つの視点

(1)授業改善に生かす

(2)個別指導に生かす

(3)家庭や地域への啓発に生かす

「学力不足」はどこへ行った?

東京成徳大学教授  杉原 一昭

★全国学力テストの結果は、平均正答率で見るかぎり驚くべき好成績であった。では、あんなに大騒ぎされた「学力低下」はなかったのだろうか。

★小六の平行四辺形の求積問題を例に、A問題の高い正答率は実は単に問題に出ていた数字をかけていただけで、平行四辺形の面積を出す知識があったわけではなかったのではないか、ということを、B問題の誤答内容から明らかにした。

★したがって、学力テストの結果は問題の吟味と誤答分析などを通して、また日常の指導を踏まえて慎重に見ていかなければならないことを指摘した。

連載

坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり   「わかる」と「できる」-基礎・基本の考え方(20)-図形- 青山学院大学教授
坪田 耕三
学力調査を正しく読み取る(5)   国際学力調査としてのPISA2003のテクニカルな側面 東北大学教授
村木 英治
いま必要とされる教師力をいつどのように身につけるか(1)   いま教師に求められている力とは何か 山形大学教授
出口 毅
私の教育評価実践(16)   指導と評価の質の向上のため、県で評価規準表と単元別評価問題等を作成した取り組み-中学校数学 福井市成和中学校教諭
山本 裕一
豊かな人間性を育てる授業シリーズ(最終回)   PISAと人間形成 教育臨床研究機構理事長
中野 良顯
だんわしつ   PISAの結果を見て (財)応用教育研究所所長
辰野 千壽
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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