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特集
幼小連携・小中連携の意義と今後
★幼児期から児童期には、感性的活動的な学びから、自覚的意思的な学びへ移行する。また思春期は、仲間を通じて新たな自己形成をしはじめる時期であり、抽象的な思考力の発達も著しい。こうした心理発達を踏まえて幼・小・中の区切り目があると思われるが、最近の子どもにとってはその変化が大きすぎるという問題がある。
★そこでまず、校種を越えての交流を増やすべきである。
★また、保育・教育を共につくるなかで、教師どうしが交流し、互いの教育のあり方の理解を進めたい。
★今後はカリキュラムを一貫させていくことが、連携の核となるべきである。
幼小連携・小中連携について
★幼小連携や小中連携の取組がさかんになってきた背景には、中一プロブレム等に対する指摘、発達の早期化、子どもの多様化、地方分権の推進などがあげられる。
★幼と小、小と中の間には中高一貫教育制度のような制度はない。このため、現在の全国の取組はきわめて多様である。中高一貫と同様の制度創設については、中央教育審議会で検討中である。
★異なる学校種間の連携は常に重要であり、先行的な取組を参考にしつつ、教育関係者各人がたゆまぬ努力を行うことが重要である。
幼小中連携の実際
★森町幼小中一貫教育は、本年度で三四年の歴史がある。研究の始まりは、「低学力、低体位」の克服にあった。町内三中学校区でそれぞれ特色ある実践研究を進めている。
★研究を支える要素として、「連続性、継続性」と「独自性、適時性」がある。前者は時間軸、後者は空間軸であり、これらがバランスよく交わることを一貫教育の目標とする。
★系統的な子どもの学びや成長を見取るためなどの一手段として、異校種間での「乗り入れ授業」、おもに少人数克服を目的として交流活動、授業を適宜導入している。これらは各園・校の教育課程に組み入れられ、計画的・意図的に実践されている。
幼稚園と小学校をなめらかにつなぐ
★幼稚園の年長後期から一年生の一学期をひとまとまりの「接続期」ととらえた。この時期は、さまざまな不安や期待、緊張が生じやすい。子どもたちの思いをていねいに受けとめ支えながら、主体的に学ぶ姿勢を育むことの重要性を認識して、接続期の保育・学習分野を次のように構成した。前期・・・「ことば」「もの」「なかま」「からだ」。中・後期・・・「ことば」「かずとかたち」「なかま」「からだ」。
★そして、互いに保育や学習を参観し合い、協議を重ねるなかで、次のような具体的手だてを講じてみた。1.保育室や教室の生活・学習環境の工夫。2.小学校の時間枠のとらえ方の工夫。3.からだを使った活動の重視。
中一ギャップ解消をめざした取り組み
★中一ギャップ解消を考えるとき、まず義務教育の段階で多くの不適応・不登校が発生している現状について、とりわけ中学校現場はもっと危機感をもたなければならない。
★その解決には小中の連携が不可欠である。ここでは中学校入学前後の指導のポイントを大きく四つに絞り、教頭会を中心に実践してきた。1.中学校教員の小学校訪問、2.早い時期の中学校体験入学、3.学年を中心とした指導体制づくり、4.中学校入学後の交流会。
★中学校では、ルールや規律は最初から厳しく指導しながらも、子どもの能力にかかわることは子どもの成長に配慮することが大切である。
小・中一体の学校をめざして 算数・数学の取組を例に
★平成十年度より、小・中一体の学校づくりに取り組んだ。小・中の教師の意識の違いが壁となるが、合同の校内研修を中核にして壁を乗り越えてきた。
★小・中の教師がTTを行うことにより、いろいろな成果があった。例えば、中学校教師にとっては、子どもの興味・関心を大事にした導入や、具体物や活動を取り入れた小学校の授業が授業改善の参考になった。また、アンケートや標準学力検査の結果からも、成果が上がっているといえる。
★とくに、子どもの実態を把握している小学校の教師と中学校の教師が一緒になって中学校の指導案を作ることが、授業改善にとても有効である。
英語を中心にした小中連携の現状と課題
★平成四年度から行ってきた小学校の英語活動(英語によるコミュニケーション活動)で得た成果とは、英語のスキル習得と定着をねらいとするのではなく、「ALTと一緒に楽しく英語活動に取り組んだ子どもたちのほとんどは、外国人と臆することなくコミュニケーションをとることができるようになり、ほかの授業にも好影響を与えた」ということであった。この積極性は、国際化の進むなか、これからの日本人に必要な資質である。
★中学校では、小学校での英語によるコミュニケーション活動を踏まえ、実践的なコミュニケーションをいままで以上に実施していくことである。
小中一貫教育の現状と課題
★基礎学力の低下や不登校の問題、生活指導上の不徹底などが社会問題となり、小学校と中学校の連携が求められている。小学校と中学校は長い間、六年と三年に区切られ、「文化の違い」「制度の違い」があった。しかしいま、子どもの成長に合わせて制度が変わる時代が来た。
★品川区の小中一貫教育は、品川区小中一貫教育要領に基づく教育課程を、品川区内全小・中学校で行う。
★道徳・特別活動・総合的な学習の時間を再編成し、「市民科」「ステップアップ学習」「小学校からの英語科」を新設。この新しい教育課程による施設一体型としては全国初めての日野学園が平成十八年四月に開校した。
中高一貫教育の現状と課題 誇りと自信をもって世界に飛躍する人材の育成をめざして
★本校では、中高一貫教育を行う中等教育学校として六年間を一体的にとらえ、教育課程の編成や指導内容・指導方法を工夫している。一-四回生を「基礎・基本期」、五-六回生を「充実・発展期」とし、四回生までで高等学校の必履修科目の多くを終え、五・六回生では幅広く選択科目を設け、生徒の興味関心や進路希望に応えられるようにしている。
★一-四回生の英会話と、二回生の数学の幾何領域で、少人数指導を行うとともに、三回生から数学・英語で習熟度別学習を行う。
★豊かな心や自主性、社会性を養うために、学級とは別に同学年の少人数集団「チューター制」を設けたり、五・六回生が下級生の授業に入って教員を補佐する「リトルティーチャー制」を試みている。
★今後、教育活動全体を通して、生徒一人一人が、自己にふさわしい生き方を実現しようとする意欲・態度や能力を育むようなキャリア教育を充実させていきたい。
連載
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」-基礎・基本の考え方(8)筆算 | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
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望ましい全国学力調査のあり方を考える(4) イギリスのAPU調査を参考として-英語(3)「話すこと」と「聞くこと」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
読解力を育てる(2) 認知心理学から見た読解力 | 法政大学教授 福田 由紀 |
私の教育評価実践(13) ルールブックづくりの取り組みを通じて得た示唆 | 京都市立高倉小学校教諭・京都大学 清水 隆志 柴本枝美 |
だんわしつ 人間的能力を育てるカリキュラムによっていじめを予防する | 教育臨床研究機構理事長 中野 良顯 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |