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特集
授業力とは何か
★学力低下問題に伴って、指導力不足とか、授業力不足といった言葉を最近使うようになった。あいまいだが、何となくわかる言葉である。これをきちんと定義してみた。
★「授業とは何か?」と問われて、短い言葉でまとめて言える人がどのくらいいるだろうか。その概念もあいまいである。そこを少し無理して、反論はあると思うが、私なりの「授業の定義」をしてみた。
★授業には、技術が必要である。最低でも六つの技術がなければ、授業はできない。これもかなり無理して六つに絞り込んでみた。実際、授業をやってみると、六つくらいあれば何とかなることがわかった。
★私たちは、みな「プロ教師」を目指しながら、到達し得ないでいる。その道筋を追究してみた。
教師の「授業力」
★教師の「授業力」の要素として四つ考えてみた。
1.授業における「企画力・構想力」
2.事象との出会いの場の工夫
3.「矛盾」の洞察
4.子供の理解 である。
★授業力は総合的な教師の力であるともいえる。授業者として成長することは、人間として成長することでもある。
小学校教員に期待する授業力
★経験からではあるが、学習の個別化に迫るポイントをあげたい。
★授業前にしたいことは、
1.子どもの実態把握
2.目標の明確化
3.プレテストの実施
4.導入の工夫
5.座席表の作成 である。
★授業中には、実態にあった
6.学習内容の配列と
7.学習内容の組織化
8.机間指導で的確な個別指導
9.意図的発問
10.応答の組織化
11.板書の工夫
12.パソコンの活用
13.形成的評価を十分行う。
★授業後には、
14.ポストテストの実施
15.授業分析・評価を行う。
★最後に、授業力の基盤となる人間力を育てるポイントについても述べる。
中学校教員に期待する授業力
★中学校教員に期待する授業力を「攻める授業力」と「受ける授業力」に分けて論じてみた。
★「攻める授業力」については、「授業に臨む前の教師に必要な力」と定義し、「教科分析力、子どもをとらえる力、授業構想力、評価力」の四点に焦点を当て、具体例を示しながら述べた。
★「受ける授業力」については、「授業におけるすべての情報を生かす力」と定義した。個々では、「子どものいまをとらえる力、意図的指名力、子どもの発言や活動を価値づける力、子どもの考えをつなぐ力」の四点に絞り、力量の高め方も示した。すべてが教員歴27年から得られた知見である。
一斉授業の指導力を鍛える 格差を活用しより深い学びを実現する
★明治以後、先輩教師たちが営々として築きあげてきた「一斉授業の技」は、日本が世界に誇る教育の宝である。
★一斉授業はけっして画一的で個性軽視の授業ではない。一斉授業とは、「凛々しい個別化」と「豊かな交流」にとって、個と集団がともに鍛えられる授業である。「新しい学力観」は子どもたちの低学力を招いただけでなく、教師の授業力も萎えさせた。
★習熟度別指導はその差別性のゆえに、学校崩壊の危険性をはらむ。安易に習熟度別クラス編成をめざすのではなく、学力格差を活用し、より深い学びを実現しうる一斉授業の技の実現に、教師自らが立ち向かう決意がいま求められている。
習熟度別少人数指導の指導力を高める
★習熟度別少人数指導を充実させるためには、二つの層に分け、処遇し、指導力を高めなければならない。一つは、少人数指導のための「学習プログラム」の処遇、すなわち伝統的な一斉指導に取って代わる指導・学習形態を創り出していかねばならないという層である。
★もう一つは、それぞれの指導・学習形態にあって、学習者一人一人に対する「学習プロセス」上の処遇を行うという下層である。すなわち、子ども一人一人に適したきめ細かな処遇を施すと言うことである。その場合、「教科の論理」という観点より処遇する場合と、「学習者の適性」という観点より処遇する場合が考えられる。両者が適切に勘案されるところに、きめ細かな指導が成立すると考えられる。
ワークショップ型授業のすすめ
★ワークショップ型授業は、活動中心の授業である。従来の説明中心の授業や発問中心の授業が、学習者から少し窮屈であるという感じでうけとめられるようになってきたことを背景に、2000年ごろから少しづつ増えてきた授業形態である。授業モデルは「説明(5分)+活動(30分)+振り返り(10分)」である。
★一番の特徴は、授業の中で学習者に「試行錯誤」をさせることである。教師が設定する活動枠組みが、個々の子どもの自発的な学習を引き出す。活動を行う中で、気づいたり考えたりしたことを振り返り学習とする。従来の授業の中に混ぜていくことで、授業全体の「軽さ」(居心地の良さ)を作り出すことになる。
学級づくりと授業力 学級状態の理解の方法と状態に合った授業
★学級づくりの巧拙が授業の巧拙とかなり関連していることは、実践家ならよく分かっている。学級づくりに大切なのは、学級集団のルールとリレーションの確立である。授業を成立させるためには、このルールとリレーションの確立の状況を把握し、実態に合わせた指導を行うことが大切である。そのためには、河村茂雄が開発したQ-U(学級生活満足度尺度)による調査法を活用することが有効である。
★学級の状態は教師のリーダーシップの取り方に大きく影響される。教師は自分のリーダーシップの発揮の仕方を自己チェックして、バランスの良い柔軟な指導行動をとる必要がある。
連載
授業をつくる(7)小学校理科「見えない世界を楽しむ」 | 筑波大学附属小学校教諭 鷲見 辰美 |
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新しい評価の枠組み(3) 能力の到達目標:PISA調査を参考にして | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
諸外国の初等中等教育改革ノ動向(10)中国 義務教育全国完全実施と資質教育推進をめざす中国 | 文部科学省生涯学習政策局調査企画課専門職 日暮 トモ子 |
新しい教育評価の動向/主要論文の概説(13)P・ブラック、Dウィリアムス 世界の状況を見て考えるべきこと | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
私の教育評価実践(7) 総合的な学習における子どもの学びの質を高める | 東京都中央区月島第二小学校教諭 鶴田 裕子 |
日本版エッセンシャル・クエスションノ構想 | 二葉看護学院ほか非常勤講師 小田 勝己 |
だんわしつ | 福田 哲男 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |