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特集
セルフコントロール力とは
★今日の教育では、自ら学び、自ら考える力、さらには生きる力の育成を強調している。その目標を達成するためには、自分の欲求、行動を自ら統制、制御する力、すなわちセルフコントロール力を身につけることが前提である。
★そこで、教育におけるセルフコントロール力の意義、役割を明らかにし、次に、セルフコントロール力とは何か、その過程を構成する要素は何かを明らかにし、さらにこの力を形成する理論について述べる。
★終わりに、セルフコントロールを中心とするカウンセリングにおける自己統制技法、学習指導における自己制御学習について述べる。
セルフコントロール力の発達
★セルフコントロール力の発達の機序については、行動主義的学習理論、認知発達理論、文化的発達理論に基ずく考え方がある。それぞれ独自の視点を提供しているが、基本的には他者との相互行為を維持、発展させる要因としての自己主張・自己抑制の統合的使用を身につけていく過程ととらえられる。
★異なる立場は、セルフコントロールの発達の異なる側面を反映しており、発達支援法も異なっているが、実践面においては、それらを統合的に扱うことで、年齢により、場面により使い分けることが重要である。それぞれが補完的立場にあることを理解し、一つの立場に固執することは望ましくない。
セルフコントロール力を育てる方法・プログラム
★セルフコントロール力は、自分で自分を律する能力である。
★しかし、それは個人の意志の問題ではなく、最終的には社会的に制御される現象である。
★近年では、前頭葉の執行機能の面から神経学的な研究が進んでいる。
★セルフコントロール力は、自己約束、目標設定、自己記録、自己チェック、自己強化のような成分スキルに分解して、適切なプログラムによって組織的に指導することができる。
★私たちが人生の目標を意図的に追求するため、つまり自分自身のプロジェクトを遂行するために必要である。
家庭でセルフコントロール力を育てる
★家庭の中でセルフコントロール力を育てるために必要な条件が四つある。
★一つは、子どもが「自分がいい子だという自己イメージを持っていること」「いい子の自分でありたい気持ちを備えていること」である。
★第二に「子どもが毎日、幸福感いっぱいの生活を送っていること」。
★第三に「自分の未来に明るい展望や見通しをもっていること」。
★そして第四に「自己抑制をする体験を日々重ねていること」である。とりわけ第四の条件は、生活の中で失われてきており、その中で「テレビ視聴をコントロールさせる」「月ぎめのお小遣いの額を低めに抑え、上手に使わせる」しつけが、セルフコントロール力を育てるために重要度を増している。
セルフコントロール力を評価する
★セルフコントロール力を評価する場合、大まかには固体の「動機」と「行動」が一致しない場面で必要とされる機能をセルフコントロール力とし、それを評価対象とする。
★セルフコントロール力の測定の方法には、質問紙、実験、観察の三つの方法がある。測定には長所と短所があるため、これを考慮して目的に応じて用いることが求められる。
★セルフコントロール力を高めるには、子どものセルフコントロール力を評価し、幼児期の段階で教師や保護者が社会的に望ましい行動を示す必要がある。
★大人による働きかけと仲間関係により、外的基準であった「適切な行動基準」が内的基準へと移行し、外的統制や指示がなくても自立的に行動するようになる。
★仲間集団の規範も、セルフコントロール力に影響するものとして評価し見守る必要がある。
セルフコントロール力を育てる実践(小学校)
★小学校段階では、自分が受け入れられたという体験を味わわせることが、その後のセルフコントロール力を高めるための基礎になる。
★小学校段階でのセルフコントロール力を育てるためには、生育暦や家庭環境なども含めた個々の児童の課題をとらえることが大切である。
★対人関係でのセルフコントロール力を育てるためには、特別活動での話し合い活動や集会活動は有効な場である。
★セルフコントロール力を高めるには、あたたかい信頼関係に支えられた集団づくりが大切である。また、集団の中で自分らしさが発揮できるようにして自己評価を上げることが大切である。
セルフコントロール力を育てる実践(中学校)
★「地域が作る学校」として平成十三年度に開校した聖籠中学校。学校創設の大きな理由の一つが、生徒指導上の問題解決にあった。その課題を解決するために地域住民が選択したのが、教科センター方式であった。
★教科センター方式の成否は生徒指導にかかっているといわれる。教科センター方式は、生徒に「自主性・自律性」を求める仕組みである。これを活用して「自主性・自律性」をもった生徒を育むために、「信頼」をベ-スにした独自の生徒指導体制を創り出してきた。
★さらに今年度からは、「自律」をめざしたプログラム「生活カリキュラム」や個に対応した「自律サポートセンター」の実践に取り組んでいる。
自己統制力を育てる生徒指導 Im OK for the Future
★三年前本校生徒課は、自己統制力(セルフコントロール力)の育成を指導目標に掲げた。それは、学習指導要領の改訂や学校週五日制への移行に対応した適切な生徒指導の確立をめざすものであった。後追い指導になりがちな生徒指導を何とか事前指導中心のものにしたいという思いと、校則だけでは、学校の管理下外の問題行動に有効に対処できないという状況の打破をねらったものであった。
★自己統制力の育成という旗印を掲げることにより、地域や保護者を含む学校関係者に本校における生徒指導の方向性を示し、家庭・地域・学校のより密な連携を図った。
★自己統制力の育成をめざすうえで、自己肯定感は不可欠である。”I am OK”というサブタイトルの付加が、自己肯定感を育成するうえで大きな役割を果たした。
連載
小学校算数の基礎・基本の指導と評価(21) 授業で大切にしたいこと(4)-子どもたちが「やってみたいこと」をつくる | 元筑波大学附属小学校教諭 正木 孝昌 |
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読書教育(5) なぜ大学生に読書の日常化が必要か | 東京家政大学教授 平山 祐一郎 |
ドリルについて考える(9) 計算ドリル「百ます計算の効用と指導法」 | 学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会 深沢 英雄 |
豊かな心と確かな学力の育成(6) 囲碁を通した豊かな心の育成 | 福岡市立田村小学校長 小楠 徹 |
豊かな人間性を育てる授業シリーズ(5) 問題解決編(小学校版) | 教育臨床研究機構理事長 中野 良顯 牧野 昌美 |
だんわしつ | 全国教育文化研究所 家本 芳郎 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |