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特集
新教育課程における習熟度別学習・少人数指導 中学校・数学
★数学学習における経験(思考反省的経験)から得られるのは、単なる事柄としての知識だけでなく、知識を獲得する方法、知識を構成する視点、そして、数理的なものを観る目である。これこそ新たな問題場面における問題解決の有効な手がかりとなり、新たな問題発見につながるとともに、新たな知識を創出する源となる。
★生徒のこうした数学理解を深めるために、教材に関する丹念な思考活動の分析があらかじめ行われて初めて、習熟度別学習、少人数指導での「きめの細かい指導」が実現される。学習集団を少人数で編成し、単に長い時間、生徒に寄り添うというだけでは必ずしもなしえない。
★発展的な学習も補充的な学習も、少人数指導に他ならない。丹念な思考活動の分析に基づく実践で明らかにされる数学的要点をしっかりと押さえて行われるとき、初めて意味のあるものとなる。
新教育課程における習熟度別学習・少人数指導 中学校・理科
★理科が対象とするのは自然現象であり、できるかぎり多様な教材による指導の充実を図ることが重要である。観察、実験を重視しながら、生徒一人一人の特性等に応じた指導を行うためには、TTや少人数指導等が効果的であると考えられる。
★その際、理科においては、習熟度の変性といった視点ばかりだけでなく、興味・関心に応じたグループ編成も重要な視点である。生徒一人一人の学習の状況を十分に把握しながら、「発展的学習」や「補充的学習」の指導、TTや少人数指導の特性を生かした授業展開、その普及を期待したい。
習熟度別学習・少人数指導を成功させる条件
★児童生徒の個性に対応した教育システムに、習熟度別学習や少人数指導がある。これらを充実させるには、どのような考え方に立ち、どう実践したらよいか。実際に行った内容を述べてみた。まず、学校体制の中で取り組まなければならない内容(時間割、児童生徒指導上の問題、児童生徒や保護者への周知徹底、評定の問題など)や、教科や学年単位で方策を考え実践できるものがあるので、それぞれの立場で十分検討する。また、習熟度別学習や少人数指導のメリット・デメリットを踏まえ、より効率よく推進できる方策も述べた。
習熟度別学習・少人数指導の取り組み
★文部科学省指定の学力向上フロンティアスクールとして、算数の習熟度別学習を実践した。「児童の自己評価能力の育成」に主眼を置き、自ら学び自ら考える力を育成し、意欲的に学習を進めていく児童の育成を図った。
★次の三点の成果を得た。
1.単元途中のコース選択学習、単元末の課題選択学習の2つを設定し、児童の個性を生かし、学力向上を目指す少人数グループ別指導を実施し、児童の習熟の度合いに応じた学習を実現した。
2.国立教育政策研究所の評価規準を基礎基本ととらえ、さらに本校独自の評価基準を作成し、補充・発展教材を開発した。
3.児童の学習のふりかえりをきめ細かく行い、児童の自己評価能力を高めるとともに、評価と指導の一本化を具現化した。
習熟度別学習・少人数指導の取り組み
★生徒個々の能力に応じ、それぞれの力を伸ばすべく、少人数指導のあり方を模索してきた。しかし、学校規模による教科の指導者数が壁となっていた。
★単独の教科で少人数指導を行うのではなく、複数の教科を組み合わせることによって指導者数を確保し、小規模校でも少人数指導が可能な方法を生み出し、実践を継続している。
★生徒の希望・意欲を重視した習熟度的少人数学習を行うことにより、授業形態や内容の工夫などコースに応じたきめ細やかな指導がなされ、どの段階の生徒も意欲的に学習に取り組めるようになってきた。
一斉授業でこそねらえるもの
★今、算数授業への関心が高い。学力低下の論議がそうさせるのである。少人数指導・習熟度別学習の対象も、大半が算数である。しかし算数の授業には、一斉指導でこそ生きるものがある。多様性の尊重、協同的思考、価値の共有である。このことは学校教育の価値と言っても過言ではない。もう一度、一斉授業の良さを考え直すべきだ。その上で、少人数指導・習熟度別学習への方法を再考したい。
欧米における習熟度別学習・少人数指導
★欧米を中心とした学級規模をみてみると、日本と韓国のアジア2カ国は欧米よりも学級規模が平均値では大きい。
★習熟度別学習は欧米では1970年代頃から普及している。その要因は、第一に学校種別の統合、第二に補償教育の発達である。学習の個別化により、ハンディを負うものや才能あるものにも個人の状況に応じた教育を提供できるようになった。
★習熟度とは関係なく、学習集団を小規模化する場合もある。諸外国で最も多い例は情報教育であろう。異なる教科・科目における少人数指導もある。
★こうした学習指導は特に教員配置等が必要となる。その有効性を明示することが必要である。
学級規模と学業成績の関係 算数・数学
★現在、少人数指導のための教員配置が進められている。とくに算数・数学科では、多くの学校で少人数指導が行われている。
★今のところ、学級規模と学習形成の相関関係は明確な紺教はない。アメリカの調査研究では、総じて、20人以下で成績が高くなる傾向を示している。
★国立教育政策研究所が行った調査からは、算数・数学科の学力形成と学級規模には相関関係は認められない。
★この理由は、少人数でも指導方法を変えていないからだと思われる。少人数学級編成での新しい指導方法の開発が急務である。
学級規模と学業成績の関係 理科
★国立教育政策研究所が中心に行った調査から、学級規模と理科の成績の関係について報告する。
★小学校理科の総得点について学級規模間に有意な差は見られない。問題を「知識」「理解」「応用」の3つの目標分類に分けてみると、「知識」「応用」では学級規模間に有意な差は見られないが、「知識」では学級規模間に有意な差が見られ「20人以下の学級」の「知識」の得点が最も高い。
★中学校理科の総得点についても学級規模間に有意な差は見られない。3つの目標分類に関していずれの目標分類でも「20人以下の学級」の得点が他の学級規模の得点よりやや高いものの、学級規模間に有意な差は見られない。
連載
教育評価再入門(10) 「総合的な学習の評価」 | 兵庫県西宮市立夙川小学校教諭 牧野 天志 |
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目標準拠評価を押し進めるために(3) 「総合的な学習における個人内評価カルテ」 | 埼玉県杉戸町立西小学校校長 長堀 榮 |
目標準拠評価の評価規準の体系化の方策(10) 「発展段階を明示した枠組みと、分析・総合の評定」 | 教育評価総合研究所代表理事 鈴木秀幸 |
総合的な学習の実践と評価(16) 「総合的な学習で身につけさせたい力と評価」 | 新潟大学附属新潟中学校教諭 田中 恒夫 |
だんわしつ | 応用教育研究所理事長・筑波大学名誉教授 櫻井 茂男 |
ひとりごと | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |